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「スマホを落としただけなのに」(2018年日本映画)

2018年11月14日 | 映画の感想・批評


 ごく普通の男性サラリーマンがスマホをタクシーに忘れてしまったことから、それを悪用され、恋人や会社の人を巻き込んで、恐ろしい事件へと発展していく様を描きながら、スマホ依存社会への警鐘と、家族との繋がりを考える映画である。
 スマホが自分の一部となっている世代の主人公が、ネット環境にあまりにも警戒感が少ないのが気になるが、気付かず内に、自らの一部であるスマホ(個人データ)を乗っ取られるのである。
 ただ、題名からは想像されないくらい取り扱うテーマは、幼児虐待、リベンジポルノ、家族のあり方等々、多層に構成され、映画全体に深みを与えているように思う。その中で、主人公二人のラブストーリーとして成立させているのは監督と脚本の手腕だろうか。
 残念なのは、別の映画でも書いたが、原作があったとしても、もう少し、題名に工夫があれば、多くの客層に受けるのではないか。勿体ない。インパクトのあるキャッチフレーズで、「観たい!」と思わせる方法があったのではないだろうか。2018年5月の博報堂の発表では、スマホの所有率は約80%ということなので、身近な話題の筈であることは間違いない。メールだけで会話(会話と呼べるのか分からないが)をするや、物事を調べる際は、インターネットの検索サイトで検索するだけといった、人の温もりが薄くなっている今だからこそ、この映画があるのではないかと思う。是非、多くの人に、特に、若い人に観てもらいたい。
 最後に、本作は、前述のように、人の温もりが無い世界を描いている一方で、捜査を追いかける刑事と犯人との幼年期の同じ境遇が、事件を解決に導くヒントに繋がるシーンは、年少期の環境から生まれる人間の深い奥底の感情を表現していて、人間臭さも感じられた。想像以上に深い映画だった。
(kenya)

監督:中田秀夫
脚本:大石哲也
原作:志駕晃「スマホを落としただけなのに」
撮影:月永雄太
出演:北川景子、千葉雄太、バカリズム、要潤、高橋メアリージュン、酒井健太、筧美和子、原田泰造、成田凌、田中圭他


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