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「スウィング・キッズ」(2018年 韓国映画)

2020年05月20日 | 映画の感想・批評


 1951年、朝鮮戦争当時、従軍記者ワーナー・ビショフが撮った一枚の写真の中に、巨済(コジェ)捕虜収容所で仮面をかぶり、自由の女神像の前で踊っている捕虜たちの姿があった。その写真から創作ミュージカルの「ロ・ギス」が生まれ、さらに今回カン・ヒョンチョル監督がタップダンスという要素を取り入れて再構築。「スウィング・キッズ」の誕生である。
 この収容所が変わっている。作ったのは国連軍だが、釜山の南に位置する巨済島に、何と17万人以上を収容するという巨大施設。そしてそこには北朝鮮軍や中国軍、さらに北に協力した民兵から強制的に徴兵された民間人や、アカにされてしまった南の避難民に至るまで、実に様々な立場の人々が収容されていたのである。
 新しく赴任した所長がこの収容所の対外的なイメージを良くするために思いついたのが、戦争捕虜たちによるダンスチームの結成プロジェクト。過去にブロードウェイのステージを渡り歩いてきた元タップダンサーの米軍下士官ジャクソンがその責任者に選ばれる。集まってきたのは前線の英雄として活躍する兄を持つ北朝鮮軍出身のロ・ギス、4か国語が話せる無認可の通訳士ヤン・パンネ、生き別れた妻を捜すために有名になりたい避難民のカン・ビョンサム、見た目からは想像できないダンスの凄腕、中国軍のシャオパン(栄養失調というところがおもしろい)という、国籍、言葉、イデオロギー、そしてダンスの実力と、すべてが違うまさに寄せ集めチーム。しかし、踊ることへの情熱が、次第に彼らの心を一つにまとめていく。この作品のために5ヶ月間タップダンスを練習したという、D.O.をはじめとする韓国俳優たちの若いエネルギーが見事にほとばしる!!
 カン・ヒョンチョル監督は、巨済捕虜収容所の歴史的な事件に捕虜たちのタップダンスというフィクションを加え、もしこのようなことが本当にあったなら、また新たな可能性も想像できたのではと、現在の朝鮮半島の情勢をも見つめ直しながら観客に問いかける。ハイライトの「クリスマス公演」シーンでの見事なタップダンスの後に訪れる「パラサイト」を彷彿とさせる衝撃、さらにエンディングクレジットで流れるのは、韓国映画で初めて使われたビートルズの原曲「Free As A Bird」。反戦映画としても、いつまでも心に残る作品となりそうだ。
(HIRO)

原題:SWING KIDS
監督:カン・ヒョンチョル
脚本:カン・ヒョンチョル
撮影:キム・ジョン
出演:D.O.<EXO>、ジャレッド・グライムス、パク・ヘス、オ・ジョンセ、キム・ミノ



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