「魂魄の塔」横の熊野鉱山の掘採がいよいよ来年1月初めから始まる。
12月23日、糸満市議の公文書公開請求が開示され、糸満市が熊野鉱山の新しい2件の開発届について県に提出した副申(意見書)の内容が明かになった。開発届の内容には、多くの問題があることを指摘したものだ。
県はまだ、「審査中」を理由に新しい開発届を公開せず、県民に何の説明もしていない。しかし、このままでは来年1月初めからは工事が始まってしまう。
そのため、開発届の詳細はまだ不明だが、糸満市の意見書で判明した点について、大至急、県に説明を求める質問・要請書を提出することとした。
明日(26日・月)、自然保護課に提出し、28日(水)の面談を求める。
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(知事宛の質問・要請書)
沖縄県知事 玉城デニー様 2022年12月26日
熊野鉱山の新しい2件の開発届に関する質問・要請書
遺骨収集ボランティア・ガマフヤー 具志堅隆松
ガマフヤー支援者の会 谷 大二
糸満市・「魂魄の塔」横の熊野鉱山の開発は、周辺の風景や環境に深刻な影響を与えるだけではなく、土砂には沖縄戦戦没者の遺骨が混じっている可能性があるとして、一昨年から大きな社会問題となってきました。
県は昨年5月、熊野鉱山の開発届に対して、自然公園法に基づく措置命令を出しましたが、本年6月、公害等調整委員会の「和解」案を受け入れてしまいました。その後、12月1日には、業者が糸満市を経由して新たな開発届を県に提出し、形式的な不備がなければ来年1月初旬から工事が始まると報道されています。
しかしこの間、県は、「審査中」を理由に、新たな開発届の内容について全く説明していません。そもそも「和解」案の内容には、遺骨散逸のおそれや、違反した場合のペナルティがないこと等、多くの問題があるのですが、今回、提出された開発届に「和解」案がどう反映しているのかも説明されていません。
このままでは来年1月から事業が始まってしまうことから、至急、今回の開発届に関して、下記のとおり質問・要請します。
記
1.今回、県には、「鉱物の掘採(土石の採取)行為届出書」(以下、「掘採届出書」)だけではなく、「仮設道路(ダンプカー等搬入路)等を整備するため」の「土地の形状変更行為届出書」(以下、「仮設道路等届出書」)も提出されていることが明かになりました。
「掘採届出書」には、「和解案」の内容がどう反映されているのか明らかにしてください。また、「仮設道路等届出書」は、「和解」案とは別のもので、今まで全く説明されていなかったものです。
県はまず、この2件の届出書の内容を公表し、県民に説明してください。
2.糸満市は、この2件の届出書について、12月14日付で市としての意見を付した副申書を県に提出しました。 糸満市の意見をどのように受け止めるのか、説明してください。
また、県の形式審査で問題がなかった場合の受理の日付は、届出書が県に提出された12月1日に溯るといわれていますが、糸満市の意見について十分に検討するためにも、受理の日付は少なくとも糸満市の副申書が県に提出された日以降とするべきではないでしょうか[1]?
3.「仮設道路等届出書」の内容には、糸満市の副申書によると、「仮設道路(熊野鉱山採掘のダンプカー等搬入路)」だけではなく、「石灰岩置場、仮設事務所、仮設トイレ、仮設電柱、計量台、洗車場」等が含まれています。これらの施設は今まで説明されてきておらず、今回、初めて示されたものです。
特に問題となるのは石灰岩置場です。当初の計画では、「採掘中も風景に影響を与えないよう周辺に植栽する」[2]とされていましたが、鉱山敷地外に石灰岩置場が設けられれば、遠くからも目立ち、一帯の風景が損なわれることは明らかです。この石灰岩置場の位置や規模等を明らかにしてください。そもそも、石灰岩置場や、仮設事務所、仮設トイレ、洗車場等の施設は鉱山敷地内に設けさせるべきです。
また、洗車場の給水・排水計画はどうなっているのか、説明してください。
4.今回の糸満市の副申書では、「粉じんによる影響が出ないようにすること」と指摘されています。従来から周辺の農業従事者等から、鉱山の掘採・土砂運搬による粉じん被害が訴えられてきましたが、県として粉じん対策をどのようにとらせるのか説明してください。
5.土砂運搬の仮設道路は地下で繋がっている2つのシーガーアブ[3]の間を通っています。また、鉱山の掘採箇所もシーガーアブに隣接しています。そのため、鉱山の掘採やダンプトラックの走行によるシーガーアブへの影響が危惧されます。
糸満市の副申書でも、「採掘行為の振動等により隣接するガマが崩落し、周辺環境へ影響を及ぼす可能性がある」、「隣接するガマが採掘行為の振動により崩落する可能性があることなどに鑑みると、-- 工事の際に事業者においてガマの調査を行ったうえで、崩落防止対策を講じるよう求めるべきである」と指摘しています。
県として、糸満市が示した懸念にどのように対応するのか、説明してください。
採掘が始まるまでに、県としてシーガーアブの調査、遺骨収集を行うべきではありませんか?
6.今回提出された「仮設道路等届出書」の工事に着手するためには、現在、知事が審査中の農地の一時転用申請の許可がまず必要です。しかし、糸満市には未だ、風景づくり条例に基づく行為届出書や開発行為に関する指導要綱に基づく開発行為協議申請書の再提出が行われていません(12.20現在)。
農地一時転用を審査する県の農政経済課は、「糸満市の条例・要綱の手続きを終えるまでは、農地一時転用申請の審査には入れない」と言明しています。しかし業者は仮設道路の農地一時転用許可を待たず、「魂魄の塔」前の県管理の広場から工事車両を入れて準備作業に着手するのではないかと危惧されます。
この「魂魄の塔」前の広場は、米須霊域の参拝者のために設置されたものであり、県も従来から「工事車両の通行は認められない」としてきました。県として、熊野鉱山の開発業者に、「魂魄の塔」前の広場から工事車両を通行させることのないよう強く指導してください。
以上