辺野古新基地建設事業で、サンゴ類の移植のための特別採捕許可申請について県の判断が遅れているとして、農林水産大臣が県に対して「許可をせよ」という是正の指示を出した。「早く判断せよ」ではなく、「許可をせよ」というのである。当然、県はそれを拒否し、国地方係争処理委員会に審査を申立てたが、6月19日、国地方係争処理委員会は「是正の指示は違法ではない」との判断を出した。
今日(21日)の沖縄タイムスにその全文が載っているが、国地方係争処理委員会の結論の杜撰さにはあきれる他ない。
5月の国会審議でも水産庁の手引書に移植4年後の生存率は20%以下とされていることが明かになり、デニー知事も今回、「安易な移植事業が開発事業の免罪符とならぬよう慎重な審査が必要」と述べているが、国地方係争処理委員会の結論にはそのような認識は全くない。
他にも結論には問題が多いが、1点だけ指摘しよう。移植申請については、知事が移植の方法・移植先の状況等を判断して、その是非を決めるものである。しかし、今回の結論ではそのような考察は全く行っておらず、ただ、「環境監視等委員会の助言が不適切であるといえる合理的な理由はないので、環境監視等委員会から助言を受けて防衛局長が提示したサンゴ移植に係る内容に基づいて、裁量審査することが相当である」としているのだ。これでは知事の裁量権を全く否定していることとなる。
そもそも現在の環境監視等委員会のメンバーには、サンゴ移植の専門家はいないと指摘されている。また、議事録でも発言した委員名は記載されておらず、誰が責任を持って発言しているのかも分からない。
「早く判断せよ」というのであればともかく、「許可をせよ」という国の是正指示が許されるはずはない。県は、1ケ月以内に今回の結論の取消を求める関与取消訴訟を提訴するか、許可をせずにこのまま審査を続け、国が県を相手に提訴する違法確認訴訟に対抗するか、あるいは申請を不許可とするかの3つの選択がある。ともかく、決して屈することなく頑張りぬいてほしい。
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下に、防衛局から開示された、今回の国地方係争処理委員会で審査の対象となった2つの特別採捕許可申請書を添付する。それぞれ、38,760群体、830群体の移植申請で、作業期間は11ケ月、2ケ月となっている。ただ、この計算は、ダイバー12人が、一人一日当り30群体ものサンゴを移植をするとなっているが、ハンマーとタガネの手作業であるから、とてもそんな多くのサンゴを移植できるとは思えない。また、夏期の高水温時や、冬季風浪期等の移植を避けることが望ましいとしているから、実際の移植にはさらに長期間を要するだろう。
大浦湾には合計78,460群体の移植を必要とするサンゴ類があるから、このペースで移植をしたとしても、全てのサンゴ類の移植には合計2年以上を要することとなる。
防衛局は変更申請で工事期間は9年3ケ月としているが、このサンゴ類の移植期間は含まれていない。司法の場での争いが1年で決着したとしても、移植作業にさらに2年以上を経過した後でしか地盤改良工事に着手できない。工事期間はそれだけでも12年6ケ月以上もかかることとなる。