昨日(7月19日)、4年半にわたって那覇地裁で闘い続けてきた識名トンネル住民訴訟に勝訴した!
私たち原告は、仲井眞弘多前知事、漢那元土建部長、赤嶺元南部土木事務所長、大成JVらに対して、7,177万円の損害賠償を求めていたが、判決では、漢那元土建部長、赤嶺元南部土木事務所長が連帯して7,177万円の損害を賠償するよう命じた。仲井眞前知事や大成建設(JV)らへの請求が認められなかったのは残念だが、請求額の満額が認められ、県民が被った損害が補填されることになったのだから評価できる判決である。
この識名トンネル違法公金支出事件とは次のようなものだ。
沖縄県が発注した識名トンネル造成工事(那覇市内)において、仲井真県政時代の土建部の担当者らが大成建設(JV)の要求に屈して増額分の費用に充てるために、虚偽の契約書等を作成するなどとして工事の実施を偽装し、不適正な経理処理を行った。そのため、会計検査院の指摘により国庫補助金の返還を強いられることとなり、結局、県民に5億8千万円もの損害を与えてしまった。
当時は、県議会に百条委員会が設置されただけではなく、沖縄県警が県庁を家宅捜査し担当の県職員ら15名を書類送検、そして沖縄県監査委員会も、我々の住民監査請求に対して国庫補助金の返還額のうち利息分(7100万円)を県の損害と認定し、「関係職員や請負業者に負担させるように」との監査結果を出した。まさに沖縄県政史上、最大の不祥事といわれている。この問題を県民の力で究明し、県民が被った損害額を責任者らに賠償させようというのが私たちの住民訴訟だった。
膨大な資料と格闘を続けた4年半だった。当初は訴訟要件の問題に難渋したがなんとか本案の審理に入り、昨日の判決となったのである。不満は残るが、ともかく請求額の全額が認められてほっとしている。
報道では沖縄県は控訴の方向と報じられている。しかし、今回の判決は、県が被った損害額を漢那ら2人に、賠償させるというものだ。県にとってもプラスの判決ではないか。県が判決を不服として控訴するということは、県の被った損害の補填を求めないという主張でもある。あり得ないことだ。
そもそもこの事件は仲井眞県政時代に発生した不祥事である。翁長県政となった今、何故、当時の不祥事をかばい続けるのであろうか? 沖縄県はこれ以上係争を続けることなく、那覇地裁判決に従って一刻も早く、県が被った損害を補填させるべきである。沖縄県の控訴は許されない。
もし、県が控訴するというのなら、私たちも、高裁では、仲井眞前知事と大成建設(JV)の責任追及に全力をあげるつもりである。
(なお、漢那元土建部長は、現在、石垣市の副市長となっている。今回の判決で違法行為が認定され、巨額の賠償命令が出されたのであるから、その責任を取り、ただちに公職を辞任すべきであろう。)
<参考>
7月19日、原告団、弁護団が発表した声明文
<以下、参考までに以前、このブログに書いた識名トンネル事件についての報告を再掲する>
現在、沖縄県始まって以来の不祥事と言われているのが、この識名トンネルの虚偽契約問題だ。沖縄県は、2006年12月、識名トンネル新設工事を大成建設共同企業体(以下、「大成JV})に発注した。しかし、この入札には、本土の大手ゼネコンのほとんどが殺到し、厳しいたたき合いとなった。結局、大成JVの受注額は、設計価格の47.2%というとんでもない低額だった。当時の県議会でも、「こんな低価格で大丈夫か? いくら競争といっても異常だ」などと追及されている。
工事着工後、多くの追加費用が必要となった。本来なら、増額の変更設計は、当初の入札率を乗じて決められる。しかし、大成JVは、増額分について当初の入札率を乗じることを拒否。県は、やむなく、追加費用分を別途に大成JVに6件の随意契約(ほぼ100%の率)として発注したという形式をとった。すでに施工済みの工事を新たに施工したかのように装った虚偽の契約を締結してその費用をねん出したのである。
識名トンネル工事は国庫補助事業であったが、県は、この虚偽契約分についても国庫補助金を申請、補助金が交付された。その後、国の会計検査で虚偽契約が発覚、県は、国の求めにより5億7千万円を国庫に返還せざるを得なくなったのである。しかも、国は、その後、国庫補助金を不正に受給したとして補助金適正化法違反と、さらに虚偽公文書作成・行使罪で、県職員(氏名不詳)を警察に刑事告発した。
国庫補助金を受けた公共土木工事、私の30年以上の公務員生活のかなりの部分は、こうした公共工事を担当していた。国の会計検査を控え、徹夜で工事の設計書等のチェックを続けたことを思い出す。そうした立場から、この識名トンネルの問題についても、当初から強い関心を持っていた。放置することもできず、公文書公開請求で関係資料を取り寄せたが、あまりのひどい不正行為には唖然とするほかなかった。
一番の問題は、県の職員の不正行為によって命じられた国庫補助金の返還のために、何故、県民の税金を支出しなければならないのかということだ。不正行為を行った県職員、また、不当利得を得た大成JVらがそれを負担しなければならないのは当然だろう。住民監査請求、そして住民訴訟で争えば、勝訴する可能性はきわめて強いと思われる。
そしてやはり問われるのは、仲井真知事の関与の問題だ。知事は、9月7日、オスプレイ配備反対の9.9県民大会への不参加を表明し、多くの県民の怒りを買っている。目取真俊さんは、彼のブログで、知事の不参加の理由について、「一括交付金など予算面の配慮で政府と裏取引をしたか、識名トンネル問題で政府に弱みを握られ、縮み上がってでもいるのだろう。」と書かれている。(今年、6月21日の週刊文春も、「仲井真知事のカネと女」という記事で、識名トンネル問題に触れ、仲井真知事と大成建設社長の個人的な関係を指摘している。 )
なんとかさらに資料を集め、この問題を追及していきたい。