乳がん患者のサロン2 - ノエル編

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乳癌死亡率の低下とマンモスクリーニング

2011年09月08日 | 病気・症状
日本では、乳癌検診の受診率の低さが問題に取り上げられることがあります。乳癌の発症率が高まる傾向がある我が国において、これは大きな問題と捉える専門家もいます。で、欧州の先進国ではどうかというと…。

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【乳癌死亡率の低下はマンモスクリーニングとは無関係】

   BMJ誌から  スクリーニング導入時期が異なる隣国間での比較


 欧州の先進国では、マンモグラフィーによるスクリーニングの普及とは無関係に乳癌死亡率が低下してきたことが、仏International Prevention Research InstituteのPhillppe Autier氏らの研究で明らかになった。論文は、BMJ誌2011年8月6日号に掲載された。

 先進国の多くで乳癌死亡が減少している。死亡率の低下には様々な要因がかかわるため、マンモグラフィーによるスクリーニングが果たした役割を観察研究やモデルを用いた分析によって明らかにすることは難しい。そこで著者らは、スクリーニング導入時期以外の条件がほぼ同様の隣り合う2国間で、乳癌死亡率の変化を比較することにした。

 欧州で、人口構造、社会経済環境、医療サービスの質が似通った隣り合う国々の中から、1990年頃から全国的なマンモグラフィースクリーニングを開始した国と、数年遅れでスクリーニングを開始していた国を選んでペアとした。ペアになったのは、以下の3組だ:英国北アイルランドとアイルランド共和国、スウェーデンとノルウェー、オランダとベルギー北部のフランダース地方(オランダ南部と接しており、ブリュッセルなどに比べてオランダとの類似性が高かったため。ベルギーの人口の約6割がこの地方に居住している)。著者らは、これらの国(地域)の乳癌死亡率の経時的変化を調べ、乳癌死亡率が変化した時期とマンモグラフィースクリーニング導入時期の関係を後ろ向きに調べた。

 死因を登録した死亡データベースや、マンモグラフィースクリーニング受診率、癌治療の内容、乳癌死亡の危険因子(診断時の肥満や出産歴など)などを登録したデータベースから情報を抽出した。

 年齢調整した死亡率を対数変換した後に、回帰直線を求めて乳癌死亡率の変化を推定した。死亡率に統計学的に有意な変化が起きた年度の同定には、joinpoint analysisを用いた(joinpoint analysisは、死亡率や罹患率の経時的変化を分析するために開発された非直線回帰モデルを使った解析方法)。

 全国的なスクリーニングの開始時期は、以下の通り。スウェーデンが86年(カバー範囲が全国に広がったのは97年)、ノルウェーが96年(同05年)。オランダが89年(97年以降、受診率は70%以上を維持)、ベルギーは01年以降(05年の受診率は59%で、受診者の約3分の2をフランダース地方の女性が占めていた)。北アイルランドは90年代初め(受診率は95年に70~75%)、アイルランド共和国は00年(受診率は08年に76%)。

これらの国々において、全国的なスクリーニングが行われる前または開始されていても対象がごく一部に限られていた89年の乳癌死亡率と、スクリーニングが十分に普及した06年の乳癌死亡率を比較した。その間の乳癌死亡率の減少は、北アイルランドが29.6%(37.0%→28.1%)、アイルランド共和国は26.7%(40.3%→30.5%)、オランダは25.0%(39.0%→30.1%)、フランダース地方は24.6%(38.9%→30.1%)、スウェーデンでは16.0%(25.6%→22.0%)、ノルウェーは24.1%(27.4%→21.5%)だった。

 1980年以降に死亡率低下のペースが下方に変化した年度(変曲点)を調べた。変曲点は、北アイルランドとアイルランド共和国、オランダとフランダース地方の間でほぼ同じだった。スウェーデンでは死亡率は92年から継続的に低下しており、06年まで下方変曲点は認められなかった。北アイルランドとオランダでは、死亡率の変化はスクリーニング開始後に認められた。フランダース地方、ノルウェー、アイルランド共和国では、死亡率の変化は多くの女性がスクリーニングの対象になるより前に起きていた。

 乳癌死亡率の変化を40~49歳、50~69歳、70~79歳に分けて分析したところ、全体として最も大きな低下を示したのは40~49歳の女性だった。50歳未満の女性がスクリーニングを受けることがまれなノルウェーと北アイルランドでも同様だった。

 乳癌の危険因子の保有状況を比較した。出産歴、肥満者の割合はペア国間でほぼ同様だった。例外は北アイルランドとアイルランド共和国のペアで、98年以降、アイルランド共和国では肥満者の割合が急速に上昇していた。

 医療費の平均は、北アイルランドよりアイルランド共和国の方が、またスウェーデンよりノルウェーの方が高かった。最新の癌治療薬の利用開始は北アイルランドで他国より遅かった(アイルランド共和国については癌治療薬導入時期のデータが得られなかった)。

 化学療法、放射線治療、術後のタモキシフェン投与などが適用された患者の割合を比較したところ、オランダとフランダース地方の間とスウェーデンとノルウェーの間で、これらの適用率に差はなかった。北アイルランドとアイルランド共和国の間には小さな差があり、アイルランド共和国の方が化学療法の適用率が高く、放射線治療とタモキシフェンの適用率は低かった。

 それぞれのペアに選んだ国の間で、医療サービスのレベルや乳癌死亡の危険因子保有率は同様だった。マンモグラフィースクリーニングの普及時期に10~15年の差があるにもかかわらず、経時的な乳癌死亡率の低下はペアとなった2国の間で同様に起きていたことから、スクリーニングは乳癌死亡率の低下に寄与していなかったと考えられた。著者らは、「90年以降の乳癌死亡率の低下は、治療法が向上し、医療システムの効率が改善されたことに起因するのではないか」と考えている。

 原題は「Breast cancer mortality in neighbouring European countries with different levels of screening but similar access to treatment: trend analysis of WHO mortality database」、全文は、BMJ誌のWebサイトで閲覧できる。
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死因に、乳癌より他の原因が増えたということでしょうか。
この結果では、マンモグラフィの有用性は全くわかりません。しかし、医療システムの改善を示唆していますね。
「マンモグラフィさえ行っていれば、私は大丈夫」なんて思っちゃう人はいないでしょうけど、それ以外の医療の重要性を示しているようにも見えます。


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なかのひと

This blog “The salon of breast cancer women authored by Noe:l” is able to read in Japanese:-)

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