35-「外記猿」(1824・文政7年)
大坂瓦屋橋の質屋、「油屋」の一人娘、お染は
親類同然の同業者、「山家屋」の一番息子に嫁入りする身。
ところが、油屋の丁稚、久松と深い仲になり、お腹に子が。
それに気づいたのが、こともあろうに書き入れ時の大晦日。
怒った主は久松を土蔵に放り込み、仕事疲れで寝入ってしまった。
その時を待ちかねていたお染は、
そっと部屋を抜け出し、久松のところへ。
所詮この世で添われぬなら、来世で夫婦にと、お染は覚悟の白無垢姿。
倉の扉は開くよしもなく、戸口の内と外とで二世を契り、
互いの名を呼び合うのを合図に、お染は喉をつき、久松は首を吊って死んだ。
明け行く空に、「可愛い、可愛い」と烏の声が響く。
お染十六、久松十四の若い若い心中だ。
この事件はすぐさま瓦版となり、歌祭文(うたさいもん・門付芸の一種)の恰好のネタとなって、
浪速中はおろか三都に伝播した。
『是は浪花に浮き名も高き
瓦橋とや油屋の
一人娘にお染とて
歳も二八の恋ざかり
内の子飼いの久松と
忍び忍びに寝油を
親たち夢にも白絞り
さあ 浮き名の立つは絵草紙へ』
二八は九九で、十六となる。
屋号が油屋のせいか、祭文作者は忍び寝を「寝油」などと茶化す。
親は夢にも知らない、も「白絞り」(しらしぼり・白胡麻からとった胡麻油)と洒落る。
この曲は、猿廻しの風俗を描いたもので、
猿が「お染久松」の芸を見せるという部分。
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tea breaku・海中百景
photo by 和尚
大坂瓦屋橋の質屋、「油屋」の一人娘、お染は
親類同然の同業者、「山家屋」の一番息子に嫁入りする身。
ところが、油屋の丁稚、久松と深い仲になり、お腹に子が。
それに気づいたのが、こともあろうに書き入れ時の大晦日。
怒った主は久松を土蔵に放り込み、仕事疲れで寝入ってしまった。
その時を待ちかねていたお染は、
そっと部屋を抜け出し、久松のところへ。
所詮この世で添われぬなら、来世で夫婦にと、お染は覚悟の白無垢姿。
倉の扉は開くよしもなく、戸口の内と外とで二世を契り、
互いの名を呼び合うのを合図に、お染は喉をつき、久松は首を吊って死んだ。
明け行く空に、「可愛い、可愛い」と烏の声が響く。
お染十六、久松十四の若い若い心中だ。
この事件はすぐさま瓦版となり、歌祭文(うたさいもん・門付芸の一種)の恰好のネタとなって、
浪速中はおろか三都に伝播した。
『是は浪花に浮き名も高き
瓦橋とや油屋の
一人娘にお染とて
歳も二八の恋ざかり
内の子飼いの久松と
忍び忍びに寝油を
親たち夢にも白絞り
さあ 浮き名の立つは絵草紙へ』
二八は九九で、十六となる。
屋号が油屋のせいか、祭文作者は忍び寝を「寝油」などと茶化す。
親は夢にも知らない、も「白絞り」(しらしぼり・白胡麻からとった胡麻油)と洒落る。
この曲は、猿廻しの風俗を描いたもので、
猿が「お染久松」の芸を見せるという部分。
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tea breaku・海中百景
photo by 和尚