西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

外記猿

2010-03-31 | 長唄の歌詞を遊ぶ (c) y.saionji
35-「外記猿」(1824・文政7年)

大坂瓦屋橋の質屋、「油屋」の一人娘、お染は
親類同然の同業者、「山家屋」の一番息子に嫁入りする身。

ところが、油屋の丁稚、久松と深い仲になり、お腹に子が。
それに気づいたのが、こともあろうに書き入れ時の大晦日。
怒った主は久松を土蔵に放り込み、仕事疲れで寝入ってしまった。

その時を待ちかねていたお染は、
そっと部屋を抜け出し、久松のところへ。

所詮この世で添われぬなら、来世で夫婦にと、お染は覚悟の白無垢姿。
倉の扉は開くよしもなく、戸口の内と外とで二世を契り、
互いの名を呼び合うのを合図に、お染は喉をつき、久松は首を吊って死んだ。

明け行く空に、「可愛い、可愛い」と烏の声が響く。
お染十六、久松十四の若い若い心中だ。

この事件はすぐさま瓦版となり、歌祭文(うたさいもん・門付芸の一種)の恰好のネタとなって、
浪速中はおろか三都に伝播した。


『是は浪花に浮き名も高き
 瓦橋とや油屋の
 一人娘にお染とて
 歳も二八の恋ざかり
 内の子飼いの久松と
 忍び忍びに寝油を
 親たち夢にも白絞り
 さあ 浮き名の立つは絵草紙へ』

二八は九九で、十六となる。
屋号が油屋のせいか、祭文作者は忍び寝を「寝油」などと茶化す。
親は夢にも知らない、も「白絞り」(しらしぼり・白胡麻からとった胡麻油)と洒落る。

この曲は、猿廻しの風俗を描いたもので、
猿が「お染久松」の芸を見せるという部分。

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚
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