西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

長唄の歌詞考-1

2013-03-24 | よもやま話 (c)yuri saionji


長唄には謡曲の詞章をもらったものがたくさんある。
芝居の座付き作者がそれを長唄用にアレンジするのだが、
その作業が面白い。

長唄としてはうんと初期につくられた
「枕獅子」(1742・寛保2年・市村座初演)を例に取る。
これは上方の名女形、瀬川菊之丞の「石橋」シリーズの4作目だ。

能の「石橋」
 『…あまりに山を遠く来て
 雲又跡を立ち隔て
 入りつる方も白波の
 入りつる方も白波の
 谷の川音雨とのみ 聞こえて松の風もなし
 げにや過って半日の客たりしも
 今身の上に知られたり…』 

これをこう取った。

「春は花見に 心移りて山里の
 谷の川音雨とのみ 聞こえて松の風
 実に過って半日の客たりしも 
 今身の上に白雲の…」

山の中を山里に変え、川音が雨のように聞こえるのはいいのだが、
「松風もなし」を「松風」で止めてしまったので、松風がどうしたの?
と不安だが頓着しない。
「身の上にシラレタリ」を、「シラクモの」と替えて、
「空には雲が浮かんでいるのか…」と無理やり思わせた。


 〓 〓 〓

tea break・海中百景
photo by 和尚

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。