西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

5代目 坂東彦三郎

2016-06-12 | 役者絵
これは歌川国貞(3代目豊国・天明6~元治元・1786~1865年)
の役者絵
「美伊達五節句 花方揃侠気名弘 一名ほめことば」(みたてごせっく はながたぞろいいきじのなびろめ)
「新玉の春五郎 坂東彦三郎 音羽屋薪水」(あらたまのはるごろう ばんどうひこさぶろう おとわやしんすい)だ。
制作年は文久3(1863)年9月とある。

彦三郎は梨園の生まれではなく、4代目の養子となり芸を磨いた。
五節句の内、1月7日、人日の節句に充てられている(薪水は俳号)。
この時32才、9日に登場した中村芝翫と人気を競ったという。

    


書き入れは戯作者仮名垣魯文(1829~94)。
(漢字は常用漢字に、送り仮名は適宜変換した)

「定紋の鶴(鶴の丸)は青陽(せいよう・初春)の空に翅(は)を伸(の)し
 芸頭(げいとう)の評判は 三都(みつ)の櫓に殊高(ほとんどたか)し
 幼遊(おさなあそ)びの凧(いかのぼり)に九字菱の青骨よく 
 上がる出世の位づけ 立身(立春の意味だろう)大吉門松の 竹三(たけさ)と呼びしも 昨日と暮れ
 今朝新玉の春五郎 未(ま)つ年玉も若水の 元日二日三座の稀物(まれもの)
 彼の刈萱(かるかや・刈萱道心・役の名)の山の段には 名誉(ほまれ)高野(高い×高野山)の奥義を極め
 汲みやしつらん玉川に 古人紀伊国(きのくに)の面影をふくみ
 写せし鏡山(歌舞伎の演目) 尾上(役の名)にからむ岩藤(役の名)は 草履の手練(しゅれん)たしかにこたえ
 小田に種蒔く春水の 長閑(のど)けき業(わざ)を みどりの松 
 大入り成せる大膳(栗山大膳・役の名)の いきおい竜の登るがごとく
 実盛(平実盛・役の名)が物語には 弁舌布引きの滝に似てよどまず
 道風(小野道風・役の名)の蛙場(かわずば)には 青柳のすずりの深きをさぐれり
 これを仰げばにこにこ高き 銀杏花菱 鼻ばしら
 仁木弾正(にっきだんじょう・役の名)がせり出しは 高麗唐土(こまもろこし)に聞こえたる
 甘輝(かんき・役の名)も希代の秘術をあらわし 我が日の本の神風や
 福岡貢(ふくおかみつぎ・役の名)の十人切り こは古市の古きをしたいし 二見が浦の日の出の俳優(わざおぎ)
 伊勢音頭(恋寝刃・演目)の音羽屋に 響きわたりし坂東武者
 加役(かやく・本職以外の役)に若女方(おやま)の大将軍 
 諸芸兼備の座頭かぶ こぞって旦那と侠客(たてしゅ)の花方 
 右も左もききもの ききもの

 江戸前の戯作者 仮名垣魯文」

草履の手練とは、鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)の「殿中草履打ちの段」のこと。
局岩藤は、草履で尾上をさんざんに打ちのめす。

青柳のすずりとは、外題「小野道風青柳硯」をいっている。

福岡貢の十人切りとは、「伊勢音頭恋寝刀」(いせおんどこいのねたば)での演出。
貢は伊勢古市の遊郭油屋で十人の人を殺す。
二見が浦も、「二見が浦の場」のことだ。


  

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