ちいちゃんのひとりごと

ちいちゃんのひとりごとを勝手気ままに書いています。

「霧子の場合」3

2016年01月18日 | 介護
2016.1.18
 霧子は次の日早めに起きた。起きてすぐシャワーを浴びて軽く朝食をとって仕事に行った。今日も真面目に仕事はこなした。
仕事帰りに特別寄るところもなく家に帰った。帰って軽い夕食を取りお風呂につかった。霧子は風呂上りに牛乳を飲むことを日課にしていた。この日も牛乳を飲んだ。軽いストレッチもした。
 そんな時だった。突然霧子のスマホが鳴った。スマホの相手は裕司だった。同窓会の2次会でメルアドを交換したことを忘れていた。
「もしもし!霧子!」裕司が言った。
「あっ!裕司君!」
しばらく霧子は裕司と話していた。会話はたわいもない会話であった。
「おれ、もう海外赴任しないから!」
「仕事辞めた!親父が亡くなって後を継ぐんだ!」
「葬儀屋?」霧子が言った。
「葬儀屋!」裕司が言った。
「大変だね!でも頑張ってね!」そう言って霧子はスマホを切った。
裕司は家業の葬儀屋を継ぐと言う。霧子は「頑張ってね!」しか言えなかった。
「私、何をやっているんだろう?一生OLのお局様だ!」「将来のこと真面目に考えなくちゃあ!」
「仕事辞めようかな?結婚?誰と?」
 それから数日たったある日、霧子は街の有名な占い師に自分の将来を占ってもらった。
「仕事は変えた方がいいですよ。物書きなんかがいいみたい」
「このまま今の職場で働いていてもいいことないですよ」
「今からでも遅くないから物書きになったらどうですか?」
霧子が言った。「物書きですか?」
「どこかに応募してみたらいいですよ」
「応募ですか?」
霧子は代金を払って占の館を後にした。
「物書きか?何を書こう?」
霧子は大学の文学部を出ているのでそれなりに文才はあった。が、しかし何を書いていいのか思いつかなかった。
直木賞か?芥川賞が頭を過った。あらゆる文学賞が頭を過った。
 それから3か月後霧子は会社を辞めていた。マンションのキッチンで原稿用紙に向かっていた。霧子は書いた、必死に書いた。
あらゆる想像を駆使して書いた。
「葬儀屋の女房は眠らない!」
手始めに出版社に持参した。ろくに読みもしないのに出版社では追い返された。○×文学大賞にも応募した。が、結果は散々なものであった。
「そうだ!いっそのこと本当に葬儀屋の女房になればいいんだわ!」
霧子の心に裕司の顔が浮かんだ!と同時に霧子は裕司に電話をかけていた。
(どうですか?続きは読みたいですか?)

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「霧子の場合」2

2016年01月18日 | 介護
2016.1.18
 霧子は仕事はきっちりこなす。職場でも40歳を過ぎるとお局の域に入っていた。しかし霧子は今、会社を退職して転職する勇気はなかった。与えられた仕事をきっちりこなすことで精一杯だった。そして、土日の休日は好きなことをして過ごした。
 ある日のこと、同窓会のお知らせのはがきが来た。「何年振りかしら?行ってみようかしら?」
霧子は1か月後のある日曜日、おしゃれをして同窓会の会場に向かった。会場は都内の小さなホテルだった。霧子は受付で会費を払うと会場に入った。
「あらっ!霧子!」向こうの方で茜の呼ぶ声が聞こえた。
「茜!元気だった?」
「霧子こそ!」
茜は幾分ふっくらとしていたが、学生時代の面影を残していた。
「出来たのよ!3人目!」
「えっ?」「嫌だ!この歳になって3人目!」
茜は40を過ぎたのに3人目の子供を妊娠していた。ふっくらしていたのはそのせいでもあった。
霧子は特別うらやましいとは思わなかった。
「いいな!まだ独身なんでしょう?」茜が言った。
「ええっ!」
「私なんか嫌よ!長男が高校生で長女が小6でまた子供が出来ちゃったのよ!やんなっちゃう!」
「一人の方が気楽でいいわよね」
同窓会の会場では独身は霧子と数人しかいなかった。みんなは終始家庭の話や旦那の話や子供の話を始めた。独身の霧子はみんなの話題に入り込めなかった。
「2次会に行く人!」
霧子を含め数人しか手を挙げなかった。
「ごめん!子供おばあちゃんに頼んであるから!」
「旦那がいるから…」
仕方なく霧子は数人でホテルのバーに行った。
霧子は飲んだ。隣に裕司が座った。裕司はバツイチだった。
「霧子、どこで働いているの?仕事はどう?」
裕司が霧子に話しかけてきた。
「小さな会社だから!パソコンの事務」霧子が言った。
「僕はね、海外勤務が長くて奥さんが男作って家出て行っちゃった!」
「子供がいなくて良かったよ」
霧子は裕司としばらく話していたが、会話に飽きたか別の席に移った。やがて誰かが「3次会のカラオケに行く人!」と言った。
が、裕司一人が手を挙げただけで他は誰もいなかった。
 霧子はお金を払ってホテルを後にした。駅まで急いで電車に乗った。
「行かなきゃあ良かったわ!」霧子は心の中でそう思った。「独身女は会話に加わるのは無理!」「旦那や子供や姑の話にはついていけないわ!」
 家に着き霧子は着替える間もなく疲れた体をベッドに横たえた。
(どうですか?第2弾、続きが読みたくなりましたか?)

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短編小説「霧子の場合」1

2016年01月18日 | 介護
2016.1.18
 その日は昨夜からの雪がマンションの外に積もっていた。10センチは積もっていただろう雪を霧子は窓から眺めていた。
「やだな!こんな日に病院なんて…」
霧子は心の中でそうつぶやいた。今日は年に一度の乳がんの検診日だった。
 車を出そうにもタイヤを交換していないので霧子は駅からバスで総合病院に向かった。
総合病院に着くと霧子は受付を済ませて婦人科の待合室に向かった。そこにはすでに数人の女性が来ていた。霧子は緊張をほぐすように深呼吸をした。毎回婦人科の検診は緊張する。何もないことを祈りつつ、自分の名前が呼ばれるまで本を読んで過ごした。
 ほどなくして霧子の番が来た。霧子は少し緊張しながら診察室に入った。
どれくらい時間がたったのだろうか霧子は診察室を出てきた。次はマンモグラフィーの検査をする。そして、すべての検査が昼前に終わって霧子は病院の食堂で昼食をとった。
サラダにパスタにコーヒーの昼食だった。
病院を出ると雪は雨に変わっていた。再び霧子はバスに乗り駅に向かった。霧子はこのまま家に帰ろうか?どこかへ行こうか迷っていた。
「そうだ!映画でも見に行こうかしら?水曜日だし、レディスディーだ!」
思い立って霧子は電車に乗りショッピングモールの映画館へと向かった。
「何を見ようかしら?」
「これも見たいな?あれも!」
霧子はチケットを買い、ポップコーンとドリンクも買って映画館に入った。
 40歳を過ぎて独身の霧子に結婚の話はなかったわけではない。そこそこに恋愛もしてきた。ただ不倫だけはするまいと決めていた。
酔った勢いで会社の上司に言い寄られたときは霧子はきっぱりと断った。妻子持ちの上司に興味はなかった。
年下の男はみんな弟のように見えた。大学を出てから付き合った男は数人いたが同じ歳か1つ2つ年上だった。
 霧子にこれといって趣味はなかった。読書をすることと音楽を聴くこととたまに映画を見に行くことぐらいだった。本はジャンルを問わずなんでも読んだ。大学で文学部を卒業しているせいかどんな本も読んだ。
文学部を卒業しているのに教師にはならなかった。一般企業に就職した。
 数日してこの間の乳がん検診の結果を聞きに総合病院に霧子は行った。緊張して霧子は診察室に入るが結果は異状なし!霧子はホッとして車に乗り込んだ。
 霧子は2DKのマンションに住んでいた。マンションは中古をローンで買った。駅から便がいいと言うことで買った。一人で住むにはちょうどいい広さの部屋だ。観葉植物を出窓に置き、シックに茶系でまとめられたインテリアに大人の雰囲気が感じられた。
掃除は苦手。休日にまとめて掃除をする。料理は気が向けば何でも作る。ただ一人分を作るのは難しく同じ料理を続けて食べる。
(短編小説第2弾です。これからどのように書いていくか模索中です。ご意見ご感想は私のFacebookまでお願いします。)

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