ノアの小窓から

日々の思いを祈りとともに語りたい

俳句

2016年07月02日 | 思い出



         「まあちゃん。こんな俳句書いたんだよ」
         そういって、その人は、薄い印刷物を開いて見せた。
         いくつかの俳句が出ていた。
         俳号があって、ひとり5句くらいあっただろうか。

         農協婦人部では、そのような活動もしているらしい。
         東京からたまに顔を見せる「ヨメ」に、
         その人は、自分の家業以外の活動を見せてくれたのです。
         何気なく、読んだ、俳句の中のひとつが目が留まりました。


             風呂上り 老いたる背中に 扇風機


         お題は扇風機でしたから、ぜんぶ扇風機とついていたのですが、この句だけが
         くっきりと脳裏に刻まれました。

         田舎の家は、広くて、のどかで、土間をはさんだ台所の隅に風呂があって、
         その人は、バスタオルを巻いたくらいで出てきて、囲炉裏のある居間で、
         扇風機に当たっていました。

         その光景がしぜんに重なったのです。
         その人はまだ60代半ばでした。
         いまの人なら絶対に「老いたる背中」なんて自分から言わないでしょうね。

         女学校の同窓会に行くために、長い時間、あれこれと着物を選んで
         「やっぱり服をつくっておけばよかった」とため息をつくような人だったから。

         気にしていたんだよね。わかる!!