小さな虫が一匹、白い壁を這っている。
体長5ミリほど。
ギョッとして、睨みつけると、先方はピタッと止った。
ゴキブリの幼生のようにも見える。
これは捨て置けない。ゴキブリはいないはずだったし、もし
一匹いるなら、たくさんいるはずだ。
メガネを掛けて見直した。
なんと、蜘蛛だった。
間違いなく、足が8本あるのを、何度も確かめた。
さて・・・ゴキブリなら、ティッシュでつかんで潰してくれようぞ!と思うのだけど、
蜘蛛はどうすべきなんだろう。
それにしても、どこから入ってきたのか。
「親はどこにいるの~」
と聞きたい気分だった。
大きな蜘蛛など見たこともないし、第一こんな家の中では、
将来巣を張っても、やぶ蚊もかからないよ。
きっと飢え死にする・・・。
つまんで外に捨てるのが一番いいけど、ティッシュでつまんだら潰れそうだし、
どうしよう。どうしようと、考えている間に
見えなくなった!
でも、半日も経って、ふと、進入路の見当がついた。
一か月ほど前、古道具屋で古い小さな戸棚を買った、と言うより、もらった。
ちょっとアンティークで、ぬりは剥げ、形はびくともしていないけれど、とても汚かった。
何度も拭いたつもりだっが、抽斗すべてと枠を、半日でも陽の下で干したわけではない。
明日は、ベランダに出して、日差しと風に当ててみよう。
まだ、中に、蜘蛛の兄弟姉妹がぞろぞろ残っているかもしれないし。
神様!