バレエなんて、子供だましだと思っていませんか。
踊りはなかなか高度なスキルに支えられていて、洗練のきわみにあるけれど、
出し物は、おとぎ話じゃない?
どこかの国のお姫様が悪魔によって白鳥に変えられてしまって、夜だけしか人間に戻れない。
白鳥たちの魔法がとけて人間に戻ることができるのは、夜の間だけ。
でも、誰か(素敵な王子様が)が
白鳥のお姫様を心から愛して、愛の告白をするとき、魔法は打ち破られるのです。
白鳥に変えられた王女オデットの前に、彼女を愛する王子様が現れるのです。
王子ジークフリードは、おりしも婚約者を選ばなければならない時でした。
森の湖でオデットと出会った王子は、翌日のお城のパーティにオデットを招待し
母の女王や来客の前でオデットに求婚し、結婚を発表するつもりでした。
ところが、そのことを知った悪魔ロッドバルドは、自分の娘オデールを連れてお城に乗り込みます。
黒鳥の姿をしたオディールは、オデットにそっくりです。
王子は二人で踊るうちにオディールのとりこになり、愛を告白してしまいます。
その瞬間、オデットとの約束は壊れ、高笑いする悪魔ロッドバルドとオディールの前で、
狂乱するジークフリード・・・。嘆き悲しむオデットの姿が窓の外に映され・・・。
王子は湖に行ってオデットに謝り、改めて愛を告白します・・・。
ふたりの再会を必死に邪魔する悪魔ロッドバルド。
そのあとは、演出によって終わり方が違うようですから、ぜひ舞台をどうぞ。
さとうは、悪魔が邪魔する中、王子が愛の告白を続けて結局、オデットの魔法がとけるという結末が好きです。
★★★
むかしは、さとうも、この筋書きはなんだか子供だましだなあと、
自分が子供なのに、思っていたのです。
悪魔によって魔法をかけられて。その魔法がとけるためには。愛が必要?!
こんな単純な話に、いい大人たち、知性も教養もある貴族やインテリが劇場に詰めかけたなんて。
拍手喝采で、心から楽しんだなんて。
でも、これ、聖書を知った後では、実にすんなり理解できるのです。
これはいかにも聖書が背景にある世界観の話なのです。
なぜなら、私たちはある意味で、悪魔によって魔法にかけられ、人間としての自由を失ったオデットなのです。
私たちが悪魔から自由になるためには、愛――真実の愛――神様の愛――が必要なのです。
もちろん、実際の神様はジークフリードみたいに、悪魔に幻惑されることなどあり得ません。
これは、観客の紳士方に対するサービスかも知れないと思います。
なんといっても、バレエはエンタテイメントですから。お客様を喜ばせなければなりません。
劇場を出ながら、紳士方は、自分をジークフリードに重ねて思うのではないでしょうか。
「そうだ、妻を、心から愛さなければ。悪魔の娘ではなく」
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