ノアの小窓から

日々の思いを祈りとともに語りたい

冷たい花

2014年10月29日 | 自然




       花って冷たいのね。
       いま、初めて気がついたように友人が言うのです。

       ダリヤ園の中です。

       こんなにきつい日差しでも、だから、日焼けしないのね。

       葉っぱも冷たいよ。
       私は、葉っぱを指でゆっくり撫でながら言います。
       ほんと、どうして、こんなに強い日差しの中で、ひんやりしていられるのかしら。


                  ★★  


       忘れがたい場面があります。

       映画「ラストエンペラー」の中で、清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀 の
       皇后・婉容がバーティの広間に飾られているカトレアの花を食べるのです。

       溥儀は、すでに清朝皇帝の地位を失い、日本軍による傀儡政府・満州国の皇帝に、据えられていました。
       溥儀の不安定で複雑な運命に従う皇后・ 婉容は、皇帝よりも
       もっと孤独な女の葛藤の中を生きていました。

       (どうやら)ホモセクシャルである夫とは夫婦関係はなく、彼女は美しいお飾りでした。
  
       
       他方、溥儀の弟・溥傑は、侯爵嵯峨実勝の娘・浩と結婚し、パーティの席に、
       臨月腹の妻を伴って現れます。


       婉容は弟嫁を見つめながら、溥儀につぶやくのです。
       「あたしたちも子供が欲しいわ」

       それから、そばのカトレアの花をちぎって、食べ始めるのです。
       むしゃむしゃと、まるでサラダのなかのクレソンをつまみ上げて、口に放り込むように。


                ★  ★  ★


       確かに、胸が燃えそうなとき、冷たい花びらは、気持ちを静めるのかもしれない。
       高価なカトレアの花をむしりとることなど、私にはできないけれど、

       清朝最後の皇帝の夫人とはいっても、婉容さんは、皇后だったのです。

       と、今ごろ、納得なのです。