猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

レプリカ

2017-04-11 02:30:36 | 日記
2012年のカナダ映画「レプリカ」。
弁護士のマーク・ヒューズ、不動産業の妻のメアリーは、休暇を取り、9歳の息子ブレ
ンダンと愛犬を連れ、森の中の別荘へやってきた。夫婦は娘を事故で亡くしており、
悲しみを癒すために訪れたのだった。翌朝早く、庭の物音でマークが目を覚ますと、
見知らぬ一家が薪を分けにきたと言った。あまりにも早い時間なので非常識さにマー
クはいらつくが、一家はやたら好意的で、妻は後で手料理を持ってくると言うので、
仕方なく夕食に誘うことになった。一家は夫と妻、ブレンダンと同じ年の息子と家族
構成は同じだが、息子は体が大きくとても9歳には見えなかった。メアリーは夫が勝手
に決めた夕食会に反対だったが、渋々応じた。しかし、会話がかみ合わず、距離感の
おかしい一家に、ヒューズ家は抵抗を感じてくる。

サイコ・サスペンスだが、はっきり言って「ファニーゲーム」の焼き直しという感じ。
しかも「ファニーゲーム」程のインパクトはない。でもそこそこ不気味で、まあ観ら
れないことはない。密室サスペンスはやはり怖い。娘を事故で亡くし、悲しみに暮れ
るヒューズ一家。別荘で静かに過ごしたかったのだが、隣に住んでいるという一家が
妙に馴れ馴れしく近づいてきて、断り切れずに夕食に誘うことになってしまう。一家
の夫は愛想が良くおしゃべりだが、何となくおかしい。ヒューズ家のことを色々聞い
てくるのに、彼らのことを聞くと言いよどんでしまい、言葉を濁す。
1番気味が悪いと思ったのは子供だ。ブレンダンの部屋を見たいと言うのでブレンダ
ンが連れていき、2人でテレビゲームを始めるが、子供は全く勝てない。ブレンダン
が「君、ゲーム弱いね」と言うと態度が豹変し、ブレンダンの首にナイフを突きつけ
たのだ。何とか逃げ出したブレンダンが両親に抱きつくと、子供の方も泣きながら母
親に「ブレンダンがゲームに勝てないからって僕を殴ったんだ」と言う。もちろんブ
レンダンは否定するが、子供がこういう悪意のある嘘をつくというのは気持ちが悪い。
よくあることだけれど。その辺りからヒューズ家を底知れない恐怖が襲ってくる。
凶悪な父親、頭の弱そうな母親、邪悪な子供。敵としてのメンバーは良かったと思う
のだけど、ラストがちょっとあっけなかったというか、もう少しヒューズ家の心の回
復を描いて欲しかったな、と思う。ぶつっと終わってしまった感じ。ともかく人間の
異常さ、狂気というものは恐ろしい。邦題が何故「レプリカ」なのかは観ているうち
にわかってくる。



良かったら「ファニーゲーム」もどうぞ。
ファニーゲーム



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ティエリー・トグルドーの憂鬱

2017-04-07 18:33:17 | 日記
2015年のフランス映画「ティエリー・トグルドーの憂鬱」。
エンジニアとして働いてきた中年のティエリー(ヴァンサン・ランドン)は、集団解雇の
対象となってしまう。ハローワークに通い、エンジニアとしての職は得られなかったが、
ようやくスーパーの警備員として再就職する。それは客だけでなく従業員にまで監視の
目を向けるものだった。ある日、不正を告発された従業員が自殺する。

リストラされた中年男性の苦労を描いたドラマ。フランスの失業率がどのくらいなのか、
日本より多いのかどうか知らないが、再就職の大変さはどこの国でも同じようなものだ
ろう。特に中年以降の人は。ティエリーはせっせとハローワークに通うが、今までと同
じエンジニアの職はなかなか見つからない。フランスのハローワークって面接の練習と
かするんだなあ。しかも集団で、良くないところを指摘し合ったりする。毎日のように
へこむティエリーにとって、心の支えは妻と障害を持った息子だ。家族といる時だけは
気持ちが安らぐ。結局スーパーの警備員という未経験の職に就く。
フランスのスーパーってすごく大きいし、警備員もたくさんいる。警備員は無線で連絡
を取り合っている。広いなりに犯罪も多いのだろう。万引き犯がちょくちょく事務室に
連れてこられる。皆往生際が悪い。ある日スーパーの従業員のおばさんがクーポン券で
不正をして(内容がよくわからないのだが)連れてこられる。1度や2度ではなく、何度も
不正をしていたようで、上司に解雇を言い渡されるが、彼女は必死になって「私は働き
者です」「私が働き者なのは皆が知っています」と言って上司に訴える。しかし結局ク
ビになってしまう。そしてスーパーの中で自殺する。
何も自殺しなくても…と思った。働き者であっても不正をした方が悪い。それなのに自
殺なんかされたら、上司や同僚たちには嫌な感情が残ってしまうだけではないか。私は
このおばさんが気の毒には思えなかった。けれどもティエリーにとってそれは辛い出来
事だったのだ。ティエリーの取った行動は、私は「うーん、どうなのかなあ」と思うけ
れど、ラストシーンは良かった。ティエリーに同意はできないものの、フランス映画ら
しい終わり方は良かった。ヴァンサン・ランドン、年を取ったなあ。




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若者のすべて

2017-04-04 03:02:05 | 日記
1960年のイタリア・フランス合作映画「若者のすべて」を観にいった。
1955年のある晩、ロッコ(アラン・ドロン)とその兄弟は、母親ロザリア(カティナ・
パクシノウ)と共にミラノ駅についた。父親を失った一家は故郷ルカーニアから、ミラ
ノで働いている長男ヴィンチェンツォ(スピロス・フォカス)を訪ねてきたのだ。彼に
は美しいジネッタ(クラウディア・カルディナーレ)という婚約者がいた。翌日から家
と職探しに奔走する一家。かつてヴィンチェンツォはプロ・ボクサーを目指していて、
次男シモーネ(レナート・サルヴァトーリ)と三男ロッコもクラブに通うようになる。シ
モーネは貧困と不遇のうっぷんをボクシングに賭けた。元チャンピオンのモリーニ(ロ
ジェ・アナン)はシモーネに目をつけたが、シモーネはナディア(アニー・ジラルド)と
いう女に溺れ、身を持ち崩していく。素質はあるが気立ての優しいロッコは、ボクサー
を嫌ってクリーニング店で働いた。だがシモーネが店の主人のブローチを盗んだため、
店を辞めることになった。そこへロッコに徴兵の通知が届く。

ルキノ・ヴィスコンティ特集をやっているので観にいった。この「若者のすべて」は
未見だったのでちょうど良かった。179分だが退屈することなく観られて、おもしろ
かった(この人の映画は大体長いようだ)。母親と5人の息子たち、そしてその妻や恋人
の、家族の物語である。イタリアでは母親が強いとか、身内のつながりを大事にする
とか聞くが、この映画でもそれらをしみじみ感じた。
父親が亡くなり、南部の貧しい村から希望を抱いて北部ミラノへ出てきた家族5人。
ミラノで暮らす長男を頼ろうと思っていたのだが、長男はもうすぐ結婚するという。
あてが外れた5人は、まず家を探さなければならなくなった。イタリアの経済事情は
知らないが、南部は貧しいんだな、ということはわかった。ただこれは1960年の映画
なので、今はわからないのだが。生活が落ち着いた頃、次男のシモーネは商売女のナ
ディアに夢中になり、ナディアを自宅に住まわせ、自堕落な生活を送るようになる。
母親は「皆真面目で優しい子たちだったのに」と嘆くが、こういうことってあるよな
あ、と思った。人生はちょっとしたことがきっかけで狂ってしまう。
兵役を終えて帰ってきたロッコは、刑務所から出てきたナディアに偶然会い、ナディ
アはロッコを好きになる。しかしロッコはシモーネのことを思って身を引く。その頃
シモーネは借金まで作っており、ロッコはシモーネのために気のすすまないボクサー
の契約をし、契約金を返済に充てるようシモーネに言う。仲の良かった家族は、シモ
ーネのために崩壊していく。ロッコの夢は生まれ故郷のルカーニアに帰ることだった
が、それが叶うのは末っ子のルーカ(上の4人は成人しているが、ルーカはまだ子供で
ある)だけだろう、と言ったのが印象的だった。不幸の連鎖にやりきれない気持ちに
なった。
アラン・ドロンはイタリア語が話せるのだろうか?もしかして吹き替え?彼の声では
ないような気もしたが、どうなんだろう。悲しい物語だったが、アラン・ドロンの若
い頃の映画を、スクリーンで観られたことは感激である。



良かったらこちらもどうぞ。ルキノ・ヴィスコンティ監督作品です。
ベニスに死す



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