猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

過去のない男

2013-02-21 02:23:05 | 日記
「タワーリング・インフェルノ」の怒りがまだ残っている。映画を見てこんなに腹が立つのは
珍しい。なんだあの母親はさっさと失神して救助してもらって、幼い子供たちは他人に
命がけで守ってもらって。しかもその人は死んだんだよ。一生ざんげしてろ(`・ω・´)

2002年のフィンランド映画「過去のない男」。
ある日夜行列車び乗って、1人の男(マルック・ペルトラ)が、ヘルシンキの町にやってくる。
ベンチで夜明けを待っていると、暴漢に襲われ、身ぐるみはがれてしまった。
重傷を負った男は記憶がなくなり、自分がどこの誰だかわからなくなってしまった。
親切な夫婦の計らいで、コンテナに住まわせてもらうようになった。
身元がわからないまま、男は静かに暮らしていた。
毎週金曜日は救世軍からスープが配給される。コンテナに住まわせてくれた夫に連れられて
救世軍のところへ行った男は、軍の女性イルマ(カティ・オウティネン)を好きになってしまう。
少しずつ親しくなるイルマと男は、やがて愛し合うようになった。
しかし、男が偶然に関わってしまった銀行強盗のことで、地元の新聞に載り、男の身元が
判明した。男には妻がいた。

ストーリーはシンプルである。ラストもほのぼの。
カウリスマキの映画について書くと、必ず「社会の片隅で生きる労働者や失業者の苦労とその
回復」が特徴だと書かなければならない。これはこの人のライフワークなんだろうな。
貧しい人々を見つめる目は暖かい。「ル・アーブルの靴磨き」でも、他の作品においても。
コンテナ住まいの夫婦はどう見ても貧しいのに、「住むところもあるし、夫に仕事もあるし、
恵まれてるのよ」と言う。
救世軍のイルマの部屋(寮かな?)は狭く、いかにも北欧風のかわいい家具があり、その暮らしは
やはり慎ましい。
1番印象に残ったのは、男がティー・バッグを持って食堂を訪れ、店主に「お湯をくれ」と言い、
店主がいいよと言うと、男はカップに持参のティー・バッグを入れ、ポットのお湯を注ぐ。
そうして出がらしの紅茶を飲む。それを見ていた店主は有り合わせのもので料理を作り、
「お代はいらないよ」と言って男に差し出すシーンだ。このシーンは感動的だ。

この「男」を演じたマルック・ペルトラという人は、日本映画の「かもめ食堂」にも顔を出して
いたが(かもめ食堂はフィンランドが舞台である。おもしろくも何ともなかったが)51歳の若さで
亡くなったそうだ。
コメント
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