猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

アングスト/不安

2020-08-13 22:27:24 | 日記
1983年のオーストリア映画「アングスト/不安」を観に行った。

殺人を犯し刑務所に入っていた男(アーウィン・レダー)は、仮出所した途端に
人を殺したい衝動に駆られ、家族3人が住む家に侵入する。

1980年にオーストリアで実際に起きた凶悪事件の実録映画。1983年製作の映
画だが、そのあまりの過激さや異常さから当時本国オーストリアでは1週間で
上映打ち切りになり、他のヨーロッパ各国では上映禁止、日本でも公開はされ
ておらずビデオが発売されたのみといういわくつきの映画である。製作から
37年の時を経て初めての日本公開ということで楽しみにしていた。
事件の犯人であるヴェルナー・クニーセクという人は面識もない老婦人を射殺
し、服役していた。1980年、就職活動のために3日間の仮釈放を許された彼は、
再び人を殺したくてたまらなくなり、ある家に忍び込む。その家には車椅子に
乗った障害のある息子がいた。そして後に帰宅した母親と娘とその息子を次々
に惨殺した。
ヴェルナー・クニーセクは老婦人殺害で逮捕された時、医師が「サディストで
あり精神異常だが精神病ではない」という診断を下していた。責任能力はある
ということだ。私も、この人は生まれつきサイコパスの性質を持っていたのだ
ろうと思った。子供の頃から素行が悪く、動物虐待をしていたというのだから。
生育環境のせいだけではないと思う。強盗目的などではなく単に人を殺すこと
が好きなのだ。病気ではなく、生来の精神異常というかサイコパスの人は存在
すると思う。
主演のアーウィン・レダーの演技がすごい。大きな目をギョロギョロさせて、
サイコパスの雰囲気を漂わせており、いかにも野に放たれた狂人という感じだ。
一家3人を殺害するシーンは本当に緊迫感と狂気に満ちていて、すさまじい熱
演である。映画はセリフがとても少なく、ナレーションや犯人のモノローグと
並行して展開していくのだが、一瞬たりとも目が離せない。犯人がカフェでソ
ーセージを食べているシーンは印象的だ。あんなに異様な雰囲気の男が手づか
みでソーセージを食べていたら、そりゃお店のマダムも他のお客も不審に思っ
てジロジロ見るだろう。
公開された当時上映中止になったくらいの映画なので、「本物の異常映画」と
か「トラウマ級の衝撃度」などと宣伝文句がついているが、そこまでグロテス
クな作品ではない。今だったら普通に公開されていただろうと思うくらい、衝
撃的でもない。でもとにかくおもしろいのだ。異常殺人鬼の心の闇を覗くこと
ができた気がする。間違いなく傑作だと思う。ヴェルナー・クニーセクは終身
刑を言い渡され、現在も収監中だということである。




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