始まりに向かって

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アイヌ民族と沖縄民はDNAが近い・「縄文系の血を残す」・・説は本当か?

2013-11-01 | アイヌ

一年前の新聞にあった記事です。

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2012年11月1日読売新聞

「アイヌ民族DNA、沖縄に近い・・関東と比較」

北海道のアイヌ民族は地理的に近い関東よりも、沖縄の人たちと遺伝的に近いことがDNA解析から証明されたとする研究成果を、東京大学や国立遺伝学研究所などでつくる「日本列島人類集団遺伝学コンソーシアム」がまとめた。

北海道と沖縄では、日本列島に古くから住んでいた縄文人と渡来の弥生人の混血が一部にとどまり、縄文系の人々が残ったとする「二重構造説」を裏付ける成果という。

研究チームはアイヌ民族36人と、3世代以上続く沖縄出身者35人の遺伝情報を詳細に調べた。

DNAのわずか一文字の違いを約60万か所にわたって分析。すでにデータとしてそろっている関東に住む243人と比較し、アイヌ民族は沖縄出身者により近いことを確認した。

こうした傾向はこれまでも示されていたが、データが少なく、結論は出ていなかった。

日本の南北に離れた二つの集団が近い血統だという説は、ドイツ人研究者が顔の特徴などから1911年に発表した。

研究チームの斎藤成也・国立遺伝学研究所教授は「101年を経て、遺伝情報のレベルで最終的に証明できた」と話した。


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上にご紹介した新聞記事を読み、「稲作渡来民・「日本人」成立の謎に迫る」という池橋宏氏の本を読んでみました。

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                   (引用ここから)


稲作渡来民の前に、日本ではどのような言語が話されていたのだろうか。

小泉保は、日本語の古い形を考えるには、日本語と琉球語が、近隣のどの言語より近い関係にあるということが基礎であると考えた。

それに比べると、朝鮮語と日本語では共通の語彙と考えられるものは案外少ない。

アイヌ語と日本語の同系性の証明もむずかしいようである。

さて、東北方言の北側にアイヌ語があり、列島の南には南九州の方言を挟んで琉球語が分布している。

中部、近畿と北九州地域はいろいろの点で共通性があって、北の東北言語と南の方言との間に広がっている。

大局的にみると、中央部に一つの言語が分布し、その両側に古くからの言語が分布している。

この見方から見ると、東北言語がおそらく縄文後期の発音の形を良く保持していると判断される。

また鳥取県西部で話されている「雲伯(うんぱく)方言」は、東北言語と音韻上非常に良く似ている。

小泉氏によると、これらの方言は同系であり、裏日本縄文語とでも呼ばれる言語からきているものと結論している。

それは東北から山陰地方まで連続していたと考えられる。


稲作渡来民たちは、もともと中国の春秋時代から戦国時代に、呉とか越とよばれていた地域の住民であり、不完全な渡航手段によって、小さい集団として朝鮮半島にまで移動して、一部は定着し、さらにその一部は日本列島の北九州あるいは山陰にまで渡ったと考えられる。

渡来民の波が強くおしよせた地域では、縄文人の体質的な特徴はほとんど失われてしまった。

彼らのもたらした農耕は、圧倒的に高い人口増加率を支えたのである。

「倭(わ)」と称された集団が朝鮮半島の南部から九州におよぶ稲作渡来民であっただろうと考察したが、今日その痕跡は言語にはない。

一方、7世紀前後の古代の日本語には、朝鮮語の語彙が多少は入っているとしても、対応のたどれるような言語は少ない。

結局、今日でも日本語は基本的に「縄文語」であるとみてよい。

すなわち言語の基本的な点では、稲作渡来民は日本語に大きな影響を与えなかったのである。
渡来民は縄文語に同化されたのである。


縄文人が近隣のアジアの古代人とは似ていないのと同様に、日本語の系統をアジアの近隣の言語の中に求めることは、今となっては非常にむずかしい。

また、稲作渡来民が日本語の形成に与えた影響については、けっきょくのところ、日本列島で使われている言語は縄文時代から根本的には変化していない。

ただ母音が現在の東北方言に似たものから変わり、無アクセントから、関西方言のようにアクセントに敏感な方言などが分化した。

この後の変化には渡来人の「声調」が影響したとみられる。

さらに日本語は漢語に日本語の読み方(訓)をあてて、その豊富な語彙や概念を導入し、文明を支える言語に発展した。

訓読と並行してカナ文字が生まれた。

それには、4世紀ごろから渡来した人々が、故地で朝鮮語と漢語の対比から経験したことが役立っている。

                 (引用ここまで)

                   *****

新聞記事を読むと、アイヌと沖縄の遺伝的な関係が明らかにされたということです。

縄文文化を築いた人々の子孫は、彼ら2者であるということになります。

一方、上記の本によると、日本語と琉球語はもっともよく似ているが、日本語とアイヌ語に近親性はないということです。

筆者によれば、日本語の北限は東北で、渡来系の影響の強い関西の周辺に、縄文系の影響の強い東北・南九州が残っている、という形になります。

アイヌ文化、沖縄文化、日本文化の理解は、本当に難しいと思いました。


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