「へンくつ日記」

日常や社会全般の時事。
そして個人的思考のアレコレを
笑える話に…なるべく

肉体労働は美か、醜か

2008年03月29日 18時21分14秒 | Weblog
 
 
近くのスーパーのイートイン・コーナーには
昼時になると、近くの道路工事現場で働く
作業員や警備員らが見受けられる
彼らはスーパーで弁当などを買い
椅子に座っての束の間の安らぎを得る
背中には、辛い外での労働に
耐え続けている疲れが見える
そんな彼らを、買い物客らは遠巻きにする

肉体労働は醜く敬遠するもので
その労働する者を低く見ている証かもしれない
これは世界に共通するものだ

才能があるにも関わらず絵が売れず
二人の画家が過酷な労働で生計を立てていた
ゴッホとゴーギャンである
共同生活をしていた彼らだが
労働に関する意識は違っていた



   ゴーギャンとゴッホ

ゴッホは「労働は醜い」と言い
ゴーギャンは「労働は美しい」と言った

その後の人生はというと
ゴッホは不遇の末に発狂し
ゴーギャンは南国の島で暮らした
苦難に対する二人の意識の差が
その後の人生に反映したとは言えまいか…


僕は一時期、生活のため肉体労働をした
高層ビル建築現場の雑役をやった
本来の仕事ではない
作業員の糞尿の始末もやらされた
時折、飛び散る糞尿が服に付いた
何度も水で洗ったのだが
帰りの電車で若い女性にその臭いに気づかれ
顔を赤らめ身を硬くしたのを憶えている
惨めで辛かった


その後、僕はある大企業に契約で雇われた
デスクを与えられ、本来の仕事をすることになった
毎朝、フロアーの掃除をする人々がいた
彼らは、雑然と捨てられたゴミを分別し
重い紙類を運び、汚れたトイレを磨いた
早朝から夕方まで、彼らは汗だくになって働く
過去に辛い労働を経験した僕は
彼らを眩しく見た
僕がなった卑屈さは微塵も感じられなかった
尊敬の念さえ抱いた
こういう人たちが、健全な社会を支えていると思った
働く彼らは美しかった

僕は彼らに対し、毎朝必ず挨拶と感謝を伝えた
それが数ヶ月続いた

ある日、仕事が終わりビルから出たとき
身なりのキチッとした老紳士に声をかけられた
僕は誰だか判らず、曖昧に返事をすると
老紳士は「いつも朝お会いする掃除の者です」と笑み
僕は「ああっ!」と驚いた
まるで別人なのだ
僕は笑って「私服だと、何処かの社長に見えます」
老紳士は「20年前は そうでした」と笑った

その後 暫くして
僕はその企業から離れた
老紳士とはそれきりである
今頃、彼はどうしているだろうか
彼は、生活を支える肉体労働という仕事を
とても大切にしていたように思う
それは、彼の清々しい雰囲気から分かる
人生の試練に負けていなかったのだ
だから、きっと
老紳士は今頃、タヒチあたりで暮らしているはずだ

労働は美しいと言ったゴーギャンのように…

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (kazuchan)
2008-03-30 23:43:45
なかなか含蓄のある文章でした。
勉強させていただきました。
返信する
Unknown (ノル)
2008-03-31 22:08:42
畏れ多いことです
もったいない
先生の深さに感動します
返信する

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