
中島貞夫二題。
『にっぽん’69 セックス猟奇地帯』(1969年、東映)
当初は竹中労がイニシアティブをとっていた企画らしい。エログロ版『サンソレイユ』というか……。知的で洗練されているし、今の目で見るとレトロな関心こそそそられるが、手法的には新味がない。唐十郎の語りで描かれるラストのコザのエピソードは鮮烈。深い余韻に包まれる。
『鉄砲玉の美学』(1973年、ATG)
『にっぽん69’ セックス猟奇地帯』が日本列島を南下するという構成になっていたのに似て、鉄砲玉が桜島に送り込まれるという話。
現地入りしてもミッションを果たせないまま実存的に無為をむさぼる鉄砲玉。この停滞感は『ソナチネ』に繋がるが、北野作品にあったような緊迫感がまるでない。
食べ物を頬張る口や生ゴミの露悪的なクロースアップのモンタージュに頭脳警察の主題歌がかぶさるオープニング。
渡瀬は鏡に向かって啖呵を切る練習に余念なく(デニーロか?)、ラストは血まみれで疾走し(ベルモンドか?)、桜島の観光バスの座席に座ったまま眠るように息絶える(優作か?)。バスガイドの悲鳴とともにバスの大ロングショットに切り替わり、エンドマーク。
なんのツイストもない薄っぺらで紋切り型のチンピラ像。主題歌の歌詞も気恥ずかしいくらい直球ど真ん中の「プロテスト・ソング」(選曲・荒木一郎)。兎のシンボリズムもひたすらかったるい。
監督は私財を投入して入れあげていたらしいが、「ヌーヴェル・ヴァーグ」を看板にしたよそゆきの作品といった趣が強い。タイトルもATGに押しつけられたものかとおもったら、監督自身の発案になるものらしい。美学科出身の監督らしい(?)飄逸なセンスを感じさせるコピーではあるが、およそ「中島貞夫」っぽくないタイトルだなあ。ちょっと失望。
相手役に杉本美樹(『0課の女・赤い手錠』)。
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