あわら病院には療養病棟と重症心身障害者病棟があります。
それぞれの病棟に入院されている患者さまや利用者さまは、いろいろなお薬を服用なさっていますが、嚥下機能が低下していて口から飲みこむことが難しく、経管(胃チューブなど)からの服用となる方も居られます。
経管からの服用の場合、今までは錠剤を砕いて散剤(粉薬)にして、それをお湯に溶かしてチューブから注入していました。
しかし最近、「簡易懸濁法」という薬剤投与法が、各病院に普及してきました。「簡易懸濁法」には様々なメリットがあるので、あわら病院でも薬剤科が中心になって、導入しました。簡易懸濁法はとくに療養病棟で取り入れています。
ここで「簡易懸濁法」について簡単にご説明します。
「簡易懸濁法」とは、錠剤を粉砕して散剤(いわゆる粉薬)へと調剤する代わりに、服用直前に、一定温度のお湯で溶かして投与する方法です。昭和大学藤が丘リハビリテーション薬局長の倉田なおみ先生が考案・実用化されました。
水溶性の錠剤やカプセルなら、わざわざ砕いたりカプセルを開けたりせず、水に溶かしてしまえばいい、というわけですね。
そして、簡易懸濁法には沢山のメリットがあるのです。…例えば
①粉砕によるロスの解消
粉砕法では、粉砕に使う器具や分包紙・分包機への付着などによるロスが指摘されています。調剤ロスについて、粉砕錠数や製剤により大きくばらつきが生じているという報告があります。
②分包によるコンタミネーションの防止
上記のように、粉砕法では、薬が粉砕器具や分包機に付着してしまい、次の粉砕調剤時に前の薬が混ざってしまいます(コンタミネーション)。簡易懸濁法ならコンタミネーションを防止することができます。
③与薬時に、薬の内容を確認でき、かつ被爆を防げる
粉砕してしまうと、どの薬も同じような粉薬になってしまい、薬品名が確認できません。しかし、簡易懸濁法では錠剤のままなので投与直前に確認でき、投与間違いを防止できます。また、粉砕時や散薬開封時に調剤者や与薬者への薬剤曝露(吸い込む、手に付着するなど)が起きてしまいますが、簡易懸濁法ではこれを回避できます。
④オーダー変更による経済的ロスの減少
粉砕薬剤の場合、1薬品だけの中止・変更の対応ができず、混合された全ての薬品を破棄して再調剤する必要があり、経済的ロスが生じます。簡易懸濁法では、薬を破棄する必要がなく、経済的ロスがありません。
⑤調剤時間の短縮と業務の効率化
病院薬剤師にとって、調剤時間の短縮は大きなメリットです。これまで粉砕業務に当てていた時間を他の業務に使うことが出来ます。
⑥医療費の軽減
細粒・顆粒・ドライシロップは錠剤よりも薬価が高いことが多く、簡易懸濁法導入は医療費軽減に繋がります。
⑦チューブが閉塞しない
粉砕法では、薬剤によって細粒・顆粒剤を使用したり、粉砕時に乳糖を付加して調剤したりしてきましたが、これがチューブ閉塞の危険性を増大させていました。薬のかさが増えて溶けにくくなり、詰まってしまうのです。簡易懸濁法ならチューブ閉塞のリスクを軽減できます。
⑧分包数の減少
錠剤・カプセル剤が一包化されてくるので、内服薬一回分のセットがわかりやすくなり、セットミスのリスクが減ります。時間の短縮にもなります。
どうですか。(ちょっと堅苦しい文章でしたが)今ここでも8つもメリットを挙げることができました!そういった良い方法ですから「導入しない手はない!」はずです。
しかし如何せん新しい方法なので、初めて聞くとややこしそうに思えます。ブログ編集委員Yも初めのうちは「薬剤科が何だか難しいことを言っているな」とか思ったものです。
そういうわけで導入時に各部署から抵抗にあう危険があったのですが、当院では、薬剤科と看護課がお互いに協力して積極的に説明会を開き、簡易懸濁法について皆にわかりやすく教えてくれたので、スムーズに移行することが出来ました。
療養病棟の看護師・療養介助員を対象にした、導入後の満足度調査でも、「導入してよかった72.2%」とよい結果を得られています。
薬剤科は今日も頑張っています。