旧あわら病院ブログ(2016年度までの軌跡)

福井県の北の端にある「独立行政法人国立病院機構あわら病院」の
2008年11月から2017年3月までの記録です。

BLS研修 in リハビリテーションルーム

2012年06月01日 18時08分26秒 | リハビリテーション

これまで病院全体でのBLS研修を何度か開催し、その都度、リハビリスタッフも自由に参加していましたが、今回、時間内歩行試験を算定することになり、その強化として改めて「リハビリテーション科でのBLS研修」を行いました。

 

2010年にAHA(アメリカ心臓協会)が、心肺蘇生法ガイドライン2010を発表しました。ガイドライン2005からの改定ポイントは、次の通りです。

1.呼吸確認法が「見て、聞いて、感じて」ではなくなった
2.手順の変更:A-B-Cから「C(胸骨圧迫)-A(気道確保)-B(人工呼吸)」
3.より強く、より速い、成人の胸骨圧迫:(深さは少なくとも5㎝、速さは少なくとも100回/分)

4.乳児にもAEDが使える。

AHAガイドライン2010では、「見て、聞いて、感じて」方式の呼吸確認は削除され、
「気道確保(あご先拳上)は不要、胸の動きを目で見て、呼吸をしているか10秒以上かけずに確認する」
つまり、まず見るだけでの呼吸確認法に変わっています。
これならたとえば顔のあたりが血だらけの人が倒れていても、感染対策に余計な時間を割かずに、すみやかに呼吸確認できます。

 

日本版では、慣れた医療従事者は従来通り、呼吸をしていないか死戦期呼吸(あえぎ呼吸)のみであればCPRを行うとなっています。
繰り返しますが「反応確認をする際に一緒に胸の動きを注視し、呼吸の確認に10秒以上かけないようにすることが重要」です。

 

 胸の動きを見て、呼吸をしていないか死戦期呼吸のみであれば→胸骨圧迫開始!

C(胸骨圧迫)-A(気道確保)-B(人工呼吸)の順番のメリットは、発見から胸骨圧迫を始めるまでのタイムラグがきわめて短いことです。
30回の胸骨圧迫、頭部後屈あご先挙上で気道確保し人工呼吸2回、これをAED(自動体外式除細動器)が到着するまで行います。

胸骨圧迫の手技では、質の高いCPRのため、今まで以上に「強く、速く」が強調されています。
成人に対する圧迫の深さは5㎝以上←3~5㎝から変更
圧迫のテンポは100回/分以上←約100回から変更

 

 これは小児の場合。

 これは乳児の場合。

*補足:
成人に比べ、小児が心肺蘇生を必要とする場合の原因が、突然の心室細動や心筋梗塞といった心疾患であることは少ないです。小児の心停止の原因は多様であり(気道異物による窒息、溺水、喘息、けいれん、感染症、SIDS、先天性心疾患など)、呼吸のトラブルによる心停止が多いです。つまり成人と違って、除細動(電気ショック)の適応は少ないと思われます。AEDばかりに意識が集中して、胸骨圧迫、気道確保、人工呼吸に気が回らなくなってはダメです。

*補足2:
胸にボールなどが当たった衝撃で起こる心臓震盪に関しては、速やかなCPRとAEDが重要です。

 

 

今回の研修のインストラクターは4月に赴任された、M医師です。
M医師はACLSインストラクターの資格を取得し、常に携帯用マスク(と多分、手袋も)を持ち歩いてスタンバイしています。(流石です!

 

あわら病院は今日もトレーニングに励んでいます。