日々の出来事

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昔の常識、今は非常識

2010-12-07 16:14:39 | Weblog
日々、真面目に勉強していてアップデートしていても、
追いつかない分野では、5年も10年も前の感覚でいがちです。
医療の分野は特に進歩が著しいです。

例えば、手術前に以前はバリカンで毛を刈った後、
カミソリで剃るのが普通の行為でした。
しっかり剃って、しっかり消毒が基本でした。

しかし今は、剃ることによって「眼に見えない傷をたくさん作ってしまう」ため、
かえって感染が生じやすい、と考えられてきています。
頭部など限界はある場所は別として、なるべく剃らない方向に変化しています。
皮膚もブラシでゴシゴシと擦らないようになりました。

皮膚の深部や臓器内(例えば肝臓)にはバクテリアがいるため、
内部を完全に無菌化できないわけです。
「手術に必要な時間、感染が生じないように管理できればよい」
ということが、最近の考え方になっています。

術前・術後の抗生物質の使い方も変化しています。
今の考え方は、術前に投与して術中に最高血中濃度を得て、
長引くようなら術中に追加、術後は長期には投与しない、
という方針になってきています。
昔は抜糸まで抗生物質を与えている場合も多々あったようです。

外傷に対する管理方法もガラッと変わってきています。
消毒して乾かす方法論から、洗浄にとどめて潤った環境で管理する。
そのほうが早くきれいに治る・・・。
これを実感する症例に出逢ったときは、感激しましたね。
「ホントだ・・・」とリアルに実感しました。

時代が進むと今の常識は、将来には非常識になっていることでしょう。
ある病気に対して、「抗生物質なんて使ってたんだ・・・」
と言われる日が来るのかもしれません。

現場では、現時点でのエビデンス(根拠)に沿って、
常識的な医療を提供することが重要かと考えています。
これがいいとか、あれはよくないとか、もっといい方法があるとか、
検討なくして進歩無しです。

医師や獣医師の中でも、いろんな意見や考えの持ち主がいます。
適切な議論は進歩の源です。
言い方や聞き方には配慮が重要で、若い先生を中心に、
学会での質問の仕方もずいぶん変わりました。
 
 「私はそう思わない!」とか
 「それはすでに私が発表した!」などと言う代わりに、
 
「なぜ先生はそのように判断なさったのですか?」とか
「私の症例との違いはどの点にあるとお考えですか」など

上手な聞き方・言い方の先生が増えてきています。
医療の今の常識が、将来は覆るのでしょう。
謙虚に対応していきたいと思っています。










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