日々の出来事

当院の出来事を紹介します

初診だけれど助からず・・・

2015-04-02 23:10:53 | Weblog
午前中に初診で、小学生の女の子二人が、
血を吐いて倒れたというコッカー・スパニエルを抱きかかえて来院しました。
聞けば、6年生で、春休みで自宅で遊んでいたら急に血を吐いて倒れてしまった、
両親は仕事で不在、連絡がつかない・・・とのことでした。

ゆっくり診ている状況ではありませんでした。
緊急にどんどん治療を進める、確認の検査を進める必要性がありました。
血液を採取、酸素吸入しつつ血管留置針を設置、心電図モニタリングを開始、
親御さんに連絡をとってもらうように指示しました。

連絡がつく前に彼女たちが聞いてきたことが二つ・・・。
1) 助かりますか・・・?
2) いくらかかりますか・・・?

助かるか否かは、調べつつ治療をしてみないとわからない、
いくらかかるかは重要だが、それは親御さんと交渉する、
費用のことは後で相談する、

そういう話にして、私は獣医さんとしての仕事を開始しました。
血液検査が上がってきたところでお父さんと連絡がつきました。
こちらが提示した予算は、ご了解いただけました。

急性の肺水腫による吐血と診断、強心利尿にて厳重管理をしていましたが、
14時ごろ急変して、残念ながらお迎えが来てしまいました。

自宅から10kg 近い犬を抱えて、歩いて連れてきてくれた女の子たちの気持ちを考えると、
お救いできなかったことが残念でなりません。
手は尽くしたのですが、お返しする際にはたくさん泣かれてしまいかわいそうに思いました。
本当に切ない状況でした・・・。 合掌








ギプスが取れました!

2015-03-25 22:53:42 | Weblog
2月25日の朝、濡れた階段でスリップしたことで左足首を骨折していました。

3月24日に次男の卒業式があり、スーツを着たいという都合もあって、
整形外科の先生と相談し、ギプスを外してもらいました。
約1ヶ月ぶりの開放感で、はじめはむくみがありましたが、徐々に引いてきています。

おっかなびっくりで二足歩行もしてみました。
関節が固まってしまっているため、木馬歩行ですね。
アキレス腱が伸びません・・・。
ゆっくりなら二足歩行が可能です。

周囲の方々は、「無理をするな」「足を使うな」と心配してくれます。
しかし・・・、現在の整形外科における骨折治療の理想は、
 
 開けない・いじらない・すぐに使う

であります。

骨折のズレがひどい場合は手術による整復は必要悪であります。
可能なら、空気にさらさない・光を当てない・軟部組織を大切にする・・・
これらのルールを守る方が、圧倒的に早く治ることが証明されています。

手術するにしてもしないにしても、急性期が過ぎたら

 「なるべく早く使わせる」

これが基本です。
骨折部に、ある程度の負荷がかからないと、くっつこうとする反応が生じないのですね。

大昔は、「仮骨を作らず」「解剖学的にきちんとした形に戻す」
これが重要とされていました。
しかし現在は違います。
 
 「仮骨はできても問題なし」、「解剖学的正確さより、いびつでも骨の強度優先」

そういう時代です。

私が骨折したすぐ後に、歌手の吉川晃司がバイク転倒で同じ部位を骨折されたようです。
手術をした翌日にはコンサートを強行したと記事が出ていました。
気持ちがよくわかります。

 「骨折ごときで休んでられるか!」

風呂や階段など、かなり不便でしたが、ようやく普通の生活になりつつあります。

二本足で立った私の姿を見て、スタッフが院長痩せましたね・・・、と言いました。
運動できないし、松葉杖生活だったから、やつれたのかも・・・、

階段が自分で上れて、それだけでうれしいのが不思議ですね。













残念な経過・・・

2015-03-12 21:55:16 | Weblog
慢性腎臓病もちの老猫ちゃんが、歯科処置を乗り越えて入院していました。

術前検査でひどくはない・腎不全ではないけれど・・・、
そういうレベルでしたので、十分な対策をして治療に臨みました。
抜歯と歯石除去は無事に終了できていました。

術後管理のため、しばらく点滴のため入院していました。
今朝も診察して、血液検査の値も落ち着いていたので、午後の退院を決めていました。
しかし・・・、

私が私用で外出中の午後の診療時間の前に、つまり退院の直前に・・・

  「お亡くなり」になって看護師が発見してしまったのです・・・。

すぐに戻って確認しましたが、お迎えはきており、特定の原因は確認できませんでした。

とても馴染みの飼い主さんで、退院の話も出ていただけに、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
スタッフも何が問題だったのかはっきりしないため、モヤモヤが残ります。

飼い主さんがとても大切にしてくれていたことはよくわかっていたので、
動物の医療にかかわる者として、甚だ残念に感じています。








アトピー性皮膚炎にたいする減感作療法

2015-03-04 23:33:06 | Weblog
昔に習った、アトピー性皮膚炎に対する減感作療法・・・、
理屈は理解していたものの、あまりに面倒くさくてとてもやる気にはなれませんでした。
忙しい日々の中でやるには、あまりに煩雑すぎ、専門家の仕事だろうと考えていました。

しかし最近提案されてきた、新しい減感作療法は検査が陽性の犬にだけ実施する上に、
週一回で計6回で終了できるシステムなので、最近がんばって実施しています。

仲間うちでは、「そんなに劇的には効かないよ・・・」

と聞いていたのですが、なかにはすごくよく効いてくれた子も出ています。
少なくとも、全く効果が無かったな・・・というケースはないですね。
それ相応の改善効果は出ていると感じています。

何度も何度も皮膚病を繰り返す犬がいて、獣医師の頭を悩ませます。
種々の感染症や食物アレルギー、脂漏や湿疹体質など、原因が複合的で分析が難しいのが、皮膚科です。
それが動物病院の仕事のおよそ30%を占めていますから、皮膚病苦手では獣医さんはできません。

外科が好きな私は「一発全治」を目指すほうが性格に合っているんですが、
コツコツと理詰めでいく内科の典型である・皮膚科は案外深い興味をもっています。
「形成外科」的な視点で皮膚病を観察しているせいか、ごく普通の皮膚科の診たてとは違うと自覚しています。

研修医の頃に、初めて皮膚科を教えてもらった先生二人が、異なるタイプであったことが幸いしました。
コテコテの内科系皮膚科医の先生と、外科手術をするが皮膚科も診ている先生でした。
双方共通の概念もありましたが、やはり外科の視点がある先生はちょっと感覚が違っていました。

どちらがいいとか、悪いとかではないのです。
観察している目、解析している世界観が違うのですね。
未知な部分がまだたくさんあるのが皮膚科です。
専門家から「ニキビダニは培養できないから生態がよくわかっていない・・・」
と伺って、ちょっとびっくりしたことがあります。
また毛包で「ブドウ球菌がなぜ感染するのかはわかっていない・・・」
これも当たり前に考えていた身からすれば未解明・不思議です。

分からないことはわからない、とはっきり自覚して、できる「火消し作業」をやっています。
皮膚科はなかなか奥が深く、新型の減感作療法という新しい武器を手にできて幸いでした。
私の場合、わけがわからない場合はバイオプシーして病理の専門家の意見を聞いてしまいます。



骨折のその後

2015-03-04 00:15:36 | Weblog
左足首の骨折から6日たち、整形外科に再診してきました。

足先のむくみが悪化して、指の付け根に内出血が拡がってきたため、
ギプスを外して状況を確認しました。
レントゲンの再撮影では、経過は悪くないようです。

骨折に関しては、理想は(手術で)開けない、空気に触れさせない、光にもあてない、
が理想です。
ズレがひどい場合は手術で開けて、固定具で安定化させることも必要ですが、
ズレがなければ開けずに固定・安定化が一番治りが早いということがはっきりしています。

今回は、骨折線のズレがほとんど無いため、ギプスで固定しています。
それでも完治には2~3ヶ月と予想されています。
1ヶ月で骨は接合するんでしょうが、関節のリハビリや外傷の治癒までいれると、
そのくらいかかるかもしれませんね。

右足が大丈夫なので運転できることが幸いですが、
階段などの移動がタイヘンなので、しばらく不自由な生活が続きそうです・・・。

骨折しちゃいました・・・

2015-02-27 12:09:19 | Weblog
水曜日の朝、病院へ移動する直前に雨に濡れていた階段でスリップ、
転びはしませんでしたが、左足が外に捻じれました。
医学的には「外旋」したわけです。

その瞬間、小さくコキッと音がしました。

あ、折れたかな・・・と感じましたが、不思議とその瞬間は痛くなかったですね。

ゆっくりと座り込み、自己観察していましたが、その後は力が入らない感じになりました。
家内に玄関まで引き戻してもらい、その後はしばらく世界が白くなって見えました。
視界に星が飛びましたしね。
ああ、内因性の脳内麻薬が出てきたんかいな・・・、
こういう時は、医学的な知識があることがいいやら悪いやら・・・。

10分くらいで何とかなってきたので整形外科へ直行、
レントゲン写真では、左脛骨の外踝の斜骨折が確認されました・・・。
ギプス固定してからは、相当に楽になりましたけど・・・。
まだ腫れがひどいですね。

手術は必要なし、固定して早期リハビリ予定で、治るだろうと考えます。
階段の特に上りが不自由極まりないですね。
皆様もお気をつけください。




時間外診療

2015-02-11 22:59:15 | Weblog
最近の時間外診療のご要望の大半は、何故か普段使いしていない方々です・・・。

一回は来院したことがある・・・、
だから診察券を持っている・・・、
したがって時間外の電話番号をゲットしている・・・。

でも普段のワクチンやフィラリア予防は別の動物病院さんに行っている・・。
時間外に困って、診てもらいたいお気持ちはわかります。
私たちもなるべく診てさしあげたいと思っています。

時間外専用の携帯電話は、元々、

 「いつも来てくださっている方のために、こちらも無理をします」

という誠意の現れとしての対応なんですね。

しかし「かかりつけ」という言葉は死語になった・・・そういう時代のようです。

獣医師としての自分のやり方に、嘘はつけません。
可能な限り、時間外も対応し続けていくとは思います。

都合の悪い時だけ、「時間外でも診てくれる物好きな獣医だから・・・」
それで電話してくるのは遠慮して欲しいと思っています。
普段使いしていて遠慮深い方は電話して来ない・・・、
これでは本末転倒なんですね。












いかに時間が重要なものか

2015-01-28 22:50:01 | Weblog
年齢と共に、時間の重要性を痛感する今日この頃です。

一日は、24時間・1440時間・86400秒であります。
まさに一人一人の与えられた平等の条件です。
逆戻りできない大切な時間をいかに大切にするか・・・、永遠のテーマでしょう。

最近は、すっかり余命を意識してしまうようになりました。
残された時間は有限であるのは確実で、人生の半分は完全に越えた実感があります。
月曜日の夜に実家に宿泊したのですが、母の方が私より健康管理に熱心で、
私より長生きしそうな気さえしてきました。

とはいえ何かを悲観しているわけではありません。
私の人生で出逢った大切な方が、この数年で何人もお亡くなりになったため、
人生の有限性を感じ、ある種の覚悟をしてきている次第です。

「今、診ている犬や猫が長寿を全うした場合、それを自分が最後まで診れるのか、
看取れるのか、もしかしたらヤバいかも・・・」、と考えることもあります。

可能な限り、現役の臨床家でありたい・・・、
飼い主さんや動物たちの役に立ちたい・・・、
そういう思いが、今の私の時間に対する気持ちにつながります。











知的な興奮

2015-01-28 00:01:16 | Weblog
月曜日の夜に研究会の会合があり、東京へ出張しました。
研究のモデルを整えるために、医学部の教授が同席してくださいました。
人で治験が行われている物質が、動物でも有効かどうかを検証するためですね。
うまくいくと、新しい治療方法の開発につながります。

研究のモデルをつくるには、乗り越えなくてはならないハードルがたくさんあるようです。
獣医さんサイドの感覚と、人の医学サイドの感覚が違うんですね。

教授は、研究の組み立てやデータ解析のプロ、
我々はそのあたりが素人レベル・・・、
見えている先が違うことを感じました。

専門が異なるとはいえ、私たち獣医師が、どういう事情を抱えて、
何を目指したいかは、しっかり理解してくれていました。
お互いに足りない部分を補い合い、よいデータが集まって論文ができたら最高です。

日々の診療ももちろん重要ですが、未知の領域で新しい治療方法を確立できたら・・・、
治らない・・・とされている病気がよくなったら・・・、
動物やご家族の悩みや苦しみを改善することができたら・・・、

臨床家としてこれほど嬉しいことはないでしょう。
そして、それを次世代につなげていきたい、と願って頑張っています。







エンドトキシン・ショック?

2014-12-05 22:54:27 | Weblog
昨日、比較的簡単な外科処置をしたワンちゃんが、術後数時間して急に状態が悪くなりました。

術後数時間たった後に、縫合部からのじわじわとした出血が止まりません・・・。
術前検査では、凝固系を含めて大きな異常は認められませんでした。
しかし術後数時間で白血球数がほぼゼロになり、凝固系の明らかな異常が観察されました。
敗血症や全身性炎症反応症候群・SIRSや播種性血管内凝固症候群・DICへの移行が疑われました。
グラム陰性桿菌の感染によるエンドトキシン・ショックもありえましたが、どうもその可能性は低いようです。
原因がはっきりしないので、少々不安な状態で経過を観察しています。

あまりにも急な経過で、判断を下してからは早々に輸血を開始して抗生物質の変更を行いました。
夜から真夜中まで7時間くらいたって、ようやく出血が止まりました。
一晩寝ずの観察を続けた結果、今の状態は安定しています。

まだまだ油断できませんが、全力でお救いしたいと思って頑張っています。