まるみのあっちこっち巡り

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映画 バンクーバーの朝日

2015-01-11 01:14:12 | 映画(劇場鑑賞)
戦前のカナダ・バンクーバーに実在した日本人野球チーム
「バンクーバー朝日」という存在を知りませんでした。

2002年5月15日のカナダ・トロントで地元ブルージェイズが
シアトル・マリナーズを迎え撃つ一戦の始球式で、
イチロー選手や佐々木選手、長谷川選手が見守る中で、
5人の老人がマウンドに現れ、ボールを放つと観客は沸き、
球場はスタンディングオベーションで包まれたそうです。

その老人達こそ「バンクーバー朝日」のメンバー。
そして、2003年にはカナダ野球の殿堂入りを果たしたのです。
チームの解散から60年もの月日が流れていました。



この実在した野球チームの奇跡の物語を映画化したのが
この「バンクーバーの朝日」です。

ショートを守るキャプテンのレジーに妻夫木聡、
ピッチャーは、牧田投手と対戦したロイの亀梨和也。
キャッチャーは、高校時代に
松坂投手とバッテリーを組んでいた上地雄輔。
脇を固めるキャストも豪華俳優陣です。


2012年西武ドームのバッターボックスに立った亀梨クン

19世紀末から戦前にかけて、貧しい日本を飛び出し、
アメリカ大陸へと渡った日本人達。
「3年働けば、日本で一生暮らせる」と言われ、
希望を胸に船に乗り、アメリカ大陸へと渡りました。

オレンジ色の煙突は、商船三井の前身の船なのでしょうか?
私がニューイヤークルーズで乗船したにっぽん丸も商船三井。

オレンジ色の煙突がトレードマーク、煙突の煙を見ながら
洋上で過ごす時間を幸せと感じたものですが、
新天地を夢見て海を渡った日本人も
夢や希望を抱いて乗船していたはずです。

しかし、待ち受けた日々は不当な差別と過酷な労働
祖国に戻ることもできない貧困の現実。

真実は映画よりも過酷なものであったに違いありませんが、
そのような中でも日本人街の移民2世の若者の間に
一つの野球チームが生まれたのです。

蔑まれながら過酷な労働にも耐え、野球の練習に励む彼ら。
カラダも小さく非力な日本人がパワーのある白人との対戦は、
子どもと大人が野球をしているようなものでした。

大敗する日々を変えたのはその戦術です。
バント、盗塁、ヒットエンドラン、スクイズ、俊敏な守備、
頭とカラダを存分に駆使した小回りの効いた野球です。

その野球は、日本人街の人々を熱狂させただけではなく、
白人をもファンにさせた「朝日」、奇跡の西海岸リーグ制覇。

あの大戦がなければ、それは語り草にもなったでしょう。
強制収容所へ移住させられ、日本人街も消滅し、
「朝日」は歴史の闇に葬り去られてしまいました。

でも、これは風化させてはいけない事実なのです。
逆境を乗越えるにはどうすべきか、
異国の地で暮らす知恵、学ぶべきことも多いようです。

今でこそ「クールジャパン」と評されることもありますが、
日本人蔑視の歴史も忘れてはいけないのではないでしょうか。
題材は野球ではありますが、いろいろ考えさせられる映画でした。

映画を見終えて劇場を出る時に老夫婦が
「真面目に作った映画だね」と、話されていたのを耳にしました。

監督:石井裕也 

T・ジョイ大泉

2015.1.7
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