美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

グローバル化と右傾化

2014-02-25 18:25:18 | Weblog

 

‘グローバリゼーション’という言葉が頻繁に登場するようになったのはいつ頃からかは定かでありませんが、近年 現代人にとって当然持つべき価値観として暫し取り上げられます。しかし、一般的に日本人が考えるグローバル化、そしてその条件をあげると、欧米文化やシステムを理解し、英語を習得することが重要であると考えるのが自然です。勿論、世界共通語となった英語を習得する必要性は強調し過ぎることはありません。海外の学会に出ると、優秀な研究者が内容よりも英語能力の問題で実力が過小評価され、主張を十分に伝えきれない場面はあるからです。勿論、英語のスピーチコンテストでない以上、最終的には研究成果が重要であることは当然ですが、どうしても英語で捲し立てられた時のもどかしさ、そこに微妙な劣等感を感じないと言えば嘘になります。この感覚は多かれ少なかれアジア諸国共通のものでしょうが、日本人には特に強い部分ではないかと思います。

江戸末期、徳川幕府の弱体化で不安定な政情の中、黒船来航をきっかけに欧米の文化、科学力に衝撃を受けた日本は、維新以降の急激な欧化と西洋文化崇拝へと駆り立てました。当時 明治政府の目標は、「西洋と対等に外交関係を結べる文明国」であり、庶民も競って英語塾に殺到する所謂初の英語ブームが起きます。やがてこのような欧化思想が、西洋人を人間個人としても優等民族と考える人種論に発展し、西洋人と結婚し民族を改良しようという理論まで生まれました。その一つが「日本人種改良論」高橋義雄 1884年出版)であり、この本の序文を書いたのは福沢諭吉です。こうした西欧コンプレックスは、同時に国粋思想とともに、他のアジア諸国への優越感、蔑視にもつながっていきます。一方、同時代の朝鮮半島は朝鮮王朝末期、高宗の実父 大院君のもと欧米列強の圧力に対して強硬な鎖国、攘夷政策をとり続け、結果的に近代化に乗り遅れ清国と日本の間で翻弄される運命をたどります。

日本を訪れた外国人が、日本のテレビや雑誌の広告に登場する欧米人やハーフの多さを不思議に感じることはあると思います。この点ももしかすると、維新以降、そして戦後の欧米に対する憧れの意識も影響しているかもしれません。その国を知るのに歴史を学ぶことは、決して過去にこだわる為ではなく、現在と未来を理解するための手段の一つであり、停滞している東アジア関係の解決のヒントも見つかるかもしれません。

2013年も残すところ半月余りとなりました。この時期になると誰もが一年を振り返り、今年あった様々な出来事を思い浮かべ、時の流れの速さを実感するところです。私も5年前に本紙にコラム掲載をスタートし、よく三日坊主がここまで続いたという記念?に厚かましくも今年一冊の本を出しました。専門書や論文は別として、随筆の本など出版するとは本当に不思議な縁だと考えます。自分のことさえ予想がつかないのが人生ですが、日韓をはじめ、世界の多くの人々に予想以上の良い出来事が起きることを願い、今年最後のコラムを終えたいと思います。

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