美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

医者と理髪師

2012-03-29 12:24:25 | Weblog

平成23年度の医師国家試験合格者が発表されました。今年の合格者は、昨年より148名多い、7686名でした。お隣、韓国はというと、年間4150人の医師・漢方医師(韓医師)が輩出されていますから、人口比から見れば、日本より医師数の増加率は高いと言えます。しかし、人口千人あたりの医者の数は、OEC諸国中、日本が下から5番目、韓国は下から3番目と最下位圏に位置しています。(2009年統計)医学教育や医療制度でも類似点が多い両国ですが、医師不足などの問題点も共通のものがあります。これだけ多くの医師が毎年輩出されているのにも関わらず、医師の数が足りないことで‘医療崩壊の危機’とまで言われているのは何故でしょうか。

韓国も日本も大都市圏は病院、クリニックは不足どころか飽和状態といっても良いくらいです。問題は、地域的な格差と診療科での医師の偏在にあります。人口が多く、インフラが整備された都市に比べ、過疎化が進んだ地方に医師が集まりにくいのは、日本や韓国だけではなく多くの国が昔から抱えている課題です。一方、外科、産婦人科、小児科など、研修や仕事がハードで、且つリスクが高いと考えて、それらの科を志す若い医師が減少している診療科の偏在は、今後より深刻な問題となりえます。産婦人科や小児科でも、特に出産に関与する医師たちは、少子化、夜昼関係ない診療体制、医療訴訟の増加などで、現役の専門医の中でも、お産を扱わなくなったケースも増えています。それでも、危機感を持った医療機関や教育現場の努力で、ここ数年はかろうじて減少に歯止めがかかっています。外科医の方は、財政的に医療費削減を求められる中、現状の保険点数では、実際にかかる診療費を賄えず、手術をすればするほど病院は赤字が増えるといった声が聞かれるなど、今の保険制度全体を考えずには、医師の努力や志だけでは解決できません。実際、十数年前に大学からの派遣で形成外科医長として働いていた地方の病院も、私が退職した数年後に経営上の改革で一般外科を廃止しました。

それでも大学受験での医学部人気は、日本、韓国ともに全く衰えません。医師という職業は勿論やりがいのあるものではありますが、偏差値が高いからと目指す今の風潮もどうかと考えます。医者の掲示板サイトであった話を紹介します。「研修医の一人に中卒で理容師になってから一念発起して大検、国立大医学部を出たヒトがいました。利発な女性であるとき病棟で時間が空いたからと身寄りのないお年寄りの 髪を切ってあげていました。私はそのとき本当に観音さまを見た気分でした。心の中で手を合わせました。」外科医の始まりは、理髪師が起源だといいますから、彼女はきっとすばらしい外科医になるでしょう。

 

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人種差別と容姿

2012-03-22 12:56:22 | Weblog

アメリカ アトランタのコーヒーショップを訪れた韓国人客が、名前の変わりに「つり上がった目」を描いたカップを渡され、‘韓国人蔑視’と抗議した事が報道され、韓国で話題になりました。その少し前もニューヨークのピザ店で、店員が韓国人女性客に「つり目の女性(lady chinky eye)」と書かれたレシートを渡したことが波紋を呼んだこともあり、特にアメリカの韓国人社会で物議をかもしたようです。Chinkyとは割れ目、裂け目を意味する単語ですが、英米では中国人や中華料理店を指すやや侮蔑的な俗語として使われることもあるようです。当事者でない人間にとっては、軽率で思慮のない店員のした事で、そこまで大騒ぎすることはないとも考えがちですが、アメリカのような多民族国家に住む非白人種の人々が、平素様々な場面で感じる偏見や差別が表面化したものなのでしょう。

人間社会における‘不当な差別’の定義については、未だにいろいろな議論があり、はっきりしたものがないのが現状です。定義の一つに、「本人の特性・選択と関係ない事実や、個人の行動と無関係に作られた社会的集団に属している事などを理由に虐げ、不利益をあたえること。」といった表現がありますが、何か解りにくいですね。要は「選択・変更が困難な性質、つまり自分ではどうしようもない事柄を理由に否定的な区別をすること」と言えるでしょうか。アメリカでの出来事も、生来の人種的特長に対する容姿差別が、結局はその本質として人種差別と重なることが問題視されたものです。

韓国では外観や容貌の優越を、人の評価基準として重視する傾向は日本より明確です。それが今の化粧品やエステなどの美容産業、さらには美容整形などの発展を導いたとも考えられます。一方、差別という言葉は言い過ぎかもしれませんが、多くの人が就職や人間関係において、外見による待遇の差を感じる人が多く、またその人自身、見た目で相手を区別することに罪悪感を感じる人は少ないでしょう。人種差別が時に容姿差別と言う形で表面化されることを考えると、特に私のような美容外科を専門とする人間には些細な問題とは言えません。

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済州島の数字

2012-03-15 10:57:47 | Weblog

「新世界の七不思議(自然編)」に韓国の済州島が選ばれ、新たな観光客招致のきっかけになればと当地では大いに期待しているようです。元々世界の七不思議と言えば、紀元前2世紀にフィロンによって書かれた古代の七つの巨大建造物を指したものでしたが、現存するのはキザの大ピラミッドのみです。今回、スイスの「新世界七不思議財団」が現代の世界七不思議を決めようと2007年の第一回に続いて、世界中からの投票をもとに第二回目の選定となりました。ただし今回は自然編という名のとおり、人の手によるものではない自然景観や自然遺跡を条件としたものです。しかし、古代の七不思議は地中海領域に限られたもので、情報社会の現代まで七つという数字に絞る意味はあるのかと落選した地域などでは不満げな声も聞かれます。

そもそも西欧でラッキーセブンなど「7」と言う数字が特別な意味を持つのは、旧約聖書にあるように神が七日目に天地を創造したことから聖なる日、完全な数字となりました。日本では、‘ミスタージャイアンツ’長島茂雄さんの影響からか「3」や、漢数字の形から末広がりということで「8」が好まれるのではないでしょうか。中国人が最も好きな数字も「8」だといわれますが、これは8の中国語読みが「発」に似ていることから‘発財’すなわち‘財を成す’という意味につながる為です。確かに中国にあるホテルの電話番号は、8が並ぶものが多いですし、8月8日はどこの結婚式場も予約で一杯になるといいます。では,韓国人が好む数字何でしょうか。長島さんとは関係なく、やはり韓国でも「3」は縁起の良い数字として扱われています。これは高句麗の建国神話で登場する三足鳥などでも表現されるように、3が太陽を示すことに由来するようです。また、古くからの土俗信仰のも三神信仰があり、子供の生後一年目のお祝いには、三神ハルモニ(婆さん)という妊娠・出産の神様に感謝して果物や餅を供えます。今回「新世界七不思議」に選定された済州島にも、本土とは違った独自の建国神話である「高、梁、夫」の3つの姓を持った3人の神による三姓神話が存在するのも非常に興味深いものです。

数字の3と言えば、‘済州島の特徴に「三多」と「三無」があります。三多は「石と風と女」、三無は「泥棒と乞食と大門」です。自然環境の厳しさと、そこから育まれた住民の信頼関係と団結力を示すものでしょう。

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