美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

雨の日に食べたくなる料理

2012-07-25 18:05:16 | Weblog

 

皆さんは、最後の晩餐に何を食べたいか考えたことはありますか?何でも希望通りだとしたら、まだ食べたことがないような世界の珍味や、贅を尽くした豪華な料理を希望する人もいるでしょうが、多くは食べなれた好物であったり、子供の頃の懐かしい味ではないかと想像します。私の場合もやはり後者の方で、そのメニューの一つに「パジョン(파전)」があります。韓国風お好み焼きといった食べ物ですが、日本ではチヂミ(찌짐)と言う呼び方がより知られています。一般的に韓国では溶いた小麦粉などと混ぜて具を焼いたものを、プッチムゲ(부침개)またはジョン(전、煎)と言いますから、厳密に言えばネギ(파)を入れたものがパジョン(파전)、チヂミ(찌짐)はプッチムゲ(부침개)の慶尚南道地方の方言だと思えばよいでしょうか。

韓国を代表する料理として、キムチや焼肉と共に、パジョンなどの様々なプッチムゲ、ジョンがあります。その中でも緑豆を挽いた生地で作るピンデトック(빈대떡)はもちもちした触感から特に人気のメニューです。ピンデトックという名前の由来として、朝鮮時代に凶作の年は、首都ソウルにはいる城門の一つ、南大門の外には多くの流浪民が集まり、そんな時 当時の権力者がピンデトックを牛車に積んで持っていかせ「どこどこの家からの善行だ。」といいながら分け与えたと伝えら、ここから‘貧者の餅’(ピンジャトック)からビンデトックになったという説が有力です。この由来は別としても、庶民に愛されてきた味であることは間違いありません。

先日、韓国の患者さんとたまたまパジョンの話になって、「子供の頃は雨の日によく食べた。」と言われました。確かに韓国ではパジョンやピンデトックを雨の日に食べたくなる料理と表現されることがあります。昔は雨が降ると農作業、今は買い物が面倒になり家にある有り合わせの物で簡単に作れるからということがあるのでしょう。また、ピンデトックを油で焼くパチパチいう音が、雨の音ににているから余計食べたくなるという話もあります。原稿を書いている今も雨音が聞こえてきました。パジョンとマッコリで一杯やりますか!

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男と女と煙草のけむり

2012-07-09 18:29:08 | Weblog

哀愁漂う音楽が流れる中、主人公が煙草を口に咥え無言で佇む姿は、昔の映画ではよく見られたシーンでしたが、最近はどの映画も明らかに喫煙場面は減ってきているようです。タバコの健康被害が広く認識されたことから、特に青少年への影響を危惧して喫煙シーンをできるだけ減らせという圧力があるからでしょう。しかし、韓国映画では今でもタンベ(煙草)は演技の中では重要な小道具として登場しているように見受けられます。しかし、そのせいという訳ではないでしょうが、男性の喫煙率はOECD諸国中ギリシャについで第二位と高く、今後は禁煙団体の声も大きくなってくることは予想されます。一方 韓国で女性の喫煙率は逆に二番目に低く、喫煙の男女差は断トツのトップです。

煙草は朝鮮時代、1618年に日本から入ってきたと記録にあります。最初の煙草は南方でとれた霊験あらたかな薬草と言う意味の「何霊草(ナムリョンチョ)」と名付けられました。痰の除去、消化不良、冷え性などに効能があるとされ、最初は老若男女、そして子供まで吸っていたと伝えられています。やがて両班(ヤンバン)など特権階級にのみ喫煙を制限し、一部の人々の嗜好品として浸透していきました。近代に入り、一部の限られた男性のものであったタバコが、韓国でも再び広く大衆の嗜好品として広がってきたわけですが、儒教思想からくる価値観のためか女性が嗜む事には抵抗から、男女の喫煙率の差に繋がっていると考えられます。しかし、実際の女性の喫煙率は統計の数字より2倍以上高いのではないかと言う報告もあります。つまり、喫煙をする女性もこのような社会的通年から人前では吸わず、また 吸っていたとしてもアンケート調査では否定する可能性があるためです。どちらにしても、やはり儒教の影響ではありますが・・・

韓国に限らず最初は薬として用いられたタバコですが、今では「健康の敵」として、年々喫煙者は肩身が狭くなっています。日本の‘どどいつ’にある「酒も飲まなきゃ、タバコもやらず、100まで生きた馬鹿がいた~」はまさにそんな愛煙家が悔し紛れに謡うにはぴったりですね。私はというと、このような現実を見通して?二十歳の記念に禁煙しました!

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化粧の目的

2012-07-04 11:10:23 | Weblog

現代女性にとって化粧は必須アイテムといっても過言ではないでしょう。デパートの1階の売り場に行くと、これでもかと言わんばかりに様々な化粧品で溢れ、男性陣にとっては、入ってはいけない迷路に紛れ込んでしまった気持ちになり、足早に通り過ぎたくなります。化粧品の世界でも、韓流は健在のようで、韓国人女性の肌のようになりたいと韓国製の化粧品をもとめる日本人女性も少なくありません。しかし実際に韓国に訪れてみると意外に一般の女性はむしろノーメイクに近い状態で歩いていると感じるのではないでしょうか。

韓国女性の場合、化粧行動ははっきりと他者を意識し、自分をより魅力的に見せるという目的を持って行うものという考えが強い為ようです。逆に言えば、目的を持って見せる相手がいなければ化粧の必要を感じないとも言えます。反面 日本の女性は、エチケットとして、或いは己の気分転換や満足感を求めて化粧行動を考える為、必ずしも他者を意識してなくても日常的に化粧をする習慣があるのかも知れません。また文化的な背景からも考えてみると、日本では江戸時代初期には庶民の為の化粧専門店まであったといいますから、むしろ限られた貴族や王族の貴婦人中心のヨーロッパ化粧文化より進んでいたとも考えられます。しかし、中世から続いた顔隠しの文化から、武家の妻はたとえ夫や義親の前でも白粉などで化粧をして素顔を見せないことが嗜みとされました。日本人の化粧には、自己アピールよりも素を見せない、隠す意識が内在しているとすると、韓国人女性より日本人女性がわかりにくいと言われるも一理ありますが。

化粧の歴史は、数十万年前の人類が狩猟や儀式の際に体にペインティングをしたことに始まりますが、現代的な化粧形態で言えば、紀元前3500年頃古代エジプト時代からと考えられます。壁画で見られるように眼の周りを今でいうアイライン・アイシャドーのように緑黒色で塗って強調しました。勿論、眼を大きく美しく魅せる目的でもありますが、もう一つの大きな理由はナイル川で発生するメマトイというハエを避けるためでした。子のハエは目から出る分泌物を求めて集まり、時には卵産み付け眼病が多く発生しました。目の周りに塗る顔料は孔雀石を砕いたもので、ハエを寄せ付けない効果があったのです。今の機能性化粧品に薬効が在るかどうかは別として、古来から化粧品には病気を予防する薬としての役割も兼ねていました。「魅せる、隠す、治す。」化粧に長けた女性たちが侮れないのは当然です。

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