美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

罪と罰

2010-04-26 12:55:12 | Weblog

 

罪と罰

 

日本でも韓国でも、凶悪で残忍な殺人事件が起きる度に、死刑制度に関する議論が活発になります。両国とも、世界的には今や少数派とも言える死刑制度存続国です。しかし、韓国の場合は、つい最近行われた死刑制度審査で合憲であるとの判断が下され、制度上は継続していますが、過去12年間以上執行されておらず、事実上の廃止国に分類されています。現在 先進国で死刑制度が存在し、執行されているのは日本とアメリカだけとも言えるでしょう。

現在112カ国が事実状死刑制度を停止していますし、これは世界の潮流となっています。国連の人権委員会でも、しばしば日本に対して、廃止に向けた要請を繰り返していますが、このような国際世論の中、制度を存続し続けている背景は、国内世論の強い支持があるためです。最近の世論調査でも、存続すべきという賛成派が85%にもあがり、アメリカ、韓国の6割程度という結果に比べても高い数字です。「悪を憎む。」といえば明快ですが、やや感情論的な意味合いが強く、冷静に制度全体を討議する必要もあるかもしれません。

被害者にとって加害者は「殺しても飽き足らない。」と感じてもやむを得ないですが、‘あだ討ち’では社会制度は成り立ちません。ハンムラビ法典の196197条の「目には目を歯には歯を・・・」の一文も、むしろ過剰な報復を諌めて、同等の報復に抑えることで文明秩序を維持しようとしたものです。死刑が犯罪の抑止力になるものか、国が人命を奪うことが許されるのか、免罪問題をどうするか、など やはり十分な議論は必要だと思います。

日本が特に死刑制度に対する指示高い背景には、宗教が発達しない文化での高い道徳観、独自の死生観、‘時代劇’などにも見られる‘お上’による裁きへの期待等があるような気がします。また 特に地下鉄サリン事件以降の社会全体に蔓延する不安感、無力感を表すものかもしれません。社会は誰が守らなくてはいけないのか、本当に護なければいけないのは何なのかを改めて考えることが、求められているのだと思います。 

 

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上海事情・・・美容外科医 上海訪問記 その2

2010-04-14 15:19:12 | Weblog

 

上海事情・・・美容外科医 上海訪問記 その2

 

訪れた上海の美容整形医院は、ビルの5階全部という規模にまず圧倒されますが、さらにその建物の外壁を飾った大きなスクリーンには、男女の韓流スターが大きく映し出されていて、一瞬 映画館と見間違うようでした。日本でもよく知られている韓国人スターと、病院のイメージキャラとして契約しているのでしょう。とはいえ日本や韓国でも、ここまで派手に使われることはないかと思います。院内の治療メニューのも韓式美容という項目が見受けられるように、それだけ 美容に関しての韓流に対する評価、関心は、かなり高いとも言えます。実際、現地の若い女性何人かに尋ねたところ、韓流ドラマは必ず見ているし、大好きとの答えが返ってきました。整形医院の代表ということでお会いした女性は、CEO肩書きで、医師ではなく、ビジネススクールを卒業したキャリアウーマンという感じでした。韓流美容の次は、日流美容整形?のキャンペーンを考えているとの事で、私に月一回ぐらい手術に来てもらえるかと聞かれました。時間的に今のところ難しいこと伝えると、少し残念そうな顔をしていました。とにかく上海という都市は、中国の莫大な消費人口を背景に、これからも世界中から、人、お金、また様々なものを呼び集める巨大な渦のような場所になっているのかも知れません。

上海の物価は、中国の他の都市に比べれば高いとはいえ、通常の生活費は、日本と比べればまだ安いでしょう。しかし、それが贅沢品や輸入品となると、かわらないか、むしろ高いと感じるものもあります。上海の富裕層が日本に観光に来ると、洋服や化粧品、電気製品を買い漁って行くのも、そういった事情でしょうか。美容整形の値段も様々で、私が訪れた富裕層をターゲットにする病院などでは日本ともそれ程大差がない反面、庶民的な施設では、二重や鼻の手術が数千円程度と聞きます。(勿論 10年程前までは多く不適切な施設で行われてきた美容治療も、今では政府の規制で、かなり影を潜めたようです。)

「今の上海では、収入も物の値段も平均ということが言えないのですよ。」との通訳をしてくれた金さん言葉が印象的でした。さらに「今上海で一番元気で強くなっているのは上海女性です。同時に離婚率も上がっています。」この点は、かの国の男も同様に感じているかも・・・

 

 

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上海事情・・・美容外科医 上海訪問記 その1

2010-04-05 20:03:14 | Weblog

 

上海事情・・・美容外科医 上海訪問記 その1

 

当院が関わる医療観光事業の視察の為、上海を初訪問して来ました。GDPで日本を抜き去ろうという中国の中、その経済的象徴でもある上海。中国人でも、上海はまた特別であると感じる人が多いと聞きます。上海の人口は約1900万人、そして出稼ぎ者の流動人口を合わせると2500万人と言われ、勿論中国最大の都市です。今年5月には上海万博を控え、建物や、駅、道路工事でこの大都市がさらに急ピッチに変貌しようと、粉塵を巻き上げています。その為か、上海環球金融中心(上海ヒルズ 492m)の展望階からの眺めは、晴れているのに、街全体が淀んで見えました。

現地でガイドをしてもらった金さんは、吉林省出身の朝鮮族で中国語、韓国語のほか、日本語も流暢に操り、日本の企業に勤めるエリートですが、本人によると 自分はブルーカラー(肉体労働者)で、上海では貧乏人だと冗談まじりに言っていました。聞くと、こちらに出て来て5年、マンションも買い、安定しているように思えるのですが、自分の友人は、同時に多額のローンを組んで、3つのマンションを購入して値上がりを見計らって、2つは高値で売却した上に、残りのマンションのローンも返済したとの事でした。彼にとっては、ホワイトカラー(頭脳労働者)とは、要領よく?財テクで、不労所得を手にする人々を指すのでしょうか。以前から噂される上海の不動産バブルも、この様子では、まだまだ熱覚めやらずと言う感じです。

上海の美容整形事情を知るというのが、今回の最大の目的でした。大学の知人に紹介された美容整形医院を訪れると、病院は地上5階建てのビルが全て美容外科という規模です。上海でも、10年ぐらい前から美容整形は広まり、2004年には「第一回人造美女(整形美人)選美大会」が開かれました。この年 韓国の有名美容外科病院が、上海の医院との合併病院を作るなど、美容医療界でも韓流進出が活発に行われたようです。しかし、そうした中では、技術だけ吸収され何も残らず、撤退を余儀なくされたところも少なくないと聞きます。大いなる機会とリスクが混在する都市が まさに上海なのです。

 

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教育格差社会

2010-04-05 19:59:24 | Weblog

 

教育格差社会

冬季オリンピックも終了し、連日、日韓対決と騒がれた二人の女子フィギュア選手フィーバーも、ようやく落ち着きを見せてきました。一方 一部のマスコミでは、彼女らを育てた母親の‘子育て’に注目した報道が見られます。若くして特別な才能を認められた‘天才’が現れる度に、その人の生い立ち、環境、親の教育に関心が集まるのは、世の常でしょう。「どうすれば我が子を、優秀に育てられるのか。」と参考にしたい親もいる反面、「あそこまでやらなければ無理だろうな。」と自分と子供の凡庸さに納得し、現状満足する人も多いと思います。勿論私も後者ですが、‘天才とは努力し続けられる才能である。’という誰かの言葉を目にしたとき、大いに肯けたのを覚えています。

結果的に二人の天才少女の競演は、金と銀という形で、決着がついたのですが、その差が、才能か努力か戦術か、或いは、一部取り上げられたように親の熱意の差かは微妙なところです。しかし、子供に対する教育熱という面では、今の韓国社会がトップクラスであることは、もはや世界的にも認められています。世界28カ国でのGDPに対する学校教育費率調査では、韓国はアイルランド、デンマークに次ぐ3位ですが、特にその内訳での私的負担率は、ダントツの一位です。これは、国の政策以上に、国民一人ひとりの子供に対する教育意識の高さを表すものです。しかし、世界的な不況が続く中、私的教育費負担が高い国ほど、貯蓄率は低くなるという現実があります。‘韓国人は子供に投資する。’とも言われますが、あるアンケートでは韓国の子供が最も生活の中でプレッシャーを感じている割合が高いと出たのも、このような理由かも知れません。

先日、日本で子供を餓死させる事件がありました。豊かで平和といわれる国での、死に至らせるほどの虐待と地域の無関心には、本当に悲しく、いたたまれない思いです。教育熱心な韓国でも虐待は年々 増加しているとの報告が聞かれます。教育熱心な人々が多い反面、育児放棄、虐待という‘教育格差’も同時に抱えている問題です。また、その教育費の負担からあえて子どもをつくらないという選択が少子化問題に繋がっているとも言えます。国の発展に高い能力の人材を育てる必要があったとしても、その狭間で犠牲になる子供がいてはならないでしょう。

 

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