美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

歴史の評価

2015-06-25 14:58:37 | Weblog

「百聞は一見に如かず」インターネットが発達して世界中の出来事がはるか離れた所にいながら動画や画像で見ることができる時代でも、否、そんな時代だからこそ、メディアを通して伝えられる情報への考察、自分の目で直接確認することはより必要だといえます。しかし、自分が目の前で見ている事象が、誰がみても同様に映っているでしょうか。職業柄、人の顔は目、鼻、アゴなど部分的なパーツとしてだけでなく、全体的なバランスとして捉える習慣があり、そこには統計的な数値を基準にした評価があります。女性の場合、毎日鏡の前で化粧をする為、誰よりも自分の顔は熟知しているはずですが、意外と左右差やバランスに関しては気づいていない、あるいは全く逆の認識をしていることも少なくありません。実は人間の視覚とは光の反射を捉えて脳の中で映像として構成しており、同じものを見ていても人によって見え方(認識され方)が異なっている可能性があるということです。

 その為、ある個人の評価には第三者の意見が必要であるように、国の評価も外国人の目を通してどのように映るかは耳を傾けるべきところです。しかし、日本と韓国は最も近い隣国ながら、過去の浅からぬ関係からお互いの評価には感情的な要素が加わり、むしろ第三者、特に欧米からの視線には敏感になるところです。長い鎖国時期から、諸外国の圧力を受けて漸く開国した李朝末期に英国の女性旅行作家として朝鮮に訪れたイザベラ・バード(Isabella Bird Bishop, 1831~ 1904)の紀行書は、当時の朝鮮を知る貴重な資料の一つとして韓国でも暫し引用されています。また同時期日本や清にも訪問しており、比較文化の面でも参考になります。「知能面では、朝鮮人はスコットランドで「呑みこみが早い」といわれる天分に文字どおり恵まれている。その理解の早さと明敏さは外国人教師の進んで認めるところで、外国語をたちまち習得してしまい、清国人や日本人より流暢に、またずっと優秀なアクセントで話す」「朝鮮人はわたしの目には新奇に映った。清国人にも日本人にも似てはおらず、そのどちらよりもずっとみばがよくて、体格は日本人よりはるかにりっぱである」朝鮮の人々に対するこのような評価の反面、彼女の目に映った当時の朝鮮という国の体制は否定的なものでした。無力で無責任な王族、腐敗した両班階級による搾取、そんな社会体制で意欲を失った庶民の生活、さらに儒教的道徳という名のもとで虐げられる女性たち。

 イザベラ・ハードは朝鮮の現状から、外部による改革の必要性に対しても言及しています。勿論それは侵略や植民地支配を肯定はできません。しかし、この本が韓国内で多く読まれ、一部の教科書にも掲載されているのは、例え誇るようなものでない、恥ずかしい過去であったとしても「歴史を記憶できない国民は、その過去を繰り返すほかはない(サンタヤーナ)」という言葉の重みを知っているからでしょう。

コメント

伝言ゲーム

2015-06-25 14:45:48 | Weblog

「伝言ゲーム」をご存じでしょうか?5~6人が一列に並び、ある程度の文章や情報を自分の隣の人にだけ口頭で伝える単純な遊びです。数組が伝達の正確性を競う場合もありますが、それより最初の内容が人づてに伝えられるうちに全く別ものになっていく様を楽しむ趣旨です。しかし、現実世界でも実際に伝言ゲームは起きています。そして時に面白いどころか、社会的混乱を招く危険性もあります。MERS(中東呼吸器症候群)感染者発症で対応に追われる韓国で、ソウルの高級住宅地として知られる江南区で自宅隔離中だった60代女性が前日に地方に行ってゴルフをしたことがニュースで伝えられると、様々な出処不明の情報がSNS(ソーシャルネットワークサービス)を通して拡散されました。根拠のない噂から保護者の不安が高まり、結果的に休校を決めた学校が現れ、それがまた不安を煽ることで休校の連鎖が起きたのです。

中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスは2012年9月英国でサウジアラビアへの渡航歴がある肺炎患者から初めて分離発見されました。その後WHOには1179人の検査確定した患者と442人の死亡報告があります。(2015年6月5日時点)確かにこの数字だけから判断すると、致死率は40%近くなりますが、発見されて3年未満のウイルスであり感染力や感染経緯に関してまだまだ不明な部分が多いのが実際です。アジアでの発症は過去にはマレーシア、フィリピンにおいて中東から帰国した患者が一人ずついましたが、いずれも帰国前から症状があらわれ、すぐに重症化したため早期から隔離され二次感染は起きていません。今回の韓国のケースは、中東といってもMERS報告がないバーレーンであったこと、帰国時は無発症で一週間後に症状があらわれ、当初は軽いインフルエンザ様で重症化するまで5日経過したことを考慮すると、診断の遅れは必ずしも韓国医療機関の責任だけではないかも知れません。勿論、まだワクチンや治療薬が確立してないため、妊婦や高齢者、糖尿や腎臓病などの基礎疾患を持った患者には重症化するリスクはありますが、通常の風邪程度の症状や、感染しても無症状で過ぎてしまう人も少なくないという専門家の話もあり、実際の致死率はそこまで高くない可能性もあります。また、感染経路も今のところ院内あるいは家族間に限定しており爆発的伝播は考えにくいところです。しかし、無症状のまま入国すれば、どんなに検疫体制が整った国であっても感染が広がる可能性はありえます。

人類の誕生より遥か以前から存在する微生物やウイルス。恐ろしい疫病を起こし、膨大な被害を及ぼしてきた反面、ある意味共存もしてきました。それだけに相手を正しく知り、正しく恐れるためには、つまらない情報のウイルスは伝染させないよう注意すべきです。

コメント

政治家の資質

2015-06-09 18:17:10 | Weblog

「大阪都構想」の賛否と問う住民投票は、僅かな差で否決されました。その結果を受けて直後の会見で橋下徹大阪市長は任期終了時点での政界引退を明言しました。テレビ出演をきっかけに知名度を上げた弁護士から政治家の世界に転身し、地方行政の矛盾や無駄を目のあたりにした橋本徹氏が政治目標として掲げ続けたのが「府と大阪市の二重行政による非効率を解消するため、大阪市を解体して府と特別区に仕事を分ける『大阪都構想』」でした。大阪維新の会を立ち上げ、大阪府知事と大阪市長のダブル選挙を仕掛けたのも最終的にはこの為であり、今回の投票で民意として否定されたことは橋本氏にとっては政治家としての存在意義を否定されるに等しかったのでしょうか。

本当の心情、真意は本人にしかわからないものですが、橋本市長の会見を見た多くの人は、彼のすっきりした表情と発言を聞いてどのように感じたでしょうか?敗北の責任をとり潔しとみるか、負けたとは言え、あれだけ多くの指示者を得、且つ彼を信じてきた多くの協力者に対して途中で投げ出してしまうことを無責任とみるか、様々です。ただ、この一連の出来事で思い出されたのが2011年当時の呉 世勲(オ・セフン)ソウル市長です。与野で争っていた給食無償化問題を住民投票に委ねた結果、投票率が投票成立要件の3分の1に届かず、その責任をとる形で市長職を辞任しました。小中学生に対する給食無償化は確かに論争の一つではありましたが、若手のホープ、将来の大統領候補とまで期待されていた呉 世勲氏には、韓国の中枢である首都ソウルの首長としてまだまだ多くの仕事がのこされていたのではないかと思っていた市民も少なくなかったでしょう。勿論、呉 世勲氏のばあいは政界引退ではなく、休養という形で暫く政界から距離を置いた後復帰、最近は、現在不在の首相候補にも挙げられています。しかしながら、呉 世勲、橋下徹氏ともに、裕福とは言えない家庭の出身で努力し弁護士となり知名度を利用して政界入りしました。比較的若くして自治体の長となった点、そしてカリスマ的な人気から一時は国政のトップにという期待をかけられた点、若干周囲が気抜けしてしまうほど地位、権力にはしがみつかず去ってしまう点等、似てると言えば似ているかも知れません。縁故や背景に頼らず、自分の人気と努力で政治の世界で奮闘した人間だけが成し遂げるものと、限界がそこにはあるようです。

橋下市長の会見で「みんなから好かれる、敵のいない政治家が本来、政治をやらなければいけない。」と話したことは、妥協を許さず、改革を目指した自分のやり方が最後に挫折した現実を論じたものでしょう。しかし、心の中では「みなに好かれること」が最も重要な政治家としての資質でないと考えているのは誰よりも橋本氏自身だと思います。

コメント