昨年たまたまレンタルショップでDVDを借りて観た映画がありました。タイトルは、「バトルオブ シリコンバレー」(原題は Pirates of Silicon Valley、シリコンバレーの海賊たち)、若き日のスティーブ・ジョブスとビル・ゲイツを主人公に、アメリカにおけるコンピューターの創世記における二人の葛藤と成功を描いた物語です。既にこの世界で巨人として地位を確立していたIBMに対して、己の頭脳と熱意のみで挑戦し、新しい時代を切り開こうとする二人の姿は、今のシリコンバレーを築いてきた多くの若者にとってまさに象徴的な存在です。一方二人の天才、性格等は対照的に描かれています。燃え盛る炎のように激しく、決して自分にも周囲にも妥協を許さない独裁者的なジョブスに対して、強い信念と頑固さは持ちながらも、時には柔軟な対応も計算の上に行うゲイツ。それはそのまま二人の人生、経営方針、そしてアップルとマイクロソフトという企業の特徴に表れていったようです。
映画の中で、ジョブスがマイクロソフトの新しいパソコンを前にマックの技術を盗んだ泥棒ということで、激怒しゲイツを罵倒します。最初は黙って聞いていたゲイツですが、堂々と反論します。「そのマックの技術も、ゼロックス研究所の技術を盗んだものだろう。」独創的な自分の技術やアイデアを武器に持ちながら、さらに相手の技術も時には盗み、利用し大海原を航海するというのが、まさに原題にある‘シリコンバレーの海賊たち’という所以でしょう。ここ数か月継続しているアップルとサムソン電子の訴訟合戦も、この業界で生きている限りは、当たり前の事に過ぎないかも知れません。徹底的に模倣し、研究することで誰にもまねができないものを生み出してきたのが、戦後の技術大国日本を作り上げたとも言えます
大学院生だった未婚の母のもとに生まれたジョブスは、すぐ養子にやられます。地元の州立大学に進学しますが、経済的問題もあり1学期で中退、一時ゲーム会社に就職した後、自宅ガレージでアップルコンピューター社を創設し、そこから彼の伝説が始まりました。「死は生が生んだ唯一無比の最良の発明と言える。古いものを一掃して、新しいものに道を譲る。」ステイ-ブ・ジョブスの死を惜しむ声は世界中から伝えられています。しかし、この言葉通り、最後まで時代の革新者として全うした人生であったと感じます。