居間から家人の叫び声!何かと思い駆けつけるとか鏡の前で白髪が増えたと嘆いている姿がありました。勿論、容姿に関しては女性ほどではないにせよ、男性も気力体力ともに年齢による衰えは年々感じざるを得ません。普段アンチエイジング治療にも関わっている私ですが、肌を含めて若さや健康を目指すのも、最終的には患者さんが自信を取り戻すことで前向きな生活をしてもらうのが目的です。ただ、医学の発展や様々な環境因子の向上によって、先進国を中心に国民の高齢化は今後も続き、それと供に安心できる老後を考えたとき、年金というシステムは一つの答えであると同時に、様々な課題も抱えています。
韓国の国民年金制度が始まったのは1988年です。しかし当初加入できたのは10人以上の事業所に勤務する雇用者に限定され、やがてより小規模の事業所、そして農漁村地域居住者へと広がり、ようやく国民皆保険となったのは1999年からとなります。つまり40年間加入で得られる満額受給者はまだ誰もいません。また日本のように自営業者や無職の人(第1号被保険者)、非雇用者(第2号被保険者)のようの分けられることなく全て一律ですが、公務員年金など他の職域年金加入者、(2)生活保護の給付金受給者、(3)学生など所得のない者、(4)専業主婦などは加入する必要がありません(但し任意で加入可)。年金保険料の支払いは、被雇用者の場合は基準所得月額に9%をかけた額を労使で折半、自営業者は基準所得月額の9%を全額自分で払います。このように自営業者でも一定額ではなく、所得額に比例した保険料を支払うところは日本とまた異なる点です。このほかにも細かい仕組みや支給比率など日本の制度との違いはありますが、何より根本的な差異は、年金に税金が投入されていないところでしょう。よって、最低保障年金はなく、保険料を支払わない期間の年金はもらえず、所得代替率も低く抑えられています。高齢者には厳しく、年金で安心の老後というわけにはいきませんが、税に頼らず国民負担を抑えた現実的な制度となっています。
国民と企業の「税負担と社会保険料負担」の、国民所得に対する割合を示す国民負担率を26.5%とOECD諸国の平均より10%近く抑え「低負担、低給付」を選択した韓国。一方、今後も増加する支給額に対して年金積立金切り崩し、毎年10兆円以上の国庫負担を強いられている日本。「歴史的な成功を収めた」と評価されるスウェーデンでさえ制度の見直しが議論されている現在、「誰のための未来なのか?」という視点が社会全体に必要なのかも知れません。