美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

新専門医制度

2013-05-21 16:27:38 | Weblog

 今年の4月に開催された日本形成外科学会総会は、私が週一回、美容外来と学生の講義でお手伝いしている大学の主催ということで、いくつかのセクションで企画や司会をつとめました。特に、若手や中堅の形成外科の先生たち向けに準備した美容外科診療、美容外科開業の現状を討論形式でおこなった発表は、会場に入りきれず立ち見が出るほどの盛況ぶりで、美容外科に対する関心の高さがうかがえました。これとまた別に形成外科医にたいする美容外科教育の在り方を考えるセクションでは、韓国から大学の先輩であり、韓国形成外科学会の理事長を務めた金容培先生、韓国形成外科医師会会長の趙先生を招待し、韓国の美容外科、美容研修制度の現状などを話してもらいました。実は厚生省の指針のもと、2017年度から新専門医制度が実地されることが決まり、形成外科医が美容外科をどのようにとらえるかは、形成外科学会の中でも大きな課題となっています。

 日本では医学部を卒業し、医師国家試験さえ合格すれば基本的には何科の診療でも可能です。しかし、実際は国家資格取りたてのペーパー医師では、手術は勿論、風邪の処方でさえ儘なりません。特に専門性が高い分野であればあるほど、長いトレーニングと経験が必要であることは当然です。現行の制度では、各分野の学会が独自に研修規定と筆記、面接試験などもうけて、専門医の資格を認定しています。これは学会内で自由な討論や意見が反映されやすいという長所がある反面、学会ごとに専門医認定の基準が異なり、質の面で評価や統一性があいまいになっているという批判もありました。実際の診療技術や知識が必ずしも持たない名ばかりの専門医が存在している可能性も指摘されていたわけです。海外のケースを見れば、韓国やフランスでは国による認定であり、アメリカやイギリスでは、第三者組織が認定に関与しています。今回、日本でも学会とは異なる第三者機関を新たに設置して、認定過程を患者さんにもよりわかりやすく、信頼できるものにしようというところにあります。

 日本では形成外科専門医の中で美容外科を診療、開業している私のような医者は少数派であると話すと、今回来日した韓国の先生は大変驚いていました。形成外科医の大部分が美容外科で開業をしている韓国では、美容外科専門医というものは存在しませんし、必要もありません。今日本が形成外科専門医の延長上にサブスペシャリティーとして美容外科専門医を新たに作るかどうか、その為の研修や教育はどうするか、日本の美容医療の発展を考えると大切に岐路に来ています。

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美のバランス

2013-05-16 12:59:38 | Weblog

 

 美しさにも法則があるのでしょうか?デザインを専門とする人は勿論、建築家から芸術家、そして美容外科医・・・少しでも普遍的なバランスや客観的な美の存在に関心のある人間なら追い求めているものです。そんな法則の一つとして黄金比、あるいは黄金分割という言葉は誰も一度は耳にしたことがあると思います。黄金比と言われるものの定義は、紀元前300年ごろに、幾何学の一体系を創始したユークリッドによって外中比という言葉で「線分を aとb の長さで 2つに分割するとき、a : b = b : (a + b) が成り立つように分割したときの比 a : b のこと」とされました。ちょっと文章ではわかりにくいかも知れませんが、a:b=1:1.618…となりますからおおよそ5:8くらいの比率となります。

 黄金比が用いられている例として、ピラミッド(底辺と高さ)、パルテノン神殿、凱旋門、ミロのビーナスなどの歴史的建造物や彫刻、そしてダビンチの絵をはじめとする数々の名画や芸術作品がよく紹介されます。しかし、これらが本当に黄金比を意識して創られたものかは明確な結論は出ていません。しかし、私たちの身近にあるものとして、名刺や様々なカード類、新書版、たばこのパッケージなどの長方形の縦横が5:8の黄金比であることは偶然ではありません。円を二つ縦につなげたとき、多くの人が最もバランスが良いと感じるのは直径が黄金比の雪だるま型です。黄金比にはヒトが感覚的に安心して入れやすい何かがあるようです。その理由を説明する一つに、自然界にみられる形や現象が関わっていると考えられています。ひまわりの種の配置やオーム貝のらせん模様、気が枝分かれす数やミツバチの雄雌の比率など様々なところに黄金比は現れます。つまり自然に慣れ親しんだ比率であるからこそ美しいと感じると解釈できます。また人間の視野の縦横比もほぼ黄金比に近く、それゆえテレビの画面比率が決められたていますから、これもこの比率が受け入れやすい理由かもしれません。

 顔の黄金比から理想的な美男美女のバランスを評価する論文も出てきました。確かに、その比率で写真を合成すると欠点のない美しい顔が出来上がります。しかし、韓国のことわざに「自分の目に眼鏡」というのがあります。日本流で言えば「アバタもえくぼ」、美の法則は一つの法則では解き明かせません。

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学ランとキョボク(校服)

2013-05-09 11:04:07 | Weblog

 一昔前の不良学生(通称‘ツッパリ’)のトレードマークといえば、リーゼントスタイルの髪型に、わざと上着丈を長くし、ズボンはダボダボと特別に誂えた詰襟制服、所謂「学ラン」です。学ランという言葉の由来は諸説がありますが、江戸幕府の鎖国政策の中で、唯一交易がわずかにあった阿蘭陀(オランダ)が西洋を意味したため、西洋の学問は蘭学、西洋人の着ているものは蘭服、それで学生用の蘭服ということで学蘭(学ラン)となったというのが有力です。詰襟式の学ランは。明治期に軍の士官服をモデルに学習院で導入されたのが最初とされます。その後帝大(東京大学)でも採用され、当時はエリートの象徴でもありました。

 韓国の中高でも80年代以前は、男子は詰襟の制服を使用しましたが、1984年全斗愌大統領の時、日本の植民地政策の名残として廃止され、今はブレザー型の制服に代わっています。詰襟制服の廃止後、一時制服自体なくした時期がありましたが、長く続きませんでした。制服の必要性に関しては、暫し学生のディベートの題材に取り上げられ、学生の自主性や自由を訴える反対派と規律や協調性、さらにあれこれ着る服に迷う必要がないという利便性を主張する賛成派の間で白熱した意見が行き交いますが、いまだ大多数の学校が採用しているには理由があるようです。ただ、中学から高校へと進むに従い、徐々に詰襟は減少しているのは、やはり軍服から生まれた学ランに対しては、成長と共に違和感を覚えてくるのではないでしょうか。

 日本では女子生徒が卒業式に、憧れた先輩から制服の第二ボタンを譲り受けるという、どこか甘酸っぱい習慣がありますが、その由来としてこんな話があります。太平洋戦争当時、兄は出征し、兄嫁と大学生の弟が残されました。弟は後ろめたくも密かに兄嫁に恋心を抱くようになりますが、当然そんなことは口にも出せません。やがて弟も出征となったとき、死を覚悟した彼は、自分の心つまり胸に近い第二ボタンを兄嫁に残していったという事です。軍服から学ランが生まれたとしてもその逆は悲劇でしかありません。

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