美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

「THE MOON」映画評

2024-07-09 13:21:25 | Weblog

 

 

‘’Space...the  final frontier‘’ (宇宙...それは最後のフロンティア)。 昔、テレビドラマ「スタートレック」冒頭の語りは今も耳に残っている。SFの世界は別として、誰しも一度は宇宙という存在に想いを馳せたことはあるだろう。私も小学校のころ、宇宙の果ては?果てがあるならその先は?と考えはじめて眠れなくなった夜を何度か経験した。古代の人々にとって、空、宇宙から得られるものは、星を眺め神話やおとぎ話を創造する以上に、月や星の位置、変化から、年月、季節や気候、現在位置を予想し知り、生きるために必要な情報をそこから得る事が出来た。韓国でも、慶尚北道慶州に新羅の善徳女王(632~647年)治世下に建造され、東洋最古の天文台と称される「瞻星台」を始め、天体への興味は、高麗時代の「書雲観」、朝鮮時代の「観象監」などの王立の天文、気象観測所に受け継がれていった。特に、訓民正音(ハングル)の創製で知られる朝鮮第四代王、世宗によりまとめられた『世宗実録地理誌』の記録にあった ‘さそり座で起きた新星現象’ は、最近米国の研究チームによって新星周期の新事実として英科学誌『ネイチャー』で発表され、再評価を受けるほど正確に記述されていたことが判明している。しかし、その後朝鮮は大国に翻弄され、独立後も六二五戦争(朝鮮戦争)を経て、天空に目を向ける余裕は全く無い空白期間を向かえる。それが1957年ソ連(ロシア)、続いて翌年アメリカが人工衛星を打ち上げた事で、世界中が再び宇宙への関心を強める事がきっかけとなり、韓国も宇宙先進国には遅れるも1989年韓国航空宇宙研究院(KARI)を発足、宇宙開発スタートに立った。1997、98年に観測型ロケットを打ち上げたのち、ロシアの技術協力を受けて衛星搭載型ロケット 羅老(ナロ)号を開発、2013年3度目にして衛星を軌道に乗せることに成功した。そして2022年6月、独自開発した後継機ヌリ号により、世界7番目に人口衛星の軌道投入に成功した国となる。今年5月、尹大統領は月、さらには火星に到達が可能な独自のロケットの開発、2032年に資源採掘を実施する計画などを盛り込んだ「宇宙経済ロードマップ」を発表し、韓国航空宇宙庁(Korea AeroSpace Administration、KASA)を発足させた。

今回の作品「THE MOON」は、このロードマップ実現を目指して、2029年 3人のクルーを乗せた有人宇宙船ウリ号が、月面有人探査を目指して挑む科学アドベンチャー大作である。背景では国家間の軋轢⁈で宇宙連合から除外された韓国が、単独で月の膨大な地下資源の獲得を目的に月面調査に挑む。しかし、月周回軌道への進入を目前にしながら太陽風の影響で通信トラブルが発生し、修理中の事故によりクルーの命が失われる。唯一残された新人宇宙飛行士ソヌ(ド・ギョンス)を生還させるため、5年前の有人ロケット爆発事故の責任を取り組織を去った当時の責任者ジェグク(ソル・ギョング)が宇宙センターへ呼び戻され指揮を執る。NASAの月周回有人拠点の統括ディレクターであり、ジェグクの元妻であるムニョン(キム・ヒエ)も協力する中、困難なミッションは果たして・・・ 特殊効果、VFX技術でいまやハリウッド映画の全く遜色ない映像に、韓国らしい人間、家族ドラマをしっかり加えた見ごたえある映画となった。

作品内で、月を目指す目的は「人類1万年分のエネルギー資源獲得」と説明している。確かに、それが可能になれば莫大な費用と様々なリスクを賭ける価値があるかも知れない。アポロ計画による有人月面着陸の目的は、米ソ連戦時代に有人宇宙飛行で明らかに後れを取っていたアメリカの起死回生の目標であった。国家予算の4%(今の価値なら約38兆円?)を投入した国を挙げたプロジェクトは、その後55年間どの国も目指すことはなかった。しかし今再び、各国が月への有人飛行を計画している。世界中で起きている様々な紛争、貧困、気候変動によるが自然災害が日々報道されるなか、子供時代からのの夢や好奇心だけでなく、その技術が地球上の問題解決にどう活かされるかも気になるところだ。

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