美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

乳房

2013-07-04 10:40:24 | Weblog

 

 ‘ママ、マミー、マンマ、’多くの国や地域で母親を呼ぶ言葉には何故かmaという発音が含まれることが多いようです。これはラテン語のmammaが乳房を意味することから、お母さん=乳房(おっぱい)から母親を指すことになったと考えれば同一語源と言えます。しかし中国語でもお母さんは媽媽(まーま)、韓国語でもオモニ=オンマですから語源だけでは説明が難しいかも知れません。日本でも赤ん坊の食べ物を‘マンマ’というところから、乳児が一番発音しやすい言葉でもあり、最初の食べ物が母乳であることをおもえば、やはり乳房と関係しているのではと想像してしまいます。何にせよ、古今東西、老若男女、乳房は母性、女性の象徴であることは異論がありません。

 米国の人気女優アンジェリーナ・ジョリーさん(37)が、乳がんのリスクを高める遺伝子変異が見つかったとして、がんを予防するために両乳房の切除・再建手術を受けたことを公表し多くの女性たちに衝撃を与えました。この検査は乳がんと卵巣がんの発生の抑制に関連している遺伝子BRCA1とBRCA2の異常の有無を調べるもので、どちらかが陽性となれば70歳までに乳がん、卵巣がんになる確率は56~87%になるとされます。生涯に8人に1人が乳がんになる米国では、年間10万人がこの検査を受け、陽性と判断された女性の3分の1が予防的に健康な両乳房の切除をおこなっています。一方、日本や韓国でもこの検査は行われていますが、検査結果に基づいた実際の手術や治療のガイドラインはまだ準備段階であり、当然保険も適用されません。日本人や韓国人にもこの遺伝子異常が存在することは確認されていますが、実際のがん発症確率は欧米に比べると低く、遺伝的な要因以外の要素も含めた疫学的調査が必要とされます。形成外科的技術の発達もあり、予防的乳房切除という選択が治療の一つとして注目されてきたのは事実ですが、アンジェリーナ・ジョリーさんのコメントにもあるように予防薬の服用や、頻繁の検査など手術以外選択肢の中の一つであると認識すべきだと考えます。

 乳がんや卵巣がんに限らず、事前に病気の発症確率を知るという技術が今後も開発されていくでしょう。女性にとって乳房を失う辛さは言うまでもありませんが、その対象が‘眼球’であったら、さらに脳であったらと考えると、未来を知ること知らせることの意味を考えざるを得ません。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする