美容外科医の眼 《世相にメス》 日本と韓国、中国などの美容整形について

東洋経済日報に掲載されている 『 アジアン美容クリニック 院長 鄭憲 』 のコラムです。

ロンドン見聞録②

2013-07-16 15:08:19 | Weblog

 

 今回のロンドン訪問には、イギリスの医療事情を肌で感じるという目的が第一でしたが、やはりロンドンと言えば大英博物館。一度ゆっくり見学したいという思いから、歩いて数分の場所にホテルをとりました。開館は午前十時ですから、軽く朝食をとって公園を横切り、ゆっくり散歩しながら向かうとイオニア式円柱が並ぶギリシア様式のファサード(正面玄関)が目に入ります。かつて写真では見た、実に壮観で圧倒される迫力ですが、一日の中四季がある」イギリス特有の天気で、地中海の青い空と違いその日も途中から小雨模様とあって、何故ゆえロンドンでギリシア・ローマ様式の建物なのかという捻くれた感想も一瞬浮かびました。(失礼!)とにかく古今東西800万点以上の様々な収蔵品を保有し、年間500万人以上が訪れる言うまでもなく世界屈指の博物館であり、それがナショナルギャラリーや自然史博物館など他のイギリスの美術館、博物館と同様入館料は無料であるのはある意味驚きです。

 大博物館は英王室付き侍医や英国学術教会の会長を務めた医師ハンス スローンの遺言により、英 国政府に寄贈された彼のコレクションをもとに1759年に開館しました。個人としては突出した博物収集家であったハンス スローンですが、それを可能にしたのはやはりイギリスによる当時の植民地支配であり、現在 インド、エジプト、メソポタミア(イラク)に関する代表的なコレクションの多くは植民地であったそれらの国からの略奪品であることは周知の事実であり、大英博物館が世界最大の強奪博物館と揶揄されるのも一理あります。その後当然の如く、古代ギリシアのパルテノン宮殿を飾った「エルギン・マーブル」、エジプトの「ロゼッタ・ストーン」、ナイジェリアの「ベニンのフラーク」をはじめ歴史的に重要な文化財の数々に対し各国からの返還請求が度々されてきてはいますが、英国政府は首を振り続けています。実際返還となると、現在の所有権の問題だけではなく過去の植民地支配、戦争の責任問題なども絡み、おいそれとはいかないのはイギリスに限ったことではないでしょう。

 他国同様、深刻な財政問題を抱えるイギリスが、美術館、博物館などの文化施設を無料で開放する政策を維持しているのは、世界に先駆け市民革命、産業革命を成し遂げ近代社会をけん引してきた誇りと伝統だけではなく、各国の返還請求に対して人類を代表して万人に展示している姿勢を見せる意味もあるように感じます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする