朝日カルチャーセンター☆ブログ

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●「ブログde秀歌鑑賞」 №8  2012年2月【芦屋】

2012年02月10日 10時00分00秒 | 芦屋教室
芦屋教室 「ブログde秀歌鑑賞」 №  2012年2月 (松村正直選)

★歌人の松村正直先生にご協力いただき、
万葉集や和歌の時代から~平成の短歌までありとあらゆる歌の中から、
毎月3首、ご紹介する月イチの企画です。

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灯の暗き昼のホテルに憩ひゐる一時あづけの荷物のごとく
          佐藤佐太郎(さとう・さたろう) 『天眼』


何かの用事があって遠くへ出かけたのでしょう。
昼のホテルにチェックインして、移動の疲れを癒しています。
夕方からの用事に備えて一休みという感じかもしれません。
「一時あづけの荷物のごとく」という比喩が面白いですね。
自分のことを荷物に喩えているのです。
旅先の落ち着かない感じや、侘しい思いがよく出ていると思います。
各句の最初の音が「ひ」「ひ」「い」「い」「に」と全部イ音になっている点も、リズムの上で見逃せません。
佐藤佐太郎(1909~1987)は的確な描写と巧みな言葉の扱いで知られる歌人です。

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雪虫のとぶころとなりかんばんの赤一文字(ひともんじ)「灸」ぞ目に沁む
          小池 光(こいけ・ひかる) 『草の庭』


「雪虫」は別名綿虫やしろばんばとも言って、綿をかぶったような姿で飛ぶ虫のこと。
そんな雪虫の飛ぶ寒い日に、作者は歩いていてお灸の看板を見かけたのです。
それも今どきの「○○鍼灸院」といった立派なものではなく、
民家の軒にぶら下がっているような一文字だけの看板。
どこか懐かしさを感じる光景ですね。
寒い冬景色の中にあることで、赤い「灸」という文字の持つ暖かさが、一層強く感じられたのでしょう。
日常の場面からハッとするような作品を生み出すことの得意な小池光(1947~)の一首です。

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お手紙ごつこ流行(はや)りて毎日お手紙を持ち帰りくる おまへが手紙なのに
          米川千嘉子(よねかわ・ちかこ) 『たましひに着る服なくて』


幼稚園くらいのお子さんでしょうか。
幼い子たちの間で手紙を書く遊びが流行って、毎日お母さんにも手紙を持ち帰ってくるのでしょう。
何とも可愛らしい光景ですね。
でも、作者はそれを単に可愛らしいと見るだけではありません。
結句の「おまへが手紙なのに」に注目して下さい。
毎日、真っ白な紙に字を書き込むように、新しい経験をして成長していく子。
そんな子に対して「お前こそが私の大事な手紙なんだよ」と母親は思っているのです。
『親子で楽しむこども短歌教室』など子供向けの著書もある米川千嘉子(1959~)の一首です。


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