アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

月曜美術館

2011-11-27 | 美術館
前回ご紹介した「対話型鑑賞」。その可能性に挑んでいるこんな美術館もありました。

「月曜美術館 休館日に、そこで何が起こっているのか」(小口弘史著・2011年)

新宿にある損保ジャパン東郷青児美術館、親会社からやって来た小口氏が館長となり、取り組んだのが「対話型鑑賞」による子どもたちへの美術鑑賞教育でした。
小口館長は、全然美術の専門家ではなかったのですが、ご自身で社会における美術館の位置づけや日本における文化振興といった広い視野で現状を分析し、そしてまた、一企業が運営している美術館の存在意義のために、子どもたちに対して美術鑑賞教育を推進していく方針を打ち出します。

この方のアプローチのうまいところは、対象の子どもたちへダイレクトに接触するのではなく、まず、いま教育現場で「創る」だけではなく「鑑賞する」ことによる美術の力が見直され、作品を見て語り合うことで、感じる力・考える力を養おうとしているという方向性を把握し、新宿区に公立の美術館がひとつもないこともあって、区との連携を持ちかけ、学校自体を動員していったということ、次に、その方針に合致した「対話型鑑賞」を取り入れ、運営に地域ボランティアを起用し巻きこんでいったことです。

実施方法は、けっこう手間のかかるもののようです。
単にその鑑賞で対話を促すというものではなく、ボランティアの皆さんがまず鑑賞に先立ち学校を訪ね、作品をカードにしたもので「かるた」のようなゲームを取り入れ、作品に対してどんな印象を持つか?といったことを事前にシートに書くなど、実際の鑑賞への期待を膨らませます。そしていよいよ鑑賞日、他のお客様の反応を気にすることないように、実施は休館日の月曜日に行われます。少人数グループにボランティアのガイドがつき、子どもたちは作品の前に座り込んでじっくりと作品を見つめ、対話するというものです。ガイドはあくまで解説せずに、質問をして答えを引き出す…。難しそうでもあるけれど、ガイドさんの感想は印象的です。「子どもたちの豊かな感受性は予想を超えていて、発せられる言葉一つ一つが宝物のように思える。」

本の中では、子どもに続いて大人向けの対話型鑑賞の試みも行っているとのこと、通常の開館時間に行うことは、やはり一部のお客様には不評のようで、かなり気を使われていることが窺えます。美術館でじっと黙って見なければならない、ってのはナンセンスだと思うのだけどね!
この対話型鑑賞へ参加することが、プラチナ・チケットになることを目指している、とのことでした。

決して高価な作品(「ひまわり」とか)だけに集客を頼らず、社会的意義も見据えた小口館長の取り組みは素晴らしいと思いました。HPを拝見していたら今はもう別の方が館長になられていました。「対話型鑑賞」、今でも積極的に行われているのかしら?

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