アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

オルセーのナビ派展@三菱一号館美術館

2017-03-14 | 展覧会

あれは確か、何かの海外大型美術館展(記憶をたどると、神戸で見たオルセー展だったか?)で、初めて「ナビ派」なる画家たちの作品を見て、その壁紙のような、タペストリーのような画風に魅せられたのでした。中でも、ヴュイヤールという画家の名前が心に残りました。

以来、ナビ派の作品は、そのようないろいろな作品を集めた美術館展の中に、2~3点お目にかかることはあったのですが、まとまって見る機会はありませんでした。なので、今回の展覧会は、非常に楽しみにしていました。ヴュイヤールの作品もいっぱい見れるなんて!

19世紀から20世紀にかけて、ヨーロッパ、特にフランスの絵画には新しい潮流が次々と訪れました。伝統的な絵画のルールに従わない「印象派」、点描の「新印象派」、それに続くゴッホやゴーギャンなどの「後期印象派」、それに並走する「象徴主義」、そして「キュビスム」「抽象絵画」へと怒涛ののように表現の変革があらわれたのです。

「ナビ派」は、1888年にゴーギャンの美学から影響を受けて結成された芸術家集団で、「ナビ」とはヘブライ語で預言者を指し、彼らは自らを「新しい美の預言者」を称しました。彼らの新しさとは何か?ナビ派の一人であるモーリス・ドニの次の言葉は印象的です。

『絵画作品とは、裸婦とか、戦場の馬とか、その他何らかの逸話的なものである前に、本質的に、ある一定の秩序のもとに集められた色彩によって覆われた平坦な表面である。』

展覧会の冒頭では、ゴーギャンの超有名な「黄色いキリストのある自画像」を見ることができて、ちょっとコーフン!ここからナビ派が始まることが納得できます。会場の前半は、ナビ派の代表的な画家であるピエール・ボナールとモーリス・ドニの作品が多く展示されていました。日本美術の影響を色濃く受けていたことも窺えます。浮世絵のような構図もそうだし、何といっても絵画の形態に「屏風」を取り入れていることがおもしろい。掛け軸ではないのね…、屏風の方がインテリアに使い易いのかな~などと思ったりしました。モーリス・ドニの「鳩のいる屏風」は白を基調にした、本当に夢の中にいるような幸福感に満ちた作品。作家が私的に大切にしていたのもうなずけます。

お目当てのヴュイヤールの作品の中で、やはり一番迫力があったのが「公園」の5枚のパネル。この作品は、依頼者の自宅の食堂の壁の装飾として、あと4枚を加えた9枚の連作として描かれました。大画面のこの作品の中に、私がヴュイヤールに惹かれたすべてが含まれているように思いました。平面的で装飾的な画面、色彩がけぶっているような滋味のある色合いながら、すごく暖かみにあふれている。描かれている人物は、本当に絵具を置いた固まりのようで、それなのに存在感にリアリティがあるんですよね。植物の描き方、地面の描き方、空の色合い、もう何から何まで「好き!」って感じなのです。あー、見れて良かった!

ところで、ナビ派の一人とされているヴァロットンは、実に不思議な絵を描く画家だと感じました。他の画家のような装飾性は全く感じられず、画力も高く、むしろすごくニュアンスを含んだ空気感を充満させているのが際立っていました。3年前に同じ三菱一号館美術館で展覧会が開催され、話題になっていた「ボール」という作品が再来日。これは、本当に不思議な作品です。一般的には微笑ましい風景のようで、あまりに謎めいてます。並んで展示されていた2枚の肖像画も、本当にそこに人が埋め込まれているように本物ぽくて、一瞬ギョッとしました。

私自身が、こんなにも装飾的な絵画に魅了されるのはなぜか?と改めて考えてしまいましたが、大変目に美味しい展覧会でございました。

展覧会は5月21日(日)まで。貴重な展覧会に、ぜひ! 

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