アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

ポップの目@滋賀県立近代美術館

2013-09-22 | 展覧会

あらっ、この展覧会、会期短かったんだ~。この前始まったとこなのに、あと2週間ですわ。

ただいま、滋賀県立近代美術館では、『ポップの目 The Eyes Of Pop Art』と題し、館の所蔵品の柱であるアメリカ20世紀美術、わけてもポップアートの作品を一堂に見ることのできる展覧会を開催しています。

先般の記事でも取り上げましたが、やっぱポップアートといえば、まずはアンディ・ウォーホル。おなじみのマリリン・モンロー、フラワー、キャンベルスープも展示されています。当館は、けっこうジム・ダイン持ってるんだ~というのが今回の驚き。他にも、トム・ウェッセルマン、クレス・オルデンバーグ、ジェームズ・ローゼンクイストなど、たくさんではありませんが、ポップアートを代表する作家の作品たちを見ることができます。

ポップアートは、やはりそれ以前の抽象表現主義の作品と実際に見比べると、その反骨精神がいっそう際立ちます。「な~にが、色と形が崇高なんだよ!」と画面が言っているかのように、これでもかと日常アイテムが作品の主役です。とは言っても、大量生産・大量消費、豊かなアメリカの市民生活の象徴…というのも、もはや古典な気もします。

チラシにもなっているロイ・リキテンスタインの「泣く女」は、そんなに大きい作品ではないのですが、漫画のひとコマを切り取って絵にするという秀逸なアイデア(前掲の宮下先生の本では、ウォーホルが同じアイデアを先を越されてあきらめたとありました)、印刷のドットまで細かく絵として描き込む手技の感覚が、他の作家と比べても、大変良い作品であるという印象を受けました。同じく出品されている「積みわら」の連作もおもしろいです。そう、あのモネの「積みわら」を下敷きに大きなドットで描かれた作品です。

そして、今回の展覧会のひとつの目玉は、展示会場の中央あたりに設けられた「ネオ・ダダ」のコーナー。ここでは、ジャスパー・ジョーンズとロバート・ラウシェンバーグの作品が展示されています。特にラウシェンバーグは、立体作品やでっかい陶製の作品(1982年に来日したラウシェンバーグが、滋賀県信楽で制作。当館では20年ぶりの展示)などがあり、興味深かったです。

抽象表現主義に反旗を翻し、ポップアートの先駆けとなった「ネオ・ダダ」ですが、ラウシェンバーグの作品たちを見てると、案外、自分の思うがままに自由奔放の作品を作っている気もするなあ(晩年だから?)。きょう買った美術手帖10月号では、ラウシェンバーグと大竹伸朗の衝動的に作品を作る、という共通点が論じらていたが、さて。

ポップアートが隆盛した60年代の空気ってどんなだったんだろう?今でもそうであるように、美術は映像や舞台や音楽や、その他時代のカルチャーと無縁なはずはないから、その関係性の中で、もっと作品や作家をとらえてみたいなあと思います。今、けっこうポップアートの展覧会が多いのも、何か時代が呼応しているのかしら?

思いの外いろいろな作品が楽しめる本展は、10月6日(日)まで。同時に「カオスとコスモス」というテーマの常設展では、抽象表現主義の代表ともいえるマーク・ロスコの作品が拝めます。この崇高性とポップアートの対比をぜひ楽しんでみてください!

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ふたつの「大竹伸朗展」を巡る一日

2013-09-03 | 展覧会

この夏の、私のアート・イベントはこれだ!香川日帰り「大竹伸朗まつり」。現在、高松と丸亀で開催されている大竹伸朗のふたつの展覧会を巡るのダ。あいにくの雨でしたが、ほとんど美術館の中で時間を過ごしましたので、関係なかったです。(てか、美術館しか行ってない!うどんさえ食べてない!)

まず訪ねたのは、高松市美術館「大竹伸朗展 憶速」。「記憶」の「速度」と創作の関係性を探ることをテーマに、大竹ワールドの魅力を伝える回顧展。私にとって大竹さんの魅力は、さまざまな雑多な断片が貼り込まれるコラージュ、スクラップのかたち。きっとそこには、大竹さんが拾い集めた記憶の断片が留まっていると思うのだ。記憶はいつしかおぼろげとなり、それが本当なのかさえ曖昧になっていく。その時、手に残るのは形ある「モノ」だけだ。記憶を映した「モノ」。今回、それに加えて写真や映像作品がたくさん見れたのも印象深い。そこにはまさに瞬間の記憶が焼きつけられている。

この展覧会は、本当に行って良かった。大竹さんの90年前後の作品である「網膜シリーズ」。セルロイドみたいにツルッとした表面に色彩が塗り込められて、端の方に止められているテープを見た時、大竹さんというアーティストに惹かれた20年以上前の記憶がまざまざとよみがえった。そうだ、そうだ、これだった!

今回、ものすごく良かったのは、80年代前半に制作されたアフリカをテーマにした作品たち。絵画とコラージュの間に立つような、大竹さんの描く骨太のアフリカ人と、まわりに貼り込まれる記憶の断片。なんか、そのどっしり感がすごく良かった。また、そのような大竹さんの作品を初めて見たので、嬉しくて感激した。はるばる見に来たかいがあった!と本当に思った。

期待していたぶ厚いスクラップブックの展示はなかったのだけど、手作りコラージュ本は見ることがでたし、初公開となるスケッチブックの数々には、大竹さんは絵描きだな~と改めて認識させられた。奥さまとかお子さんを描いたスケッチもあって、ほのぼの、大竹さんもパパだね~っと微笑ましかった。

さて、次に向かったのは丸亀市猪熊弦一郎美術館。こちらでは「大竹伸朗展 ニューニュー」と題し、現在に焦点を絞った大規模な新作展が開催されている。

目玉は、何といっても昨年開催された「ドクメンタ〈13〉」で発表された「モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋」だ。この作品、映像で見ただけではイマイチよくわからなかったんですよね~。ドイツ、カッセルの森の中、大きな木のそばに立てられた一軒の小屋。中を覗くと、まさに雑多な記憶の断片が散りばめられており、そこには巨大なスクラップ本が!また反対方向には、「ニューシャネル」でもおなじみの自動で奏でられるギターがギュイーンと音をたてている。現地では、屋根からスモークも出てたようで、めっちゃ怪しかったと思う!美術館では、「モンシェリー」の横の壁に、大竹さんが描いたカッセルの森の絵画が30枚ほど展示され、現地のイメージを彷彿とさせた。

他にもグワッシュを用いた新たなシリーズなどを展示、今もライブに進化しつづける大竹さんの「現在」を見ることができた。これも、高松の「憶速」で見た作品たちがベースにあったからこそ、この作家の豊かな発展性を深く感じることができたんだと思う。

2006年、東京で開催された大回顧展「全景」を見逃してしまったけど、新しい切り口で、大竹さんの作品を追っていくことができて、今回の旅は大変幸せでした。ただいま、著書を読んでいるところ。う~ん、次はやっぱり直島の銭湯「I  湯」に行きたいな!

高松市美術館「憶速」は、残念ながら9月1日で終了、猪熊弦一郎美術館の「ニューニュー」は11月4日まで開催。

猪熊弦一郎美術館は、全館写真撮影可!でした。写真は「モンシェリー」と、エントランスに飾られた巨大な「時憶/美唄」。2度目の訪問でしたが、相変わらず素敵な美術館で、猪熊さんの作品たちを見てると思わず笑顔になりました!

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