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アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

矢野顕子さんと、ベヒシュタイン

2018-02-04 | その他

ちょっと時間がたってしまった話題ですが、昨年11月に私が敬愛するミュージシャン、矢野顕子さんの新しいCD「Soft Landing」が発売されました。以前の記事にも書いたように、私が最初に矢野さんの音楽にしびれたのが「SUPER FOLK SONG」というピアノと歌だけの弾き語りアルバム。それ以来、いくつもの名作が生まれ、今作が7年ぶり5作目の弾き語りアルバムとなります。 

 Soft Landing (通常盤)

この作品には、SUPER FOLK SONG」という名曲に歌われている恋愛ストーリーの後日談となる「SUPER FOLK SONG RETURNED」が収録されているのも注目だったんですが、私がすごく気になったのが、矢野さんがこのアルバムを「ベヒシュタイン」というピアノで録音したということ。これまで矢野さんが愛用してきたのはスタインウェイ、そのブリリアントな音が矢野さんの声や演奏にピッタリだったのですが、それを変えたんですと?!

ベヒシュタインと聞いて思い出したのが、この本。なんと15年以上も前に購入したので、久し振りに手に取ってみるとページが茶色くなってました。(まだ売られているようでよかった!)

パリ左岸の裏通りにあるピアノ工房を舞台に、ピアノの魅惑的で深遠な世界にはまったアメリカ人の著者慈愛に満ちた眼差しで、ピアノという楽器とそれを巡るパリの人々について描いており、読んでいてとても幸せな気持ちになれる一冊です。 

  パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)

そこには、いろいろなピアノが登場するのですが、有名なスタインウェイやベーゼンドルファーの他、エラール、プレイエル、ガヴォー、シュティングル、ファツィオーリ、そしてベヒシュタイン!複雑かつ精巧な音の出る仕組みは同じでも、それぞれメーカーごとに独自の工夫が施され、実に個性的な音色が生み出されるというのです。

ドイツのベヒシュタインはピアノの世界三大メーカーのひとつで、伝統の技術に支えられた透明感のある音が特徴です。今回このピアノを使うことを勧めたのが、矢野さんの長年の盟友であるエンジニアの吉野金次さん。矢野さんが奏でるベヒシュタインの音は、私には少し湿り気を帯びたような、愁いと優しさと暖かさが交じり合った味わい深い響きに聞こえる。この新しいパートナーと対話を深めながら、ベヒシュタインならではのアレンジになっだんだなあと感じます。

12月のコンサートでも、このベヒシュタインを携えて演奏してくださいました。取り上げる曲も多彩なら、アレンジも自由自在、そして新しい楽器に出会うことで、演奏にも新しい可能性が広がった、ホントに素晴らしいミュージシャンの演奏を堪能できて幸せでした。

ますます新境地を開く矢野顕子さんに、今後もワクワク、期待が高まります!

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≪ST/LL≫高谷史郎 @ びわ湖ホール

2016-01-27 | その他

地元のびわ湖ホールで、貴重なステージが見られるチャンス!と思い、当日券を買い求めて見に行くことにしました。

高谷史郎さんは、アーティスト・グループである"ダムタイプ"の創設メンバーの一人。今回の公演のディレクションをされています。ダムタイプについては、アートへの興味が芽生えた頃から聞き及んでいて、一度は見てみたいな…と思いながら、今回までご縁がありませんでした。調べてみると、昨年の堂島リバービエンナーレで、最も印象的だったアーティスト池田亮司さんもメンバーであったとか…。ホホ~。

実のところ、いったい何が見られるのかもわからなかったのですが、舞台上には、実に幻想的で不思議な空間が出現しておりました。登場するパフォーマーは、女優の鶴田真由さん含め4名。舞台装置は極めてシンプル。正面にはスクリーン。目を惹くのは、舞台上に薄く張られた水、これがさまざまな効果をもたらし、視覚的にも聴覚的にも空間に豊かな表情を生み出していました。

パフォーマーたちの身体の動きは、実にしなやか。ちょっと他に目を奪われているうちにするすると現れたり、いなくなったり。ダンスというわけではなく、演じているのだと思うのですが、とても抽象的です。ステージからかなり遠い席だったので、顔の表情までわからなかったのは残念…。

今回の作品は、『わたしたちの認識を超えた「時間」と「空間」についての考察』がテーマということで、昨年の2月にびわ湖ホールのリハーサル室で制作が開始されました。ステージでも、途中、スクリーンにびわ湖の湖面らしきものが映っていたように思うのですが、舞台上に湛えられた水面の揺らぎといい、このびわ湖畔の地に触発されて創られているところもあるのかな、と想像しました。

途中、アイヌの子守唄らしきものの朗読などもあり、この作品に込められているストーリーやメッセージを、もっと深く読み解きたいところです。

映像や音楽は最先端であり、でもステージ上には肉体性と実体があり、クールで透徹した世界観が繰り広げられる…。いや~、一度見るとはまってしまいそう…。またチャンスがあれば、ぜひ見に行きたいです。

びわ湖ホールは、ホント、素敵なところなんですよ~。ホールの中の芸術を盛り上げるかのような、美しいびわ湖の風景。めちゃめちゃ寒かったけど、行って良かったです!

 

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SANAA×歴まち大津の未来@三井寺

2015-07-19 | その他

たまたまTwitterで見つけた情報だったのですが、SANAAの妹島和世さんのお話が聞けるってことでこのフォーラムに申し込んでみました。主催された「歴まち大津の未来を考える会」というのは、大津のまちが有する豊かな自然と伝統に育まれた歴史的文化的資産を、斬新なアプローチで保存・活用していこうと活動している会で、今回会場となった三井寺の執事長さんもメンバーです。

なぜ、妹島さんが招かれたかというと、このたび、マイ・ホームミュージアムである滋賀県立近代美術館が既存館の改修および新館の増築を含む大規模な整備を行うことになったのですが、その全体プランの設計者としてSANAAが選ばれたからなのです!

新生・滋賀県立近代美術館についての詳細はこちら

妹島和世さんと西沢立衛さんによるSANAAは、言わずと知れた金沢21世紀美術館やルーブル・ランスの設計者であり、彼らの案が選ばれたと聞いて、私は大変うれしく思いましたし、どんな美術館が出来るのだろう!と、とってもワクワクしています。

さて、このフォーラムの参加者には、大変すばらしい特典がありました!歴史ある三井寺(園城寺)は、国宝の金堂をはじめ、「三井の晩鐘」で知られる鐘楼や弁慶の引摺り鐘、左甚五郎の龍の彫刻など見どころ満載のお寺なのですが、実は普段は非公開の国宝の建造物があるのです。今回、その「勧学院客殿」「光浄院客殿」を特別に見せていただけたのですが、これは値打ちありました!

勧学院は1600年、光浄院は1601年に建てられており、桃山時代を代表する初期書院造りで寝殿造りの要素も残しているという貴重な遺構。古には政治的な位置づけでもあった寺院で、要人の客室として使われたとのこと、寺院の中にあったため、このように保存され現在まで残っているのだと、僧侶の方が名調子で解説してくださいました。

どちらの建物も狩野派の手による迫力の襖絵、床貼付が残されており、特に光浄院は狩野山楽によるもので、庭とつながるように描かれた床貼付から襖絵は、スケール感がありました。庭園は珍しいことに、客殿の縁側のすぐ下まで食い込むように池が広がっていて、涼やかにたゆたう水の風景に心癒されます。ところで床貼付のことを障壁画って言うんだ…。知りませんでした~。(障壁画ってもっと大きいイメージないですか?私だけ?)

こういう客殿の見学って、廊下から部屋を眺めることが多いと思うのですが、思い切り中に入れて、間近で襖絵や床貼付を鑑賞でき、しかも縁側に座ってお庭に癒されたりして、ホント素晴らしい体験ができてよかったです。楽しかったワ~。

フォーラムでは、妹島さんがSANAAがつくって来た建造物の経緯やコンセプトを、特に美術館を中心に紹介され、その後、「歴まち大津」のメンバーを交え座談会が行われました。

お話の中で、妹島さんたちが滋賀県立近代美術館の素晴らしい環境を評価し、それを生かせるデザインを考えてくださったのがうれしかったし、金沢で実現したような、単に建物だけではなく、「ここは私たちの場所だ」と思えるような仕掛けも試みてくださっているのに、とっても期待!

また、今回新しい美術館には、今、閉館してしまっている琵琶湖文化館の価値ある仏教美術品等を展示・収蔵する場所や、数々の県内の歴史ある社寺が所有する素晴らしい文化財を保護する拠点を確保することが、滋賀県の仏教関係者にとって悲願であることも、三井寺執事長のお話からひしひしと伝わってきました。

新しい美術館は、2019年までのオープンを目指しています。わが地元の美術館が生まれ変わるのを楽しみに待ちたいと思いますし、たくさんの人が訪れて満足してもらえる素敵な美術館になることを期待しています!

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続 ・ ACOP鑑賞会に参加しました!

2014-12-29 | その他

先日のACOP鑑賞会に参加しました!の続きです。

今回、この鑑賞会に参加してみて、改めて「美術作品を見ること」について考えさせられました。美術展を見に行ったとき、もしかしたらご指摘のとおり、作品そのものよりもキャプションを見ている時間の方が長いのかもしれない…。自分は作品に目を凝らしているつもりでも、実は事前に仕入れた情報を見ているだけなのかもしれない…。

「作品」と作品にまつわる「情報」。

今回のナビゲーターの皆さんも、「情報」の扱いはさまざまでした。鑑賞者の印象や感想が思い切り拡散しそうになった時に、うまく描かれた時代や対象物や、作者について等の情報を提供してもらえると、スッと新しい展開が開かれていく感じがしたり。最後に種明かしみたいにもたらされた情報が、すごい視点の転換を生んだり。作品によって、また鑑賞者との対話の広がりに応じて、適切に情報を提供していく、ということがとても重要なのではないかと感じました。

美術作品を鑑賞する際、やはり全くの情報なしに作品を見るのでは、作者の意図やいろいろな背景の中での作品の持つ意味などがわからず、作品の理解が浅くなり、それはすごくもったいないことだと思います。でも、初めから情報にまみれた目で見るのも、作品の本質に触れ損ねてしまうのかもしれない。なんて難しいさじ加減!!

私もマイミュージアムのサポーターとして解説を行う立場でもあるので(最近ほとんど行けておりませんが…)、作品と鑑賞者のコミュニケーションをより深めるために、どんなところに気をつければいいのか、考えていきたいです。もちろん、経験を積むことが大事なのでしょうけど。

さて、初日のオリエンテーションのときに2013年の報告書という立派な冊子をいただいていたのですが、ネタバレになってはいけないと思って、3回の鑑賞会が終わってからじっくり読んでみました。そこには、学生さんたちが長い時間をかけて、美術作品を通じて、他者との関係を拓いていった葛藤の様子が記されていました。なるほど!アートを媒介にコミュニケーションを活性化するとは、まさにこのことか!と納得。そうだな~、学生時代ってはるか昔で記憶が薄れてるけど、自分に自信もなかったし他人と格闘することも得意ではなかった…かも。

学生さんたちは、ナビゲーターとして鑑賞会の舞台に立つために、本当に一生懸命練習したんだ、いっぱい壁を乗り越えたんだ、ということが報告書からはひしひしと伝わってきました。おかげで、こんなに頭が固くなったオバサンの脳内にも革命を起こしてくれましたヨ!美術を見るのが、いっそう楽しくなりましたヨ!!

3日間通った京都造形芸術大学は、北白川のとても閑静で素敵な環境の中に位置しています。大階段を上っていく建物の正面はまるで神殿のよう!「学校に通う」というシチュエーションも久しぶりで新鮮でした。

このような素晴らしい体験をさせていただけたことに、心から感謝いたします!

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ACOP体験ワークショップに参加してみた!

2014-09-21 | その他

機会がありまして、京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センターが推進しているACOP(Art Communication Project)に参加させていただきました。

ACOPについては以前から興味を持っていました。というのも、2年ほど前に、ここのセンター長である福のり子さんが、滋賀県立近代美術館のサポーター向け講演会にお越しくださり、対話型鑑賞についてのお話をお伺いしていたからです。作品は鑑賞者の存在があって初めて成り立つ、アートって行為であり現象なのか・・・?と深く考えさせられました。

今回のセミナーはビジネスパーソン向け。どちらかというと、アートの鑑賞が目的ではなく、アートを媒介に、コミュニケーションを活性化したり、論理思考を訓練したりすることが主眼です。

基本は「みる・考える・話す・聞く」。アート作品を知識に頼らず、意識的によくよく見ること。見て感じたことを、なぜそう思ったのか考えること。それを言葉にして人に伝える。また人の話をよく聞き、新たな気づきを得て、また作品に向き合う。「見ることは、自分自身を映し出すこと」だとしたら、他者との対話で自身を深めることで、より豊かな作品鑑賞を行えるということ。

セミナーの中盤では、実際に作品のスライドを前に、20数名の参加者で作品鑑賞会を行いました。題材は、ローマ時代の皇帝「カラカラ」の頭像。…という情報は終了後にいただきましたので、知識ほぼゼロでスタートです。

パッと見て私はその表情にすごく「怒り」を感じました。眉間にグッと力が入っていて眼力に「メラメラ~」が込められているように思ったからです。参加者が順番にいろいろな感想を述べられていました。「強い意志を感じる」「視線が定まっていない」「上司にはしたくない感じ」…。ナビゲーターの方の導きで、話がつながり転がり、何となく「トホホ」な人になっていったのが面白かったです。でも、私はどうしても「怒り」の印象が消えなくて…。思い込みが激しすぎるのでしょうか?他者の視点を受け入れられてないんでしょうか…?

セミナーの後半では、グループで鑑賞会の感想やビジネスへの活用について話し合いました。私が、「どうしてもスライドだと、見る角度が固定されていて、出来ている影によって印象が左右されるし、実際の彫刻をいろいろな角度で見たら、また見え方が変わるのだから、スライドをじっと見れば見るほど印象が定まらない気がする…」と言ったところ、「それは、よく美術館に行かれているからじゃないですか?」と言われて、なるほどな~と思いました。

同じグループで、普段あまり美術館に行くことはない、という方は、「おもしろかったので、美術館に行ってみたくなった」をおっしゃっていました。アートのおもしろさを伝えていくのに、作品を見ることで自分の中に何らかの変化が起きることの喜びを感じてもらう、というのはとても重要だと思っているので、その取っ掛かりに、とても効果があるのでは!と感じました。

鑑賞会は40分位、ひとつの作品を見る時間としてはすごく長いと思うのだけど、人数が多かったこともあり、私としてはやや消化不良気味。もっとじっくり体験して、自分の中の変化を見極めてみたいな~と思いました。

ちなみに、カラカラはローマ時代、有名な「カラカラ浴場」をつくった皇帝ですが、実の弟を殺したりかなりの暴君だったようです。あの顔にあらわれていたのは「怒り」ではなく「凶悪さ」だったのかも…。そのような前提の知識がある方がいいのか、ない方がいいのかってのは、う~ん、難しいことろですね…。

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杉本文楽「曾根崎心中」

2014-04-07 | その他

先週、大阪フェスティバルホールに、杉本文楽を見に行ってきました。昨年、橋下市長のもと補助金問題が取り沙汰され、にわかに注目を浴びた文楽。10年以上前に1,2度見に行ったことあるのですが、歌舞伎以上に江戸時代の雰囲気を色濃く残している気がしております。

今回、行ってみたのはもちろん、アーティスト杉本博司が演出し、何と束芋の映像も使われるという、その空間を体験したかったからに他なりません。席についてみると、広い会場では、舞台がかなり遠い…。人形の表情を直に見るのは難しそうです。

それにしてもシンプルな装置、というか何もないと言っていいほど。以前見たときの記憶では、一応、人形が足を付ける台のようなものがあったと思うのですが、今回は、何もないところで、人形遣いが人形を操る。人形は宙に浮かんでいる形となっているんです。最初は違和感ありましたが、そのうち、人形の動きに集中が高まり、だんだん生きているように見えてくる…。最後の「徳兵衛・おはつ 道行」の感情の昂ぶり、心中の場面の迫力は、たいそうなものがありました。

舞台が終わった後、まずは人形の二人がお辞儀したのを見て、いや~、この人形たち「役者」やわ~と感心しました。もちろん、巧みな人形遣いの技があってこそなんですけどね。

舞台空間は幻想的で、シンプルなモノクロームの世界のようで、杉本さんの作品の世界に通ずるものがあったように思いました。束芋の映像も斬新!…とはいえ、普段から文楽を見ているわけではないので、フツーとこんなに違う!みたいなことはわからないのですが。

それにしても、今回、本当に素晴らしいと思ったのは、三味線の音と太夫の声。あの異空間を醸し出すのにも、大きな役割を果たしていました。三味線はホント、カッコ良かったっす!チントンシャン、みたいなイメージを根底から覆すソウルフルな感じがすごいよかったです。ストーリーも人形役者の台詞も、すべて太夫が語るわけですが、その情緒たっぷりの抑揚のある唄声、聞いているうちに人形が本当に言葉を発しているように思えてくる。言葉のすべての意味を聞きとれなかったのは残念ですが(文楽劇場などでは、字幕があるそうです)、気持ちは伝わりますよね。ホント、日本人なんだから、英語勉強する前に、ひと昔前の言葉くらい、理解できるようになれよっと思ってしまいました。勉強します!

もっともっと舞台に近いところで鑑賞したいな~と思いました。人形の表情が、場面場面でどのように変化するのかを体感したいものです。文楽って、歌舞伎などに比べると地味だし、何かと公演の制約も多そうですが、こんなに独特の文化なのだから継承の灯を絶やさないでほしいですね!

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電子書籍 雑感

2013-10-08 | その他

昨今のスマートフォンの普及は目覚ましいものがあり、どうでしょう?今や7割くらいの人がスマートフォンをお持ちのような感覚があります。それに比べて、電子書籍の普及はそれほど進んでいないような気がします。アメリカなどでは、相当に広まっていると聞きますが…。

とはいえ、スマホでもkindleのアプリ等で、電子書籍を読むことができるようになりました。けっこう近代の名作などが無料で入手できるので、今さらわざわざ買うのもなあ~という作品をいくつかダウンロードしてみましたので、少し感想を書いてみたいと思います。

まずスマホなので、画面が小さい!文字の大きさは拡縮ができますが、一画面に入っている文字があまりに少ないと、なんだか本の体を成していない気がして、読みにくいです。あと、やっぱり読書って、「本」という形をもつものが含んでいる文字を辿る過程なのかな…ということを改めて認識。電子書籍の、いったい今どれくらい読んでいて、あとどれくらいページが残っているかを確認できないのは、なんだかツライ。電子画面に、「いま〇%」「読み終えるまで〇分」とか出るんだけど、どうもなあ…。

あの小さな機器の中に、何冊も本が入ると思うと、便利とも思うのですが、使い慣れるにはまだまだ時間がかかりそう…。

さて、昨日、日曜美術館で高村光太郎の特集をやっていましたね。私にとっては、詩人の印象が強かったものですから、彼自身が自分のことを「彫刻家」だと言っていたことは今回初めて知りました。知っているようで、よく知らない人だったんだなあ。

ゲストの平野啓一郎さんが、智恵子抄について話していたので、思わず電子書籍(¥0)をダウンロード。有名な「あどけない話」や「レモン哀歌」などの詩作の他に、「智恵子の半生」という散文がとてもグッときました。これは光太郎が最愛の智恵子を失ったあと、智恵子という一人の女性の半生を留めておこうと、二人の軌跡を赤裸々に綴ったもの。智恵子には自分の好きなように自由に生きるというような幸せはなかったが、光太郎との関係はとても崇高で理想的なものだったのではないかと思いました。

このように機動的に本を手に入れることができるのは電子書籍の利点ですね。先日も宮崎監督の「風立ちぬ」を見た後、これも衝動的に堀辰雄の「風立ちぬ」をダウンロードして読んでみました。映画作品が多面的に広がる気がします。こういうのはよいなあ!

以上、電子書籍の感想でした。あと数年もたてば、どんな存在になっているのでしょうねえ~!!

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織屋のぼんといく、西陣織工房めぐり ~まいまい京都~

2012-10-18 | その他
ディープな街歩きツアーで人気上昇中の「まいまい京都」に初めて参加してみました。まいまいとは?「うろうろする」という京ことば。

「西陣」って有名。でもなかなか個人的に観光に訪れたりってこともなく、その実何も知らなかったといっていい。和装ひとくくりに思ってたけど、西陣は帯だけを作っていると改めて知りました。しかも「織」の技術を追求した美しい織り柄の帯。
今回のガイドの冨家さんは、古くから西陣で織物を作ってこられた「とみや織物」の息子さん(本業は建築家)。家業だからこその、観光客向けではない、「西陣の今」を、実際に制作に携わっておられる職人さんたちを通して見せていただけました。

織について興味を持ったばかりの初心者には、いきなり最高技術の複雑な西陣織の制作方法を完全に理解するには無理がありましたが、あんな細かく美しい織り柄がどのように出来るかのだいたいはわかりましたし、気の遠くなるような細かくて正確な手技の積み重ねで出来ていることは、よ~くわかりました。
ポイントは綜絖といわれる経(たて)糸を引き上げる装置。織物を織るには、緯糸が通る杼(糸を巻きつけた器具)道をあけるため、経糸を引き上げねばなりません。昔はこれを織り機の上から人力でやっていたそうで、だから織屋の家屋の天井は高く吹き抜けになっていたそう。明治に入ってからは、ヨーロッパから持ち帰ったジャカード織りの技術を取り入れ装置も機械化、それに必要だった型紙も今はデジタル化されているとのことでした。

何となく志村ふくみさんのイメージから手染め、手織りを想像してしまっていましたが、染めも織りも糸繰りも、いろいろな現場が機械化されていました。でもその機械もけっこう古めかしくて(明治っぽい?)、やはり人の技術に頼るところが相当大きいのだろうなという印象を受けました。どの現場でも、働いている人が高齢で、この伝統の継承はどうなるのだろうか…と危惧してしまいました。

織物工場では、何と4日間かけて緻密に織られた帯地が完成した現場に居合わせることができ、ツアー客からの歓声と拍手に嬉しそうにされていた職人さんの姿を見て、やっぱりモノを創り出せる人って素晴らしいなあ~と思いました。

今回のツアーでは、単に織物の技術を見学したのではなく、「西陣」を通して京都の歴史や、日本における「キモノ」文化のあり方、伝統を受け継いで現代を生きる方々の誇りと苦悩、みたいなものなど、いろいろなことを感じることのできた貴重な体験だったと思います。

まだまだ興味深いツアーが満載の「まいまい京都」、またぜひ参加したいと思います。
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織の話

2012-09-03 | その他

今、「まいまい京都」が大変な人気だそう。
これは、京都の住民がガイドする京都の町歩きイベント。実にさまざまなコースがあって、ぜひ何か参加してみたいな~とかねがね思っていたのですが、このたび、『織屋のぼんといく、西陣織工房めぐり ~図案から整経、撚糸、製織まで~』というコースに申し込んでみました。ウキウキ~大変楽しみです。

さて、ずっと以前に志村ふくみさんの著書を紹介してから、いずれ志村さんの語る織の話を書きたいと思っていました。

ご存じのとおり、織物とは経(たて)の糸と緯(よこ)の糸が垂直に重なり合ってできています。織物の成り立ちを考えると、経糸は最初に張られると織り終えるまで変えることはできません。それに対し、緯糸はその瞬間瞬間を自由に変化させながら、その経糸に織り込まれていきます。
志村さんは、その経と緯を人生に喩えます。すでに生まれてきている、生きる定めが決まっているところに、思いがけないこと、新鮮なことが起こって、喜びや哀しみなどいろいろな出来事、感情が緯糸のように織り込まれていく…。
織物の経と緯は、伝統と現在、抽象と現実、男と女、陰と陽…人生のみならずまるで世界をあらわしているかのよう。

中島みゆきさんの「糸」にも歌われていますね~。
―経の糸はあなた。緯の糸は私。逢うべき糸に出会えることを人は仕合せとよびます―

志村さんの精緻に色を組み合わせて生み出される美しい織物を見ながら、そんなことに思いを馳せると、本当にその作品には大きな宇宙が詰まっているように思えてきます。

そういうわけで、織物に興味を抱き、その制作の現場の一端をのぞければ…と思っている次第です。参加してみたら、またレポートをアップしたいと思います。
志村ふくみさんと娘さんの洋子さんが、来年春から京都で織物の学校を開校されるようです。

※9/5追記
日経新聞文化欄でタイムリーな記事が紹介されていました!
国立民族学博物館で「世界の織機と織物 ―織って!みて!織りのカラクリ大発見」という展覧会が開催されているそうです。
織物のさらなる可能性が堪能できそう! 11月27日まで。

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2012年 謹賀新年

2012-01-03 | その他

2012年明けましておめでとうございます。
昨年のお正月は大雪でしたけれども、今年の元旦はとってもよく晴れた暖かな一日でした。
今年は「辰年」ということで、以前から見たかった建仁寺の小泉淳作さんの双龍図を訪ねました。
きょうはものすごく寒かったですが、四条通りは初詣客でめちゃくちゃ混んでいましたよ~。

さて、建仁寺は京都最古の禅寺ということで、栄西が開いた臨済宗のお寺です。禅寺って何か厳格なイメージがありますね。
ここは言わずと知れた俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を所蔵していることでも知られています。展示されているのは複製ですのでやけに金箔が眼に眩しかったですが、それでも実物をまだ見たことがないので、まじまじと見てしまいました。

お目当ての双龍図は、法堂の天井に2002年に創建800年を記念して描かれたものです。暗いお堂に入り天井を見上げるとものすごい迫力の二匹の龍が降って来そうです。一緒に鑑賞していた親子連れのお父さんが「あの龍、夜中になると目が光るねんで~」と何回も言っていたのが印象的…。
天井まで距離があるから少し小さく見えるけど、間近で見たらものすごいだろうな~。小泉淳作さんが制作していた風景を拝見したとき、絵の大きさに対して小泉さんの小さかったこと!
龍って見かけはおどろおどろしいけど、表情はよく見るとけっこうかわいらしいです、目もまんまるでね!

他にも龍がおりました。方丈襖絵の「雲竜図」。



桃山時代に海北友松よって描かれたもので、これもパンフレットによると複製画とのこと。
恥ずかしながら「海北友松」という名は初めて知りましたので、Wikiで調べてみました。近江の出身で元は武家、浅井家の家臣だったらしい。(江に登場していませんでしたか?)禅門で修業を積みながら狩野派に学び、後に豊臣秀吉に気に入られて絵師として活躍したとのこと。なかなか興味の湧く人物です。
襖絵は他にも橋本関雪によるものもありました。(あれは本物?)靴下でめぐるのは冷たかったけど、部屋づくり、襖絵、お庭などけっこう楽しめるお寺でした。また季節の良い時分に行ってみたいものです。

このブログにお越しくださっている読者の皆さま、いつもありがとうございます。今年も何とか週1回を目標にアップしていきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。時間は作るもの、絵を見る&体験する楽しみのために自分が動くのだ!!をモットーに。

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