アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

春信一番!写楽二番!フィラデルフィア美術館浮世絵名品展

2015-12-06 | 展覧会

「春信一番!写楽二番!」のキャッチコピーが印象的で、浮世絵師の中でも春信がけっこう好きな私としては、見逃せない展覧会!いよいよ会期終了が迫った先日、あべのハルカス美術館を訪ねました。

アメリカ・フィラデルフィア美術館は、4000点以上の浮世絵作品を所蔵しているとのこと。錦絵誕生250年の記念の年に、そのコレクションから選りすぐりの作品約150点が里帰りしました。この美術館のエントランスに続く立派な階段は、そう、映画「ロッキー」の撮影舞台になったことでも有名です。

今、私たちが認識している色鮮やかな浮世絵とは、「錦絵」のこと。この多色摺り木版画が生まれる以前の、単色の墨摺りや、ポイント的に彩色を加えた紅摺り絵の作品等が、まず展示されていました。

そして錦絵誕生の立役者のひとり、鈴木春信の作品30点がずらり。あどけない表情がかわいらしい美人画のみならず、「水売り」や「そうめん干し」など、当時の風俗を描いた作品が珍しくておもしろかったです。春信の作品の中で一番素晴らしかったのは、「やつし芦葉達磨」という作品で、女性がまとっているピンク色の衣装が、黒色の縁取りをせず、模様と版の塗り重ねにより立体感を生み出しており、その画面の凹凸も美しかったし、何より、衣裳が風に吹かれる浮遊感みたいなものが、すごく表現されていて、驚きました。素晴らしかった!

次のコーナーでは、「錦絵の展開」と題し、鳥居清長、喜多川歌麿、そして東洲斎写楽の作品が展示されていました。歌麿の美人画は、やっぱり素敵だな~。そしてそれまで人物画といえば、着物も含めた全身像を描くのが当たり前だったところに、顔をアップにした大首絵が登場します。もちろん表情や頭髪の表現により繊細さが求められますし、迫力ありますよね。きっと人々の間で大人気になっただろうなあと想像できます。

そして、写楽の大首絵!謎の絵師とされた写楽の正体も、もう明らかになっているとのことですが、やはり一風変わった画風です。美しさは決して追求してません。展覧会の照明では、どうしても背景の雲母(きら)引きが見えにくいのですが、このグレーなどの地味な色味でキラキラ輝いているのは、相当カッコ良かったのではないかと想像します。これをプロデュースした版元・蔦屋重三郎にも脱帽!

次の「錦絵の成熟」では、北斎・広重を代表とする風景画が多く展示されていました。このあたりから、ジャポニズムとして西洋世界を唸らせた浮世絵の構図の斬新さが際立ってきているように感じます。北斎は、本当にスバラシイ!ベロ藍の深い青色の使い方も本当に素敵です。人物の表情や動作なども、すごくイキイキしていて、漫画のルーツを見るような気がしました。

思ったよりお客様が多く、小さな作品が多かったため、あまりじっくりと時間をかけて見ることが出来なかったのは残念でしたが、木版画を見ると、いつも名もなき彫師さんに思いを馳せてしまいます。あの細かい髪の毛の一本一本を彫るの、相当大変ですよ~!すごい技術だったんでしょうね。

ところで、こんなにも素晴らしい日本の芸術である浮世絵作品を、海外の美術館からお借りするのも残念な話ですね。展示作品の中には、よく見ると折り目がついていたりで、どのように扱われていたのかしら…と思うものもありました。そのような作品に価値を認めて所蔵していただけた美術館には感謝したいです。

展覧会は、残念ながら、本日12月6日(日)まで。

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