アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

マグリット展@京都市美術館

2015-09-30 | 展覧会

秋晴れの少しばかり汗ばむ陽気の日、マグリット展に行ってきました。会場は、いつも人気大型展覧会を並行して開催しちゃう京都市美術館。最終日で長い列をつくっているルーブル展に対し、マグリット展はすぐに入場できました。それでも、けっこう混んでいましたヨ!

非現実の不思議なイメージに彩られた作品を生み出したベルギー出身の芸術家、ルネ・マグリット。初期作品から晩年まで、年代を追って展示された約130点は大ボリューム!見れば見るほど、マグリットの世界にどっぷりはまってしまうようで、改めて唯一無二の世界観を堪能できました。

描かれているモチーフとかシチュエーションも不思議なら、それを増幅させるのが作品のタイトル。「これは何が描かれているんだろう?」と意味をさぐりながらタイトルを見ると、全く予期しないものだったり。時々、哲学的?なマグリットの言葉が一緒に展示されているのだけど、読めばよけいにわからなくなる~。

この不思議な世界は、独特なのだけれど、よく見ると風景などはめちゃくちゃリアルで驚きます。チラシの作品と一連の岩の表現なんて、一瞬写真なのかと思ったほど。白い雲の浮かぶ青い空は、マグリットの作品の代表的なイメージだが、その青色(いや水色?)の無垢な美しさはとても印象的。幻想的な虚構の風景の中にあって、この空と雲も、めっちゃリアル。

でも想像する…。何か、とっても信じられない現実の中で、見上げた空の青と雲の白はぽっかりと虚構の背景のようにあるものなのかもしれない、と。

さて、今回、初めて知ったのは、マグリットの「ルノワールの時代」。ちょうど第二次世界大戦の頃、まさにルノワールを思わせるような色遣い、筆遣いで、印象派的な薔薇色の作品群を描きましたが、これはナチスがもたらす暗黒や恐怖へのアンチテーゼであったということです。静謐でどちらかというと寒色系のマグリットの作品のイメージからはかけ離れていて、とっても意外でした。

マグリットという人物像については謎多きままでした。作品を見る限り、既成概念にとらわれない、フツーの人の発想を飛び越えている方のように思いますが、日常はあくまでも「小市民」だったとか…(by ウィキペディア)。実際どんな人だったのでしょうか?興味深いです。

人は目に見えるものだけを絵に描くのではない。言葉にならない混沌かもしれないし、目に見えるものや発せられる言葉の幻想をあばいた真実かもしれない…。絵っておもしろいですね!

このせっかくの機会にマグリット・ワールドにどっぷりハマろう!10月12日(月)まで。

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志村ふくみ展 ―自然と継承―

2015-09-06 | 展覧会

わがホームミュージアムである滋賀県立近代美術館にて、現在、「志村ふくみ展」が開催されています。

8月から始まっている本展は、途中に着物の全作品を展示替えし、前後期合わせて60点を展覧することができます。そのほとんどが当館所蔵(寄託品あり)ということで、改めてそのコレクションの素晴らしさを実感します。作品の展示や会場構成は志村さんご本人が携わられたということ、今年制作されたばかりの着物も展示されており、今なおお元気で精力的に活動されていることがうかがえます。

あまり説明を尽くすではなく、作品そのものに向き合い縦と横の糸が織りなす奇跡のような色と柄の世界を堪能することを求める展覧会。特に年代順とかは意識されなかったとのことですが、これだけたくさんの作品を一堂に見ることができると、やはり時代の変遷なども感じることができました。初期の頃の作品は、気負いというか、糸に饒舌に語らせようとするような濃密さを感じましたが、年代を経るごとに軽やかになり、自由な境地を開かれているように思います。

今回、図録もオリジナルで作られていますが、やはり実物の色の美しさを写真で再現するのは難しそう!自然の草木の染料で染められた色は、本当に目に優しいというか、いつまでも見ていたい素敵な色がいっぱい。特に今の私の心境には、緑の色がやたらと美しく映り心癒される気がしました…(疲れてる?)。

そしていつもながら、縦と横の糸がどのようにこの世界を織りなしているのだろう…!というのが興味深くて。ちょうど今日、美術館では機織りワークショップというのが行われており、そこのスタッフの方に聞いたところによると、縦の糸の色を変えるときは染分けていて、ちゃんと柄になるように計算して糸を張るのだそうです。ひょえ~、大変そう…。このワークショップでは、老若男女の方々が機織りの体験を楽しんでおられました。美しい1本の糸(思ったより太かった!)から、自分の手で布地が創り出されるのは嬉しいことなんだろうな~と想像する。私もやってみたかったです。

会場の最後のコーナーには、いろいろな色に染められた60センチくらいの長さの生糸の束がずらりと展示されていました。いつものくるりとねじられた束よりも糸の存在感がすごくて、自然の植物の色が糸に染み入っていることを実感させられました。以前テレビ番組で見た染色の様子なども思い出されて。

本当に作品に真正面に向き合える展覧会ではあると思いますが、そのような作品を生み出す実際の植物や、表現している風景などの写真を合わせて展示したり、会場の中に映像を流すような動きがあれば、もっと志村さんという作家の姿を立ち上げることができたんじゃないかな、という気もいたしました。

9月13日(日)には、志村ふくみさん、洋子さんをお招きして講演会も開催されます。志村ふくみさんの素晴らしい着物世界を堪能できる絶好の機会、ぜひ足を運んでみてください!

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