アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

特別展覧会 「狩野 山楽・山雪」 @京都国立博物館

2013-05-09 | 展覧会

今年のGWの唯一のお出かけはコレ。

こりゃあ、たまげる!相当にオモシロイ展覧会です。なんと会期は今週末の12日(日)まで。

あまりに良かったものですから充実の図録も買いましたので、それも熟読してからじっくりと記事を書きたいとも思ったのですが、この展覧会の凄さは、本物を前にしないと、やっぱりわからないので、拙ブログの読者の皆さまにも、お時間があれば(なくても作って!)ぜひ足を運んでいただきたいと思いまして。

狩野派って日本画の王道というイメージ、いわゆる本家狩野派は徳川幕府御用絵師である「江戸狩野」であって、それとは別に濃厚な画風を打ち立てた「京狩野」の存在を今回初めて知りました。永徳の画風を受け継いだ山楽と、山楽を師とし、ひたすらに自身の絵画世界を追求した山雪。

展覧会は、山雪の作品が7割ほどを占めるのだが、やはり冒頭の山楽のパートは重要。しかも二人の描く「龍虎図屏風」の違いが、「京狩野」の進化(?)を際立たせる。最後のクライマックスの山雪の「龍虎図屏風」の虎の質感はスゴイよ!本当のそこに毛皮があるような、でも「絵」なんですよね~。奇跡のようだわ。

そしてこのチラシの作品「雪汀水禽図屏風」は凄まじい!ちょっとよく見えないかもしれないけど、水のうねりが一本一本の細い銀色の線で盛り上がって描かれていて、見ていると本当に波がたゆたっているようなのだ!その細かい作業を想像しただけで気が遠くなりそう・・・なんちゅう絵なんだ!!としばし呆然としてしまいます。

その他にも山雪の作品にはおったまげる作品が目白押し。個人的には「長恨歌図巻」に感激。これはアイルランドの大好きな美術館、チェスター・ビーティ・ライブラリーから出展されたもの。2巻の20mにおよぶ絵巻物を、けっこう十分に展示してくれている。その色彩の細密で美しいこと!本当に映像が流れるように場面が繰り広げられる様にうっとりしてしまう…。

「蘭亭曲水図屏風」も何と屏風4隻14mの壮観な絵画だが、これも人物を一人ひとり見るだけで、すごい楽しかったですね~。人々の楽しげな雰囲気に比べると、背景の岩の厳格な描写に、またハッとさせられる。近寄って良し、離れて良し、だ。

さすが京都国立博物館、「伊藤若冲」「長谷川等伯」に続き、ゼッタイ見ておくべき展覧会のひとつにあげられるだろう。展示中のキャプションのひとつひとつにも展覧会の企画者の熱い熱い気持ちが込められている。

5月12日(日)で終了です!ぜひ未見の方はご覧になっていただきたいです。金曜日は午後8時までやってますよ~。

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芸術新潮でブリューゲルを堪能した!

2013-05-04 | 

 

芸術新潮 2013年 03月号 [雑誌]

GWも後半に突入!特にどこに行く予定もないものですから、せめて誌上で世界のブリューゲルの作品をめぐろう!ってことで、購入していた「芸術新潮」3月号のブリューゲル特集をじっくり読んでみることにしました。思わず衝動買いしてしまったブリューゲルの全作品が掲載されている本誌。誌上で特別講義をしてくださいますのは、長年ブリューゲルの研究をなさっている明治大学名誉教授の森洋子先生。さまざまな見識に裏打ちされた解説は、読んでいてとっても興味深い!

ところで、今回紹介されているのはピーテル・ブリューゲル(父)。息子にヤン・ブリューゲルとピーテル・ブリューゲル2世がいて、その息子もピーテル・ブリューゲルだったりして、ややこしいことこの上ないのですが、私たちがよく知っている「バベルの塔」とか「農民の祝宴」とか「雪中の狩人」とか、ウィーンの美術史美術館でたくさん見れるのは(父)の作品であります。

なぜブリューゲルの作品に魅かれるか。まず農民とか市井の人が思い思いにたくさん描かれていて、その様子が生き生きして楽しげだから…。でも今回、一枚一枚の絵の細かいところまでじっくり見てみると、描かれている人たちの顔は、あまり幸福そうな良い表情ではない。むしろ、人間の内面が表出したような、けっこうグロテスクな表情をしている…大人も子供も。

農民画家とも言われるブリューゲルですが、実は都会で修練し画家として生きた人で、絵には宗教的なテーマが数多く取り上げられ、また市井の人々を描いた作品も、どちらかといえば寓意を含む教訓画が多いようです。「ネーデルラントの諺」といいう作品には、何と!85もの諺を体現した人やもろもろが作品の中に散りばめられています。「神に亜麻のひげをつける」(計略で人を騙す)、そのままなんだけど、神様が男につけ髭をつけられている様子って、何だか可笑しいです。

ブリューゲルの作品は、そういう細かい表現をひとつひとつ読み解くのが、けっこう楽しいのではないかと思います。有名な「バベルの塔」でも、その周りに描かれている家のひとつひとつの細かいこと!誌上では、ブリューゲルの絵の中に描かれている料理を再現するという試みもあって、結局予想でしかないのですけど、けっこう美味しそうでした。

ブリューゲル(父)は、40歳代で亡くなったそうで、残された作品も40数点しかないそうです。ウィーン美術史美術館の静寂の中で見た体験が、どんなに贅沢であったかを今さらながら思い知らされますね~。まだ真贋のはっきりしない作品もあり、私が以前、神戸で見た「イカロスの墜落のある風景」は、追随者のコピーであることが判明しているそうです。あらま~。

誌面上でじっくり細かいところまで見れるのもいいのですけれど、やはり本物を見たくなりました。もし世界中のブリューゲルが一堂に集まったりしたら、スゴイだろうな~!!あり得ないかな~!!

 

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「志村ふくみ・志村洋子 作品展 しむらの色 KYOTO」細見美術館

2013-05-01 | 展覧会

ふくみさんの着物には風景があり、洋子さんの着物には物語がある―。

人間国宝である染色家、志村ふくみさんと、その母の薫陶を受け継ぐ娘、志村洋子さん。この母娘の着物の特徴は、何と言っても色だと思います。自然の大地から採取した植物を使って糸を染めることを、ふくみさんは「草木の抱く色をいただく」と表現するそうです。

この展覧会の作品を見ていると、キャプションで何の染料かが紹介されているのですが、藍や茜、紅花など染料でおなじみの植物に交じって「玉葱」とあって、なかなか渋くて素敵な茶色にびっくり。艶やかで多彩な糸の束も一緒に展示されています。

その一色一色ごとの美しさもさることながら、その組み合わせの妙が、何とも言えずに素敵です。縦糸と横糸が織りなす絶妙な色のハーモニー。 

ふくみさんの着物を見ていると、そこに本当に風景があるように感じられます。水面が風にそよいでいたり、草が湿り気のある生気をたたえていたり、大地に日の光が反射していたり…。自然の恵みを凝縮して作られた糸がそれを見せてくれるのでしょうか。作品の前に立ち、シンと静かな心持ちでその風景とすっぽり対峙することは、とっても素敵な体験です。

一方、洋子さんの着物は西洋の聖書にインスピレーションを求めるなど、母とは違った新しい境地を開いています。タイトルと呼応して、色や模様が何かの出来事や登場人物を象徴するような、深い物語性が湛えられています。色使いも、ヨーロッパ的な華やかさが感じられます。

母娘が作歴30周年を記念し、二人が研究・実践してきた染色表現の集大成を紹介するこの展覧会。縦と横に糸を交差させるだけの、着物という形の決まった枠の中で、無限の宇宙を生み出している母娘の作品を、ぜひご自身の目で体験していただきたいものです。

期間中は、美術館の屋上にある気持ちのいい茶室「古香庵」で、志村母娘の着物をイメージした目にも舌にも美味しいお菓子が味わえます。

5月6日(月祝)まで。連休のお出かけにぜひ!

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