アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

直島への旅(4)アート待つ島

2018-01-09 | 旅×アート

今回の旅で特に楽しみにしていたのは、ベネッセハウスに宿泊すること。ベネッセホールディングスの福武總一郎氏が、直島を「現代美術によって世界中から人が集まる国際的な文化の島にしたい」という熱いで想いで安藤忠雄氏に依頼したプロジェクト、その最初の建物がこのベネッセハウスミュージアムです。島の南側、瀬戸内海に面したゆるやかな岬の斜面に建てられており、高台から空と海を臨む景色が抜群に素晴らしい!

ここは宿泊施設でもあり美術館でもある、館内にはたくさんの作品が展示されています。杉本博司さんの「海景」の写真作品がレストランの窓から見える屋外に展示されていたり、バスキアやサイ・トゥオンブリーの作品が、日光が差し込んで屋外に出られる扉がついている部屋に展示されてたりして、「い、いいのか…?」と思ってしまうぐらいの贅沢空間。何といっても、夕食も終わって就寝までのひと時を、ゆっくり美術作品を見て回ることのできる心豊かな時間よ!(宿泊者は22時まで鑑賞OK!)あ~、幸せでした。

再訪となった直島、3度の「瀬戸内国際芸術祭」を経て、すっかりアートの島として定着し、今や多くの美術ファンを集めています。今回の旅でも、特に外国人の方々が多いな~と感じました。思ったより若い人は少なくて(時期的なものもあるか)、熟年の女性グループが多いのはちょっと意外でした。

そして前回と大きく変わったのが、そのようなアートを提供する施設のスタッフに、明らかに島外から来たであろう若い人がたくさんいたこと。みんな、アートを愛していて携わりたくて来たのだろうなあ。なぜなら、どの施設でも、作品や作家について質問してみると、すごく詳しくいろいろなことを教えてくださったから。きっと、しっかり勉強もしているのでしょう、おかげで作品への視点が深まって、本当に良い体験となりました。

直島への旅、最終日は本村の「家プロジェクト」へ。ここは前回来たときも巡っています。当時は写真を撮っている杉本博司さんが護王神社をつくった意味がわかっていなかったけど、今ならすごくよく理解できる。そしてジェームズ・タレルの南寺は、安定の(?)興奮体験。宮島達男さんの角屋では、きょうも水底で光るデジタル数字が時を刻んでいました。

新しく増えていた作品としては、須田悦弘さんの「碁会所」。かつて島民が碁を楽しんだ場所を再現し、本物そっくりの椿の花の彫刻を畳の上に散らしている。吹きっさらしのその部屋で、椿の花はコロコロところがるそうだ。その部屋の前の庭に、本物の椿の木が。ほころび始めた花を見て咲きそろったときを想像し、その対比の美しさに感動!ここでは、島民のおじさんが説明してくれました。とても作品を愛していたし、誇らしげだったな~。

それから大竹伸朗さんの「はいしゃ」も初見。前日に入湯した銭湯「I❤湯」もですが、これまで外から眺めていた大竹さんの作品の中に入れたとあって、コーフン体験。銭湯は特にトイレがよかったですね~。思わず「ギャー」と叫んで鏡のまわりのコラージュをすりすりしてしまいました。銭湯でも地元のおじさん、おばさんが親切だったなあ。

思うに、芸術祭の喧騒を経ていくごとに、ますますこの島のアートが堅牢になっていくような気がします。しっかり地元に溶け込み、そこに住む人たち、移り住んできた人たちの手によって支えられている。祭りが終わっても消え去ることなく、島に根をおろす作品たち、そして訪ねていけば、いつでも待っていてくれる、また会えることの安心感。このような魅力ある場所は、本当に唯一無二であり、福武さん、安藤さんの功績はものすごく大きいなと感心しました。

2泊3日アート三昧、夢のような時間を過ごした直島への旅。いつまでも心を暖めてくれる思いを胸に、また会いに行ける日を楽しみにしていよう!

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直島への旅(3)豊島美術館

2017-12-28 | 旅×アート

今回の直島への旅を2泊3日にしたのは、豊島と犬島のふたつの島も訪ねてみたかったから!特に2010年の芸術祭で行けなかった豊島美術館には焦がれてました。映画『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』で堪能した静謐な空間を、ぜひとも体験したくって。

旅の2日目の朝、まずは宮浦港から豊島へ、船で約20分間です。お昼には豊島から犬島に向けて船が出ますので、時間の節約のために、家浦港から美術館まで電動自転車を借りることにしました。約30分の道中はけっこうアップダウンが激しく、電動とはいえ、なかなか大変でした…。そして、ついに眼の前に白い繭のようなドームが。お~、これぞ母型、感激だ!

豊島美術館は、このドームの中だけではなく、まわりの環境も含めて鑑賞です。良いお天気で、空気の冷たさも気持ちの良い中、ゆっくりと小道を歩いて、ついに美術館の入口にたどり着きました。そこで室内履きに履き替え、いよいよ中へ…!床も壁も一面白い内部は、本当に繭の中に入り込んだよう。なだらかな曲面を描く材質はコンクリートとのことだが、表面は漆喰のような暖かみがあります。

天井にはふたつの大きな開口部があり、暖かな冬の光が差し込んでいる。そこからは風にそよぐ木々が見える。吊るされているヒモがふわりと揺れて風の存在を感じさせる。そして、床にはそこここに小さな穴があり、水が少しずつ湧き出して、ついに美しい水の玉となって、床をツーところがっていく。水は寄り集まって水たまりになる。観客は誰も大きな声を発することなく、静寂を楽しんでいる。差し込む光の中に座り込んで水の動きをじっと眺める。プクン、ツー、コロコロ、コロコロ。その動きがあまりにおもしろく美しく、ずっと見ていても飽きない。

スタッフの方にひそひそ声で尋ねてみると、この水の出方は、アーティストがすごく緻密に計算し、設計されているとのこと、それでもその時々の光や風によって、日々違う姿を見せてくれるそうです。まさに自然とともにある、得難い体験としてのアート。あ~、とっても良かったです。今思い出しても、心が暖まるような。

 

豊島美術館でゆっくりと時間を過ごし、急いで港に引き返して次に訪れたのは犬島。ここの最大の見どころは、明治時代の終わり頃につくられた銅製錬所が廃墟として残る跡地を利用した「犬島製錬所美術館」。三分一博志の建築は、風の流れや太陽光など自然のエネルギーを活かした設計。銅製錬の過程で生まれるスラグという素材を使ったカラミ煉瓦の保温効果の話はすごいな~と思いました。子供の頃はその上を裸足で走り回ってたと、地元のガイドのおばあさんが話してくれました。

美術館の中で展開されているのは、解体された三島由紀夫のお屋敷の家具や建具を生かした柳幸典さんのスケールの大きな作品。廃墟として残る近代化産業遺産に重なる三島のイメージ…。屋内の半円の大きな壁のまわりからは光が漏れ、さらにそれが床に敷かれた水に映って日輪のように円を描いているさまは、ものすごく美しかったです。

美術館を出て、跡地をぐるりと巡ることができます。当時の煙突が数本残っており、うち何本かは今にも崩れ落ちそうで、廃墟感たっぷりです。ひえ~。 

製錬所美術館のほかにも、島には集落の古い家屋(跡)に作品が展示されている「家プロジェクト」が展開されています。そこで、なんと!発見!「石職人の家跡」で、淺井裕介さんの作品を、初めて直接見ることができました! 

敷地いっぱいを埋め尽くす淺井さんの絵。細部のひとつひとつがかわいいし、引いて眺めると、そこに壮大な物語が繰り広げられているようで。ほんとに魅力的な作品でした。今年はかなわなかったけど、来年こそは土で描かれた絵を見てみたい!!

一日でふたつの島を巡り、少々忙しかったけれども充実した時間を過ごすことができました。これから、また船で直島へ戻り、お目当てのお風呂❤へ入ります!つづく。

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直島への旅(2)ジェームズ・タレル

2017-12-21 | 旅×アート

光と空間を題材に、興奮の視覚体験をもたらしてくれるアーティスト、ジェームズ・タレル。ググってみたら、世界中に美しい作品があるようですね~。彼の名前を知ったのは、前回、直島へ出かけた際に、「南寺」の作品で。全然内容を知らずに参加したものだから、最初はわけがわからなくて、そして興奮の体験が!…と、これはぜひ現地で体感していただきたいので、多くは語りませぬ。

そして、金沢21世紀美術館の「タレルの部屋」、四角く切り取られた天井から、空を眺める「Blue Planet Sky」という作品。そのアイデアの斬新さが面白く、じっと空を見上げました。広い空を見ている分には気付かない、雲の流れによる画面の移り変わりは、見ていて飽きません。

今回、直島の地中美術館の「オープン・スカイ」も同様の作品なのだけど、違っているのは、お部屋の壁にLEDが仕込まれていること、そして、ナイトプログラムがあること!

ナイトプログラムは、毎週金・土曜日のみ、しかも完全予約制で定員も限られているので、今回、参加することができて、ラッキーでした。「日没に合わせての45分間の特別プログラム」ってことですが、あまりよくわかってなくて、日が沈んでいく光の変化をみる…だけなのかナ?と思っていましたが、まさにその通りでした!ところが、それが、すっごくおもしろかった!

スタートは日没後。なので季節によって開始時間が変わります。冬至も近づく12月ですから、集合は4時半です。参加者は、けっこう外国の方が多かったです。空がパッカと開いたスペースですから、皆、しっかり防寒しています。5時前に、スタッフに引率されて、もう真っ暗になったコンクリートのトンネルを抜け、「オープン・スカイ」のお部屋へ。そしてぐるりとベンチに腰掛けます。

「お静かに」と言われ、観客は息をひそめて空を見上げます。日が沈んだとはいえ、空はまだ水色。薄い雲が流れるのが見えます。じっと眺めていると、だんだん夜の暗さが覆っていく様子が見えます。そこで視覚を攪乱するのが、壁に仕込まれたLED電灯。ピンクとか、グリーンとか、壁全体の色味が変わることによって、空の色がどんどんと変化して見えます。実際に空の色が変化していくのと、壁の色の変化で見え方が変わる視覚マジックに、すごく不思議な空間に身を置いているような気がして、みんな、あんぐり(口は開けてない)空を見上げて、45分間の色彩のステージを堪能したのでした。そんな不思議空間なのに、風が吹くと、ザワザワと音がして、自然の中にいる、という感覚が呼び戻される。もうすっかり闇となった空に、小さく星が見えた気がしました。壁の色合いが変わっていくとき、一瞬空の色と一体化して、空間の真綿にくるまれているような感覚を味わいました。めっちゃ、おもしろかったです。おすすめです。

さあて、2日目は、豊島・犬島へ渡ります。つづく…!

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直島への旅(1)地中美術館

2017-12-17 | 旅×アート

2010年に瀬戸内国際芸術祭を訪ねて以来、またゆっくり瀬戸内のアートの島を巡りたいとずっと思っていました。芸術祭の合間のしかも冬の閑散期が狙い目じゃないか?ってことで、訪ねて来ました。実は、2004年に直島を訪ねています。地中美術館が建設されオープンする直前…。今回、2泊3日の旅で訪ねるのは、直島、犬島、そしてリベンジの豊島です!

直島の旅のガイドを助けてくれたのは、このパンフレット(ボロボロ~)。直島へ船で渡る宇野港で入手できます。アートマップはじめ飲食店のラインナップからバス・船の時刻表が載っていて、めちゃくちゃ重宝しました。重いガイドブックとかなくても、全然大丈夫でした!

初日は、直島の新しい美術館、「地中美術館」と「李禹煥美術館」を訪ねます。どちらも安藤忠雄建築の、空間自体を芸術体験にするような美術館。無機質なグレーのコンクリートの壁が、この直島にあっては、すごく暖かみがあって自然と共生していることを改めて認識しました。

地中美術館は、文字通り地中に埋められたロケーション。コンクリートのトンネルを抜け、コンクリートの壁に切り取られた空間に植物を見て空を見上げる。日常とは違う空間に足を踏み入れるワクワク感に充ちてくる。ここでは、3名のアーティストの作品が空間を贅沢に使って展示されています。

B1Fには、クロード・モネ「睡蓮」のお部屋。部屋の入口に立つと、「あっ」と思わず声が出てしまう。自然の柔らかい光に満ちた部屋の正面に幅3mの作品が。展示されている5点の睡蓮のために設計された部屋。作品はどれも晩年描かれたもので、色の乱舞がけっこう激しいのだけど、やはりそこはモネ、少し距離を置くと揺れる水面や柳が見えてくるから不思議。ずっと見ていたくなる心地良さ、それでいて神々しい空間。

B3Fは、ウォルター・デ・マリアのお部屋。この作家の球体の作品は、島の海岸にも設置されています。ピカピカに磨き上げられた直径2.2mの花崗岩の球。階段状にしつられられた展示スペースは、まるで神殿か教会のよう。まわりを飾っている金色の柱状の彫刻も荘厳さを醸し出している。この部屋にも天上からは自然光が差し込んでいて、どの角度から眺めても、長方形に切り取られた空がこの磨き上げられた球体に映り込む。この安藤建築に、本当にマッチしている、と思いました。

そしてB2Fには、ジェームズ・タレルの作品が。光と空間をテーマにした彼の作品は、その場所に行って体感してこそ。ここで体験することのできる「オープン・スカイ」という作品は、金沢21世紀美術館でも見られた、天井を四角く切り取った作品。ベンチに腰掛けて雲の流れる空を見上げます。そしてここで、ナイトプログラムが開催されるとのことで、日没後に再び出かけることにしました。(要予約です)

次に訪れたのは、李禹煥美術館李禹煥さんは、以前記事にも書いたように、とてもなじみのある作家。安藤建築による美術館は、李さんのシンプルで強さのある思索的な作品の特徴を際立たせていました。マイミュージアムの滋賀県立近代美術館の所蔵品と同様の「点より」、そして筆跡の美しい「線より」も良かったです。めちゃくちゃ巨大な筆跡の絵の具の生々しさ!物質なんだけど、込められているいろいろなものを想像させるのは、筆だからこそ?近年の「もの派」たる石や鉄板の作品も、美術館の中では瞑想的な空間を生み出していましたが、青空と風のもとでは、素顔を見せているような自然な佇まいが素敵だと思いました。

そして、夕方になり、いよいよジェームズ・タレル「ナイトプログラム」へ!…長くなったので次回につづく!

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室生山上公園 芸術の森

2015-05-30 | 旅×アート


ずっと行きたいと思っていた「室生山上公園 芸術の森」に行ってきました!たいがい、車で行くところだと思うんですけど、まさかの徒歩!でガンバリました。(バス停からネ)

…とその前に、まずは「室生寺」にお参りです。奈良県宇陀市、奈良時代末期に建立された歴史あるこのお寺は、平安前期の優れた仏教美術を継承し、また女性に対しても真言道場として参詣を許したことから、女人禁制の高野山に対し、「女人高野」と親しまれてきたそうです。

境内にはいくつかの建物があるのですが、そのどれもが相当古い!かつて見たことがないほどです。そしてこの写真は国宝「金堂」、平安時代初期の建立です。同じく国宝である五重塔は、思ったよりかなりの小ぶり、こちらは平成10年の台風により大きな損傷を被りましたが、平成12年に修復され復興したという経緯があります。

この金堂の中には、国宝・重文クラスの仏像がドドーンと5体も並び、その前には運慶の作と伝えられる十二神将像が並びます。ちょっと距離があるので、よくよく見えないのが大変残念。国宝の十一面観音菩薩像は、平安時代初期に作られたのにもかかわらず、けっこう色彩が残っています。ふくよかなお顔の唇もうっすら紅い。

京都国立博物館の平成知新館などのとても整えられた環境(温湿度とか、光とか…)を考えると、ここにおられる仏像さまたちの、外気にさらされた何とおおらかな環境よ!(過酷…でもあるかも)。でも、これが本来の姿であり、仏像さまたちもその方が嬉しいだろうな、などと感じました。

信仰の対象でもある優れた美術品…。やっぱり、前にすると手を合わせてしまうものね~。 


そして、室生寺から山に向かって歩くこと約20分、「室生山上公園 芸術の森」があります!こんなところに、こんなものが?!というこの公園は、公共事業とアートの融合を目指し、世界的に著名な彫刻家であるダニ・カラヴァン氏の設計で造られました。

広々とした公園は芝生がきれいに整えられ、アップダウンがあって、パッとみるとゴルフ場のようです。そこに、奇妙な物体が…。形はピラミッドを思わせて、神秘的です。近寄ると金属で作られた外壁が錆で茶色くなっているのでした。上に登れたり、下に潜ったり、中を通り抜けしたり。

上の写真の階段ピラミッドのような天文の塔を横切る通路は、北緯34度32分の軸線上である太陽の道で、これは実際に、室生寺・長谷寺・伊勢斎宮跡・箸塚古墳等を一直線につなぐラインなんだそうです!ワーオ!



一番奥には湖があり、ここからこの公園に沿って水路が延びています。これが地すべり対策として造られたということです。

光、水、風、木…。気持ちの良い空間では、家族連れやカップルが憩っている姿が見られました。ちょっぴり神秘のパワーを感じる不思議な公園、近くにあれば、ぜひ度々訪れたい場所ですね。

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東寺で桜を愛でる

2012-04-16 | 旅×アート

今年は桜の開花が遅いと言われていましたが、もう今週末は最後の見頃でしたね。
花見というイベントも、単独なら「花の下でお弁当」が必須だし、じゃないなら、花見プラスアルファが欲しいところ。今年は「花見とサッカー」という案もあったのですが、結局「花見と仏像」となりました。

訪れたのは京都・東寺。新幹線で東京方面から帰って来ると、まず目に入る黒い陰影の五重塔。「あ~、帰って来たな~」とホッとする一瞬ですよね。超有名とは思うのですが訪れる機会がなかなかなく、初訪問となりました。

平安時代からその地にある東寺、弘法大師が造営されたお寺です。1200年余りの間には、災害や戦などにより何度も焼失しながらもその度に元の姿に再建されてきたそうです。
お寺の中の主な建造物は五重塔(国宝・江戸時代)、金堂(国宝・桃山時代)、講堂(重文・室町時代)、大師堂(国宝・室町時代)。そして金堂、講堂の中の仏さまの数々が誠に素晴らしい!

特に気に入ったのは講堂の「立体曼陀羅」です。まるで狭い舞台に大スターたちがひしめき合っているように、21体の仏像が並んでいます。うち15体は平安時代前期の制作で、すべてが国宝。仏像の番組や本なんか見たりして、少しは知識を持って行ったつもりだったけど、改めて堂内で仏様と対峙すると、あまり美術館で美術品を見るようにはまじまじと見ることが出来ない、というか、そもそも暗くてよく見えないってのもあるのだけど、「拝むべきもの」と「鑑賞」との狭間で揺れてしまうんですよね…。
ホントに、お一人お一人が大スター、梵天とか帝釈天のお顔の美しいこと!象とか鳥に乗ってるのもおもしろいし。美術館にお越しいただいたら、えらい行列でっせ~とか思ってしまう私はフトドキものですかね~。

続いて「宝物館」と「観智院」にも行ってみました。
「宝物館」では、千手観音立像がよかった。6m近くあるでっかい仏像。ほんとに千本ありそうな手は繊細に造られており、大きさの迫力もあってえらくありがたい気持ちになりました。
「観智院」は、建物の中のお部屋をいろいろ巡ることができます。間取りとか小さな窓のつくりとか天井とか、なんだか凝ってて、小さな襖には絵が描かれていて、素敵なお庭もいっぱいあって、なかなかおもしろかったです。ここでは、ご本尊である「五大虚空蔵菩薩像」がよかったです。唐で造られたそうで、表情がやはり和式とは違う、すっとした面持ち。5人の仏さんが、鳥とか像とか馬とかに乗ってるのがとてもユニーク。もっと間近で見たかったです~。

東寺のHPは素晴らしいです。写真の迫力が堪能できますので、ぜひ見てみてください。そして、ぜひ訪ねてみてください。
あ、もちろん桜も美しかったです!桜と五重塔のベストスポットには、人が絶えることがありませんでした。(ので写真撮影ができませんでした…)

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瀬戸内国際芸術祭 ~豊島~

2010-10-31 | 旅×アート

閉幕を目前にした火曜日、小豆島のわらアート・マンモスが強風で倒れたって!!あら~、あともう少しで力尽きたのでしょうか…。立ってるお姿を拝見できて良かったです。いよいよ今日までですね~、明日から撤去などが始まってしまうのでしょう。

さて、わが芸術祭レポート、2日目の豊島をお届けします。今回の芸術祭で、直島と並んで人気の高い島、この島への道行でまさに「島」を舞台にしたイベントならではの不自由さを実感することとなりました。

2日目の朝、小豆島から豊島へのフェリーが非常に混み合い乗れないかも…と聞いていたので、30分以上前に港へ。無事乗船できましたが、どんどん人が乗り込み座席に座れない人も。人々が手に手にしているのは、美術出版社のガイドブック。(雨でボロボロになってしまった)

はっきり言って存在さえ知らなった小さな島へ、こんなに人を動員してしまうチカラって…。アートだけではないでしょうけど可能性は感じる。

まずは、20・ビューティ(オリファー・エリアソン)。暗い蔵の中に人工的に噴出される霧、そこにライティングされることで幻想的なゆらめきが現れていました。近づいたり離れたり、始めは?だった観客たちの心をグッと掴んでいました。次に32・ノリとたゆたう。(大阪芸術大学豊島アートラボ)、ここは体験型ってことで、薄暗いお部屋に靴を脱いであがると凹凸をもって柔らかい布が張られており、そこに寝転ぶと天井から光が降り注ぐ。ゆらゆらと揺られていると気持ちが落ち着く感じ。ここで面白かったのは、案内役のおじさん。作者の意図に忠実に体験してもらおうと一生懸命で、これも含めて作品だなあ~と思ったりしました。

さていよいよ33・心臓音のアーカイブ(クリスチャン・ボルタンスキー)へ。朝いちでしたが、人数制限があり15分ほど待って入館。待っている間もドクンドクンと心臓の音が漏れ聞こえ、初めての生ボルタンスキー作品にわくわくです~。展示室の中は細長く真っ暗で壁には鏡が張られている。心臓の鼓動と連動して電球が明滅、音は大音響だ。誰の心臓の音かはランダムらしいのだが、人によって全然音の大きさとかリズムとか違うのです。途中、ホントに音が小さく電球がほとんど光らないのもあり、何だか生命力の強弱ってあるのかしら??などと思ってしまいました。リスニングルームではパソコンで世界のいろいろな人の心臓音が聞けて、またレコーディングルームでは自分の心臓の音も録音できるとのこと。自分の心臓音であの部屋をチカチカさせてみたい衝動に駆られましたが、時間もないので我慢しました。ここは常設になるので、またいつか訪れたいものです。

出てくるとついに雨が降り出す。移動方法はバスしかない。港に着くと豪雨。途中で傘が壊れるしビショビショと濡れて、案内所で傘をお借りしました。オープンしたての豊島美術館は超人気で、整理券待ちとのことで涙をのんでパス。森万里子作品も雨で足場が悪く鑑賞できないとのこと。
唐櫃岡周辺の作品を巡りましたが、19・空の粒子(青木野枝)は、神社に寄り添うように、鉄の錆びた感じ、クモの巣の張った様子が、ずっと以前からあるように馴染んでいました。いろいろ物議をかもし出したとも聞きますが、地元の人に愛されるといいなあと思いました。23・藤島八十郎をつくる(藤浩志)は面白かったですね。架空人物ではありますが、そのへんに寝転んでいそうな実在感がありました。なかなか愛すべき趣味の持ち主、猫がいついているのがいっそう現実感を引き立てていました。
バス停までの行くのに、畑の中を通って明神池へ。25・豊島の気配(戸高千代子)は、とても美しい作品でした。池に何本も立てられた半透明のオブジェ。風が吹くとふわりふわりと舞うように見えて、鳥のような花びらのような。取り囲まれた棚田の緑をバックにたいそう幻想的で美しく情趣あふれる作品で、今回一番気に入りました。

さていよいよ楽しみな甲生へと向かいたかったのですが、とにかく帰りの高速船の乗船整理券をゲットしなくてはならないし、バスは混み合って乗れるかどうかわからない始末だし、ちょっと時間的に無理!と自ら判断し、甲生地区の作品、塩田千春さんやスー・ペドレーさんは泣く泣くあきらめました…。こういう「何としても見たい!」という衝動を抑えて現実的な行動を取ってしまうあたり、年取ったなあ…とトホホな気分でした。
そのかいあって、無事高松行きの船に乗船。最後に高松港にそびえるタワー、2・Liminal Air- core-(大巻伸嗣)を拝んで、今回のアート巡りは終了~。最後にうどんを食してバスで京都まで帰りました。

豊島は鄙びた感じの島に、ほのぼのとしたアート作品がマッチしていて、とても良かったです。またやはりこの芸術祭に関わる地元の人の力も大きいものだと感じました。案内所の親切なお兄さん、ちょっとイラ立っていたバスの運転手のおじさん、張りきっていた船のおじさん、本当に人生の中でもめったとない大イベントだったのではないでしょうか。ところで、百聞は一見に如かず、なのに写真がなくてすみません。今回は初めてビデオカメラを入手して動画の撮影に明け暮れてしまいました。

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瀬戸内国際芸術祭2010 ~小豆島~

2010-10-30 | 旅×アート

行ってきました!瀬戸内国際芸術祭。もう閉幕間近であったので、雨の中にかかわらず、どこも大勢の人が訪れていました。行程は、小豆島→豊島→高松、1泊2日。

まずは、姫路から小豆島へフェリーで渡る。10月というのに、フェリーの甲板の風はすごく心地よい。お天気、もってくれ~!
島の北東の福田港に着くので、そこからバスで移動。けっこう時間もお金もかかりました。

まず訪れたのは、66・小豆島の家(王文志)。いきなりのハイライトです。ここは日曜美術館で見てすごく来たかったんだ~。
もっこり象さんが頭を突き合わせているようなお家、実はすべて竹で編まれているんですね。アーチのような通路を抜けていくと、丸いお部屋に出ます。部屋の中央は一段高くなっており、人々が靴を脱いでそこにあがり、座ったり寝転んだりとくつろいでいました。もちろん床も竹。寝転ぶと床下から気持ちの良い風が吹き抜けて、すごーく心地良かったです。いろいろな人が一堂にゆるく集まっている感じで、しかもお子さんがけっこう多くて楽しそうにはしゃいでおり、何だか良い雰囲気を醸し出しておりました。この季節でも十分気持ち良かったけど、夏なんかもっといいかもね~。ここは、芸術祭が終わるとなくなってしまうのでしょうか、もったいない気がしました。

この家を囲むように何本も立てられているのが、67・声なき人々の声(ダダン・クリスタント)。高さ5メートルほどの竹に笛のように穴が開いている。風が吹くとかすかにボーボーと音がするので、じっと耳を澄ませてみる。立てられた時は青竹だったのでしょうけど、もうすっかり茶色くなっていました。

この作品のすぐ近くに中山農村歌舞伎舞台があり、ちょうどその日の夕方に公演が行われるとのことで、舞台のセッティングをしていました。少し離れたところには肥土山農村歌舞伎舞台もあり、島に根づき大切に守られてきた芸能文化を垣間見れました。機会があれば実際の舞台も見てみたいものだと思いました。

また途中、田んぼの中に、巨大なマンモス発見!65・わらアート(武蔵野美術大学わらアートチーム)、象と鯨、これは例の若冲の新発見された作品を模しているにちがいない!と一人興奮していたのだけど、ダンナは鯨を亀と思い込み、見知らぬ人にもそう教えてしまったとのこと、そー言われれば亀にも見える…。ついに降り出した雨にそぼ濡れて、しっとりした風情でした。

そこから、なかなか来ないバスにしびれを切らして雨の中を徒歩で常盤橋まで移動、61・心の巨人(河口龍夫)、62・土と生命の図書館(栗田宏一)を鑑賞。

 


今は廃校となった小学校の図書館、少し色褪せているようではありましたが、フツーに本がいっぱい置かれている中、瀬戸内地域他、いろいろな地域の土を採集して和紙にのせたものが、規則正しく並べられている。その色のバラエティ豊かで美しいこと!土なのにすごくフワフワの、何か羊毛とかそういう繊維の塊に見えました。採取順に並べただけとのことでしたが、そのグラデーションもすごく素敵で、うっとりしました。ここでは地元の人が訪れていて、もう終わるのが残念だな~とお話されてました。学校は廃校と思えないほどキレイでした。建物も使われるとイキイキするのでしょうか。

というわけで、1日目の小豆島の行程は終了。

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