アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

<美術館にアートを贈る会>プロジェクト

2010-07-24 | その他
7月15日の日経新聞にも掲載されていた「美術館にアートを贈る会」ですが、この会が今進めているプロジェクトは、伊庭靖子さんの絵画作品3点をマイミュージアムである滋賀県立近代美術館に贈ろう!というものなのです。

「美術館にアートを贈る会」は、予算削減により多くの公立美術館が作品を購入することができない状況のなか、メンバーが美術作品を選定しその作品の収蔵者としてふさわしい美術館を選定し協力者を募って寄贈するという活動をされています。
第一弾は、藤本由紀夫さんの作品を西宮市大谷記念美術館に、第二弾は栗田宏一さんの和歌山で採取した土を瓶に詰めた作品を和歌山県立近代美術館に寄贈してこられました。当館の伊庭さんのプロジェクトは第三弾となります。

伊庭靖子さんの作品は、実物を見るととても不思議な感覚におそわれます。あまりに精緻に描かれた絵画に、見る人は誰もが初めは写真だと思い、絵だとわかるとびっくり!いたします。彼女は対象物を写真に撮りそれを描くという方法をとっているそうで、写真が取りこんでいる光や質感、空気感というのが、非常に繊細な美しさで画面に定着されています。じっと見ているととても静かな印象を受けます。

さて今回のこのプロジェクトになっている作品は、2007年に開催された当館の企画展『ダイアローグ』に際し、伊庭さんが滋賀県立近代美術館が所蔵している人間国宝・清水卯一さんの青磁の茶碗3点をもとに制作したものです。陶器の表面の質感は本物より本物らしい?素晴らしいものです。この伊庭さんの作品を所蔵するにふさわしい美術館として、当館への寄贈を目指し活動していただいているというわけです。有難や~、私も少額ながら寄付いたしました。ぜひ実現してほしいなあ~!!
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『ロトチェンコ&ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし』

2010-07-18 | 展覧会
マイミュージアムである滋賀県立近代美術館にて、新しい企画展が始まりました。
ロトチェンコとステパーノワは、夫婦であり創作のパートナーでもありました。
二人の名前は初めて知りましたし、ロシア構成主義という美術の流れも認識していませんでした。世界はやはり広い。でも考えてみたらひと昔前はアメリカと並び世界の二大勢力であったソ連であるのに、その美術の流れってほとんどなじみがないです。政治的な影響でしょうか。

1900年代初頭、マレーヴィチらに代表されるロシア・アヴァンギャルドによる芸術の革命が推し進められ、そこに起こったロシア革命は、新しい社会をつくり出そうという気運をもたらし、若い芸術家たちは新しい美術の追及へといっそう突き進んでいきました。そのような中で、彼らは芸術の世界に閉じこもるのではなく積極的に社会に関わり日常生活に芸術を持ち込もうとしました。この新しい動向である「構成主義」を担ったのが、ロトチェンコとステパーノワだったのです。

二人の活動はとても多彩です。初期の頃は具象画それでもキュビズムのような油絵を描いていましたが、やがて抽象画を突き進め、ついにロトチェンコはすべてを削ぎ落とした絵画、赤と黄色と青それぞれ単色を画面に塗り込めた三枚の作品にたどり着きます。展示会場では、広々とした空間をさえぎるように壁が立てられ、そこに三枚の絵がかけられています。色は深みがあってなかなかいい色です。その作品をもってロトチェンコにとっては絵画は死を迎え、その後彼はデザインの世界に方向転換をします。
日用品のデザインや、舞台装置、ポスターの制作等、さまざまな作品が展示されていますが、テーマはともかくとしてデザインはとても斬新でおもしろいです。奥さんのステパーノワも衣装のデザインや布地、印刷物のデザインを手がけています。
さまざまなものの特徴として、やけに直線の組み合わせだなあと思います。なんだか柔らかさやあいまいさがない感じ。これも思想的な何かが影響しているのでしょうか。

後年にはロトチェンコは写真も手がけています。写真でもデザイン的な感覚が生かされ、大胆なアングルや画面の切り取り方などがとてもおもしろいと思いました。
会場入口に辻音楽師に扮した二人の写真がありました。背景にはふたりの作品が一面に。感性豊かな二人のが見つめあう姿がとても素敵でいい感じでした。

この展覧会を見るのには、やはり社会的な歴史の流れも頭にある方がいいでしょう。でもデザインの作品たちは単純に見ていて楽しいものがたくさんあります。今はもうないソ連という国のその時代の匂いみたいなものが感じられる貴重な機会ではないでしょうか。

8月29日(日)まで開催。7月25日にはテルミンのコンサート、8月21日にはロシア文学者である亀山郁夫さんの講演会など、イベントも盛りだくさんです。
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束芋―断面の世代

2010-07-15 | 展覧会
ついに大阪でも始まりました!束芋@国立国際美術館。1月に東京に出かけた時、横浜でやっていて行きたかったのだが、スケジュールに余裕がなく断念。季節はめぐって夏の大阪で出会いましたとさ。
なぜ興味があったかというと「未知」だから。かなり前に新聞で作家本人の記事を見てずいぶんとかわいらしい人だな~という印象で、記事だけではどうも作品がよくわからなかったので、いつかは見たいと思っていたのだ。

ある意味ショーゲキ、ある意味気味が悪く、何か惹かれる、でもこりゃ何だ?

複雑な感情を喚起される展覧会。なんとまあ、オモシロかったです。展示室に入るといきなり真っ暗、ひとつめの映像インスタレーション作品「団地層」が天井に写されている。次々と流れる団地の部屋からこぼれる家具家財。ありそうな部屋であり得ない設定、日常の崩壊を思わせるシュールな感じ。
次にカラー作品の「団断」、「団地層」とつながっていそうな部屋の様子、ここにはたまに人が出てきてなんだかくるくるまわっていたりして、コワイ。写すスクリーンも矩形のかわった形。どうやって写してるんかなあ??と近寄ってみたりして。
展示室の大きな面積を占めるのは、まるで絵巻物のような新聞小説「悪人」の挿絵原画。見ながらいったいこの小説の内容は…!?と思ってしまう。新聞だからきっとほぼ毎日描いていたのでしょう、でもずっとこのような絵の構想練ってたらどうなんだろ。考え続けるのはしんどうそうで、でも湧き出てくるとしたらそれもこわかったりして。絵でも何かと何かがつながるのが、この人のテーマのひとつなのかしらと感じた。

展示最後の作品「BLOW」が一番おもしろかった。映像とこぢんまりした空間が一体となって、その中にたつと足元から水のしぶきが湧きあがってきたりして、その世界にはまっているようで、楽しかった。発想がおもしろいよなーー。

とつらつら感想書き連ねてきましたが、未見の方にはきっとあまり意味がわからなかったことでしょう。百聞は一見に如かず、ぜひ会場に足を運んでみてください。
9月12日(日)まで。横尾さんのポスター展も開催中!
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