アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

北山善夫展「大声で笑い歌い、時には泣き」@八日市文化芸術会館

2015-01-25 | 展覧会

滋賀県八日市のご出身である北山善夫さんの個展が、地元の八日市文化芸術会館で開催されていると知り、見に行ってきました。大津からは約1時間強、けっこう遠かったですが、とても素晴らしい展覧会で、行ったかいがありました!

北山善夫さんの作品は、滋賀県立近代美術館にも所蔵されています。細い竹と和紙で作られた、前面にうねって飛び出してくるような大きな立体作品で、繊細な素材でありながら、色のカラフルさと造形の力強さが印象的。できれば美術館の中ではなく、青い空のもとで眺めてみたいような、解放感のある軽やかさがお気に入りの作品です。

そのイメージが強かったものですから、ネットで見かける今回の展覧会の記事や写真を拝見していると、んん?ちょっと違うぞ…?ってことで、俄然興味が湧いてきたわけです。

1970年代より竹と紙による大型彫刻で注目を集めた北山さんですが、1980年代前半からは絵画作品に取り組まれているとのこと、今回の展覧会にもインクで細かく描かれたドローイングが何点か展示されていました。人体の描き方に特徴があり、線描でゴツゴツした立体感があらわされているのですが、これは北山さんが粘土で造形した立体物を描いていると知り納得。会場には、実際に粘土で作られた多数の人形がばらまかれたインスタレーションがあったのですが、それを見ると「これを描いてはるんや~」とよくわかります。

北山さんは、子どもの頃から大病を患い、それによって「死」を強く意識し、現代美術家を目指すようになったとのことです。この展覧会でも「死」は明確なテーマのひとつでした。ワークショップで参加者に「死」や「生命」にまつわる新聞記事を選んでもらい、それについて感じたことを絵に描いてもらって語り合う…その記事と絵や感想が大量に展示されているコーナー。長く取り組んでおられるので、もう茶色くなった古い新聞記事もあれば、今回、期間中に中学生を集めて実施したものも一緒に展示されていました。

天井まで死亡記事が貼られているのを見ると、軽くショックを受けます。記憶に刻まれている大事件もあれば、見過ごされるような小さな死亡記事も。それが膨大に集まっていることをビジュアルで見せられると驚くし、でも実は毎日毎日新聞に載っている記事のほんの一部であるという事実に愕然…。参加者の一人ひとりが心を砕くことでその記事が立ち上がって来るようです。でも想像力で描いた絵より事実を記した文字に重みがあるようにも思えます。

会場の真ん中には、私がイメージしていた竹と紙の立体彫刻が展示されていました。「中腰でながめる」のタイトルどおり、腰より低めの位置にグルッとうずまきになっている大きな作品。また、そこに天井から「天使の椅子」という作品、天使の羽根のついている細い竹で組まれたとても小さい椅子がいくつか吊るされていました。あまりにかわいくて、1個欲しかったです~!

絵画・彫刻・インスタレーションと、少ない点数ながら、北山善夫さんの作品世界を見渡し堪能させてくれる展覧会でした。ご親切なスタッフの方に伺ったところによると、こんな機会は初めてだとのことで、ご出身地で開催できたことは、とても良かったなと思います。

八日市といえば、大凧で有名なので、私はてっきりその影響もあるのかと思っていたのですが、そこはあまり関連はなかったようでした。(でも材料は似てますよね、ちなみに帰りに大凧会館にも寄ってみました)

いや~、今を生きるアーティストの多様性というか重厚さは、本当に素晴らしいと改めて思いました。決してひとつの作品で評価はできないし、してもいけない、いろいろな作品を通じ、アーティストをまるごと感じることに感動を覚えました。本当に行ってよかったです!

展覧会は、1月30日(金)まで。なんと入場無料!もうすぐ終わってしまうけど、ぜひたくさんの方々に見ていただきたいです!

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日本の色、四季の彩  染色家 吉岡幸雄展

2015-01-13 | 展覧会

 

昨年よりEテレで放送されてている『にっぽんの布を楽しむ~訪ねて・ふれて・まとう~』にご出演の吉岡幸雄さんによる個展が、京都伊勢丹で開催されています。

染色家・吉岡幸雄さんのことは、以前『紫』というドキュメンタリー映画で初めて知りました。江戸時代から続く京都「染司よしおか」の五代目当主で、継がれる以前は美術出版や広告ディレクターなども手がけられていたといいます。映画では、パートナーともいえる染職人さんとともに、吉岡さんの優れたディレクションのもと、数々の美しい作品が生み出されているのが窺えました。

染といえば、糸や布を思い浮かべますが、この展覧会では、紙が美しく染められているのが多く見られて珍しい~と思いました。やはり伝統ある染屋さんなので、古社寺の伝統的な行事への関わりも深いようです。奈良東大寺のお水取りで飾られる椿の造花を作るための和紙を、吉岡さんが染めて納められるとのこと、僧侶の方々が懸命に作られた椿の花は、素朴で美しい。また、石清水八幡宮でも、お供えする造花を吉岡さんが染めた紙で作っており、その技術の高さにも驚きますし、そのような造花が飾られるということも初めて知ったので、興味深かったです。

それから展示の大きな場所を占めていたのは、東大寺および薬師寺で行われた伎楽の衣裳。伎楽とは、奈良時代に中国(呉)から伝わった最古の仮面劇で、平成14年の東大寺開眼1250年記念法要にて上演されたときに再現された華やかな衣裳とお面がずらりと展示されていました。本当に日本独特の渋い色味、そして染といい、織といい、刺繍といい、その細やかで精緻な技には目を奪われました。また、お面の造作のオモシロイこと!お面と衣装のデザインはやはり大陸風で、日本にはない味わい。ものすごーく、見つめ合ってしまいました…。

数は少なかったけれど、着物としては「源氏物語」をテーマにした色の襲(かさね)が目を引きました。同系色の濃淡の衣を重ねて、一番上に薄い陽炎のような白い着物をかぶせ透け感を演出するその美しさよ!

ところで、私の今年の目標のひとつに「源氏物語を読む!」というのがあります(今さらですが…ちゃんと読んだことない)。やはり日本の美意識を感じるのに、はずせないのでは!と思いまして。というわけで、これも何かのご縁…と吉岡さんの本を購入いたしました。

 源氏物語の色辞典

これは、すごいです!オールカラーのピカピカの紙。源氏物語五十四帖に描かれた襲の色目を完全再現。物語を読み進めるのも、きっと楽しみになるでしょう。

…とお買物の支払いをしていたら、何と!吉岡さんがいらっしゃいました!午前中にギャラリートークがあったそうで、来客の方と談笑されてました。お客様は、「奥様」な方々は予想どおり、思いの外男性(それもお一人で)が多かったです。皆さん、素晴らしい色の世界を堪能されてました。

展覧会は、JR京都伊勢丹7階の美術館「えき」KYOTOにて、来週18日(日)まで。

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2015謹賀新年~昨年の展覧会を振り返る

2015-01-02 | 展覧会

あけましておめでとうございます。寒いですね~!

天気予報通り、元旦より寒波が押し寄せ、ここ大津も午後からたいそう雪が積もりました。走り初め!と意気込んでいた、本日2日の新春びわ湖マラソンは中止…残念でした。

当ブログにお越しくださっている読者の皆様、いつもありがとうございます。今年もなるべく週1回を目標にアートの話題をお届けしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、昨年出かけた展覧会を振り返ってみますと、ブログにアップしたもので24本。月2本のペースは、まだまだですな~。秋には、ヨコトリ、びわ湖ビエンナーレといったアート・イベントにも出かけました。ハコの中の展覧会とはひと味違う楽しい体験でしたね~。

 

そんな中で、私が選ぶ昨年の展覧会ベスト3は…??

 第3位 アンドレアス・グルスキー展@国立国際美術館

2月のことだったので、若干記憶と感動が薄れておりますが、見たことのない作品だったと思います。実際にでかい作品を目の前にして感じる不思議な感覚!そしてまさに現代を生きるアーティストだな~と実感しました。展覧会の体験として、得難かったと思います。

 第2位 バルテュス展@京都市美術館

バルテュスがやって来る!と聞いてから、心躍らせて待っていました!さまざまな評価のある作家ですが、私はテーマはさておき、その「絵」が持っている力に圧倒され魅了されます。これも直接作品を前にしてこそわかること。絵肌、色、空気感…唯一無二の画家だと思いました。

 第1位 ヨコハマトリエンナーレ2014 (その1 ・ その2 

いろいろなことを考えさせられ、アートにまつわる深い体験をさせてくれた展覧会として、ヨコトリに栄えある1位を捧げたいと思います。森村泰昌さん、どうもありがとうございました!改めて「コンセプト」の重要性を感じました…。梵書を通じて、芸術・文化の持つ強い力を確信する一方、混沌とした世の中に対する無力さも感じたり…。いろいろな作家、さまざまな作品、展示のシチュエーション、すべてひっくるめてエキサイティングな体験となりました。あ~楽しかった!

 

他にも素晴らしい展覧会がありました。おもしろかったのは、今年京都で行われるPARASOPHIA京都国際現代芸術祭2015のプレイベントとして行われた「ウィリアム・ケントリッジ<時間の抵抗>」、興奮の体験でした。3月の本イベントも今から楽しみです。

展覧会に出かけていく楽しみっていろいろあると思うけど、まずは図版ではわからないナマの作品の魅力を直に感じること、また複数の作品が集まることによってもたらされる作品同士の触発、つまり編集の妙を感じること、そして展示会場に特徴があれば、作品と場所のコラボレーションを楽しむこと、などがあげられると私は思います。展覧会は一期一会。見逃すと二度と同じ体験はできないと思いますので、できるだけ見逃さないようにしたいものです。

それから、年末にはACOP鑑賞会に参加して、自分自身ももっと展覧会の楽しさを伝えていける役割を果たせればいいな~と改めて思いました。当ブログをお読み下さり、展覧会に行ってみよう!行ってみたら楽しかった!と思ってくだされば、この上ない喜びです。

今年も楽しみな展覧会が目白押し!まずはホドラーをめっちゃ楽しみにしています。今年も素敵なアート体験に出会えますように!!

コメント (4)
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