アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

マイ・ホーム・ミュージアム 冬眠す

2009-12-19 | 美術館
このところ本格的な冬の寒さが到来です。

マイ・ミュージアムである滋賀県立近代美術館は明日20日(日)を持って今年の開館を終了し、来年の2月6日(土)に開館するまで、冬季休館に入ります。
施設等の保守点検とか、補修とか、財政難による経費削減とか、いろいろ理由はあるようですが…
自然に囲まれた環境のなかでは、木々も葉を落とし寒々としています。となれば、約ひと月、美術館にも休憩していただいて、また作品たちにも、快適な収蔵庫でお眠りいただいて、その魅力をじっくりと醸成してもらえればなあ、なんて思います。

きょうは、本年最後の解説のオツトメで、5~6人のお客様にじっくりと楽しんでいただけたようで、よかったと思います。パッと見にはよくわからない作品について、あれこれお話することで、「へ~っ」という興味深い表情を見せていただけたときが一番うれしいです。なかなか準備不足で満足のいく解説ができませんが、来年もがんばっていきたいと思いました。

来年の第一弾企画展は、『シュウゾウ・アヅチ・ガリバー EX-SIGN(エクス・サイン)』(2/27~)という久しぶりの現代アート。それこそ、見てみないとわからない!という楽しみな展覧会。作家自身も来館されますし、ライブ感覚あふれる展示やイベントが期待できそうです。ワクワク!

来年も、滋賀県立近代美術館に、たくさんの人が訪れてくださることを願っています。
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『若冲ワンダーランド』MIHO MUSEUM

2009-12-06 | 展覧会
この秋の注目展覧会のひとつ、『若冲ワンダーランド』に行ってきました。MIHO MUSEUMは、信楽の山奥、うちからでも車で1時間はかかる足の便の悪い場所にもかかわらず、大勢の人出で、若冲人気を物語っていました。

この展覧会は、2008年に北陸の旧家で新発見された「象と鯨図屏風」が出品されているのが大目玉。会場でもらった出品リストによると、会期中ナント5回も展示替えされており、途中、あの有名なモザイク風の「鳥獣花木図屏風」(プライスコレクション)も出品されていたではないですか!見逃して悔しかったです。

思えば、伊藤若冲に初めて出会ったのは、2000年に京都国立博物館で開催された没後200年の記念展覧会。新聞に上記の「鳥獣花木図屏風」が載っていて、行かずにはおれなくなったのでした。
今、若冲が紹介されるときは、鶏などを非常に緻密に描いた動植物綵絵が取り上げられることが多いですが、私はもっとユーモアに満ち自由闊達に描かれている作品のほうが好きだし、モザイク画のように伝統にとらわれない卓越したアイデアがおもしろいと思う。

「象と鯨図屏風」は六曲一双の大画面、若冲が80歳のときに描かれたということで、何か突き抜けた感のある非常にユートピア的な雰囲気を感じさせるスケールの大きな作品。象はまるで想像上の動物のように、鼻はぐるぐる、眼はニッコリ、耳は半熟玉子、そして牙はストライプ…鎮座するお姿はとっても幻想的。対する鯨は、背中の黒がほんの少し見えているだけなのだけど、吹き上げる潮の迫力といいすごい存在感。そしてこのふたつが並べられるハーモニーが素晴らしい。この作品と直接対峙できて、本当によかったです。

遠いですけど、ぜひご覧あれ。12月13日まで。
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志村ふくみ『色を奏でる』

2009-12-03 | アーティスト

  色を奏でる (ちくま文庫)

人間国宝である染織家、志村ふくみさんについて書きたいと思います。

志村さんは、現在85歳、滋賀県近江八幡のご出身で、そのうっとりするような作品を、わがホーム・ミュージアムである滋賀県立近代美術館では着物だけで90点ほど所蔵していて、常設展でも1年に1回はお目にかかることができます。

そもそも私が色に興味を持ったのも、志村さんの着物から。天然の植物染料で染められた色は、どれもやさしい色合いで、それでもはっとするほど強い主張をもっていたり。そしてまたその組み合わせの絶妙なこと!まさしく衣桁にかけられた着物の中に自然の美しい世界がおさまっているような、そんな作品です。

志村さんは、またすぐれた文章の書き手であり、たくさんの本を出され、数々の賞も受賞されています。
この『色を奏でる(ちくま文庫)』は、写真が豊富におさめられ、四季おりおりの自然の風景とともに、志村さんの染めた糸や織った布が載っているのですが、驚くのは、糸や布が自然の風景そのものに見えること。まさにそれは清らかな水の流れや、草が風に揺れる様子や、水面に光がきらめくさまや、夕日に染まった景色なのです。本当に美しい。

そして色についての興味深いお話がたくさん書かれています。

たとえば緑という色について。緑は草木の染液から直接染めることのできない色だそうです、この世界にはこんなに緑の植物があふれているというのに。志村さんはそれを「より深い真実を私たちに伝えるために、神の仕組まれた謎ではないだろうか」といいます。海や空の色である青と、光の色である黄があらゆる色彩の両極にあり、その中に無限に生まれる緑、それは移ろいゆく生命の象徴…。

志村さんの、織についてのお話もとってもおもしろいので、また次回紹介したいと思います。

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