アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

アンドレアス・グルスキー展@国立国際美術館

2014-02-22 | 展覧会

この展覧会、昨年の東京での開催が話題になっていたのを承知していたのですが、新鮮な出会いを求めて(?)、あまりにも予備知識なしに出かけたため、いきなり「何だ、こりゃ?!これは、写真なのか??」と、不必要に驚愕してしまいました。

作家の意図なのか、会場には作品解説が一切なく、キャプションも作品からとっても離れたところに付けられていたりして、壁も含めた作品世界を構築しているようでした。そして、あんなにも目を近づけて、よ~く見てみたい作品なのに、作品の前60~70㎝の床にに引かれたラインを越えると警告のピンポンが…。まるで作品のまわりにバリアを張っているかのよう。

すごく不思議な作品体験。いったアナタは、写真をどこへ導こうとしているの?

入口で渡されたわずかな解説をたよりに、この不思議な作品たちは、デジタル加工の可能性を極限まで追求し、複数の視点から撮られた写真を合成したり、不必要なものは消したり、果ては衛星写真を使ったりして制作されていることがわかり、いったい「写真」とは何なのだろう?と考え込んでしまいました。

この作家の作品は、やはり展覧会場で見なければ、本当の凄さはわからないと思いました。2m、3mと大きな画面を前に、想像を超える不思議な視点を「体験する」ことが醍醐味じゃないでしょうか。1点、2点とかじゃなく、これだけのまとまった作品をじっくり見ることで、どんどんジワジワとその凄みを感じます。

「カミオカンデ」は美しかったですね~。右下の人物が、まるで黄金を探す探検隊のように見えます。グルスキーさんの多くの作品には、圧倒的な無機質な人工物を撮影しながらも、そこにわずかに人の気配が感じられるのも特徴のように思いました。私は、ジャクソン・ポロックの作品を撮った写真が気に入りました。遠くから見ると、ポロックの作品を取り巻く空気のようなものも含めて、すごく立体感があるように見えて、ビックリしたんですよね~。

私はカメラのことも写真のこともよく知らないのですが、詳しい方には、その凄さがいっそうよくわかるのでしょうね!畑の畝を真上から撮っている「ベーリッツ」とか、実際どのように撮ったのか、ホント知りたいと思いました。

とにかく、凄い!作品体験が楽しめます。大阪ではまだ始まったばかり!見逃すな!!

5月11日(日)まで。あ~、もう1回行きたい!

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ウィリアム・ケントリッジ<時間の抵抗>

2014-02-17 | 展覧会

PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015のプレイベントとして開催された本展覧会。Twitterで情報を確認して以来、すごく楽しみにしていました。

ウィリアム・ケントリッジは南アフリカ出身の映像アーティスト。2009年の展覧会で初めて見たのだけど、その特異な作風で妙に心に残る作家でした。昨年の堂島ビエンナーレで再会、そして今回の展覧会へとつながって来たわけです。

場所は、京都の高瀬川沿いに立つ元・立誠小学校の講堂。古い小学校の匂いや木の床がミシミシいう音に、何とも言えない懐かしさが込み上げてきます。この作品は、2012年のドイツ・カッセルのドクメンタに出品されましたが、今回、この会場に合わせて構成し直され、より作品にぴったりだと評されているそうです。

また、この元・立誠小学校では、常設のシアターもやっていて、この日は、ウィリアム・ケントリッジの作品制作に迫るドキュメンタリー「ウィリアム・ケントリッジの謎」が上映されていたので、まずはそちらを鑑賞。ケントリッジの作品制作の様子や日常の姿、ナレーションもありながら、半分ぐらいは、心奪われるドローイングによるアニメーションが見られて、おもしろかったですね~。ケントリッジさんが、ご自身の作品の印象的な水の青と同じ色のシャツを着ていたのが気になった!!

さて、いよいよ展覧会場へ向かいます。会場に入ると、巨大な木製の動力装置が!表現は難しいのですが、3本のアームのようなものがゆっくりと上下に動いて緩やかなリズムを生み出しています。そして壁3面、画面にして5つのスクリーンに、映像が映し出されます。スピーカーとそこここに設置されたメガホンから、映像に合わせて音がリズムが音楽が聞こえる…。最初は?って感じになると思うけど、見れば見るほどはまっていって何回も見たくなってしまいます。めちゃくちゃオモシロイ映像体験が味わえます。

映像がメトロノームで始まるように、テーマは「時間」。すごい不思議な映像体験なのですが、やはりそこには時間の流れが潜んでいるのか、巨大な動力装置が刻むリズムとすごいシンクロするようで、何だか身体が自然に動いてしまうような動的なエネルギーをすごく感じました。映像の1サイクルが30分なので、会場に散らばって設置されている椅子に座って見てしまうのだけど、私的には、会場の後方、動力装置の少し斜め後ろからスクリーン全体を見渡す感じで、動力装置のリズムを目の端で感じながら見るのがベストだと思いました!

2回見て会場を出たところで、今回の会場設営のメイキングビデオが流れていて、それを見ていたら、すごく造り込まれた会場をもう一度見たくなって、思わずまた戻ってしまいました。何回でも見れてしまうのですよ、おもしろい~。

ウィリアム・ケントリッジと京都は縁が深そうですね。ドキュメンタリーを見ていたら、やっぱり遠い場所のように思いましたが…。このように京都でこのアーティストに出会えたのもまことに不思議だなあ、と感じます。

展覧会は3月16日(日)まで。得難い体験だし、ぜったい行ってみないとわからないから、ぜひぜひ足を運んでみてください!!

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下田直子 ハンドクラフト展 ~手芸っておもしろい!

2014-02-10 | 展覧会

どこかの美術館で手に取ったチラシがあまりにかいわくて、行ってみることにしました。下田直子さんは、ニットデザイナーとしてニューヨークで活躍し、帰国後は創造性豊かな手仕事の作品を多数発表され、書籍等もいろいろ出されている手芸作家です。

会場は思ったとおり、女性のお客様でいっぱいでした。展示作品の多くを占めるハンドメイドのバッグは、壁にランダムに掛けられていて、パッと見るとショップのディスプレイのようで華やかでした。女性なら誰しも(だけではないと思いますが)、糸を編むひと目ひと目とか、刺繍のひと針ひと針とかの、楽しみでもあるけど、積み上げの苦労を知っているので、目の前の素敵な作品の成り立ちを想像して(または想像を絶して)、もう「ほぉ~」と感心するしかなくなります…。

やっぱり「素敵だな~」と感心する要素のひとつに、色が重要だとわかります。パッチワーク風の作品も多かったのですが、色味の美しさと組み合わせの妙に感心します。またそれを活かすようなデザインにも。下田さんは、何より生地が大好きなようで、会場内のコメントにもありましたが、生地を生かすためにも、アップリケや刺繍を施すときは、合わせる糸の素材感もとても大切にしているとのことでした。

会場には、作品のキャプションがほとんどなかったのですが、80年代から作ってこられた作品が展観されていたのだから、いつ頃の制作のものなのか知りたかったように思います。きっと技術の変遷もあっただろうし、制作の意図にも、時代の背景や流行などが無縁ではないと思うから。

展来会の最後のコーナーに展示されていた作品群が、私の心をギュッと鷲掴みに!下田さんが改めて見直してみたという「スモッキング」、布にひだを寄せて刺繍糸のステッチで止めていく技術です。そのバリエーションのすごいこと。布の立体感がもたらす美しい形にめちゃめちゃ驚きました!ホント、触ってみたかったんだけどな~。

会場にあちこちで聞かれた「見てたら、やってみたくなる!」というお声、私も違わずこんな本を買ってしまいました…。

 はじめてのスモッキング 基本の5つのステッチで…

久しく忘れていたオトメゴコロを取り戻させてくれる作品たちとの出会いでした。とっても楽しかったです。

JR京都伊勢丹の美術館「えき」KYOTOにて、2月24日(月)まで。

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本屋はめぐる

2014-02-02 | 

もう2月になってしまいました…。明日は節分、きょうはかなり暖かく、少しだけ春の足音も聞こえてくるようです。

さて、「スタンダード ブックストア」が阿倍野に新しく出来まして、初めて行ってみたのですが、かなりオモシロい書店でした。本と雑貨が混在し、棚も個性的なテーマでくくられており、「おー、そうくるか~」みたいな本同志が並べられたりして、いろいろと新しい発見があり楽しいです。「この本を買おう!」と思って行くと、なかなか見つけられなくてイラつくかもしれないけど、一般的な書店とは違う買い方になるのでしょう。「COFFEE&BOOKS」とあるように、カフェが併設されており、買う前の本を持ち込んでもOKだそうです。長い時間、ゆったりと過ごせそうですね~。

せっかくこんな本屋に来たのだから…と、購入した本は、ブンブン堂のグレちゃん: 大阪古本屋バイト日記 (ちくま文庫)

 

世界中を旅しているグレちゃんが、何と古書店でアルバイトしてたとは…!文庫本サイズに8コマの漫画が載ってると、あまりにも眼には過酷なのですが、若きグレちゃんが、古書に取り憑かれたディープな人々に囲まれてのエピソードがとてもおもしろいです。

数々の本との出会いをもたらしてくれた職場近くの古書店が移転して以来、めっきり行くこともなくなったのですが、久しぶりに訪ねたくなり、グレちゃんのバイトしていた「阪急古書のまち」に行ってみました。阪急電車の高架下であるここは昔から風景が変わりません。今は13店舗ほどが個性豊かな品揃えと店構えを繰り広げております。

扉が閉まっていて、誰もお客さんがいないと入るのに躊躇しますが、誰か入店しようとする人がいたら、一緒に入ってしまえ~!ひとつ、ふたつ入店してみれば、あとは平気です。棚が全面茶色で、ちょっと手が出せない(お値段も…でしょうが、文字通り本を引き出すことすらできないって意味)ところもあるのですが、わりに文化、美術、歴史などのおもしろい本が多いので見ているだけで楽しいです。

そこで手に入れたのは… 日本のかたち縁起―そのデザインに隠された意味 (アーキテクチュア・ドラマチック)

 

う~ん、パラフィン紙にきっちり包んであって「古本」って感じ!お値段も定価の半分以下でした。お買い得!!古書店の店主さんって、店の奥に座ってて、お会計とかしてるとき、ちょっとお話してみたいな~といっつも思います。(しないけど…)グレちゃんの本を読んでからはなおさらです。

古い本を見ていると、本ってスゴイな~と思います。ぎっしり情報を背負って、人から人へ受け継がれ、こんなに茶色くなってもなお役目を果たそうとしている…。生まれてすぐに消えちゃう本もあるけれど、数々の本の中で、人が一生のあいだで出会えるのはほんの一握り。出会いを大事にしたいな、と改めて思います。

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