2年ぶりの「堂島リバービエンナーレ」、なぜかいつものごとく会期終了間近の来訪となってしまいました。今回のテーマは『Take Me To The River ―同時代性の潮流』、前回の『Littele Water』も、川のほとりの会場にふさわしいテーマでしたが、今年はさらに直球!
英国のトム・トレバーをアーティスティック・ディレクターに迎え、高度に情報化したネットワーク社会の、時間や場所、関係性までもが流動化する今日の社会の様相を「川」に喩え、現代アートで表現する展覧会となっています。
その最も象徴的な作品は、池田亮司さんのインスタレーション(上の写真の作品)。過去のビエンナーレで、メイン会場となり、多くの作家の作品を展示してきたホールを独り占めする壮大な作品。真っ暗なホールの床いっぱいに映し出された映像作品は、細かいデジタル数字の羅列とかバーコードのようなラインとか、それが電子音とともに光ったり消えたり、もの凄いスピードで流れたり…、まさに現代社会を映し出す「川」の様相。ううう、写真じゃ伝わりにくいナ~。
そして作品の上には、靴を脱いで上がることができるんですよ!デジタル数字に埋もれるというかまみれるというか…その体験は刺激的でもあり快感でもあり。本当に緩急自在な時間の流れに身を任せているようで、タイムマシンに乗るってこんな感覚?などと思ったり…。人々は皆、思い思いに立ったり座ったり寝転んだり…。「人と共にある」というのもこの作品のポイントなのかな~と感じました。
それから印象的だったのは、スーパーフレックスというコペンハーゲンのアーティストグループの「水没したマクドナルド」という映像作品。今しがたまで人であふれ、食べ散らかされていたと思しきマクドナルドの店舗、人は誰もいないのだけど、そこに床から水が浸み出し、それがどんどんあふれていき、ついに店全体天井まで沈んでしまうという20分程の様子が写されているのだが、はっきり言って不気味!まず、なぜ水があふれ出しているのかわからない、人はどうしたのだろうか、外はどんな状況なのか(もしかして津波?)、などと想像をめぐらせる。水位が上がって来ることで、その位置にあるべきものが、水に流され浮遊し始める。それでもそこここに浮かんでいるのは、ひと目でマクドナルドとわかるものばかり…。マクドナルドってものすごく「記号化」されてるんだ~!と改めて思いました。めちゃくちゃシュールな映像で、目が釘付けでしたね。けっこう長時間の映像なのだけど、誰も観客が席を立たなかった(立てなかった?)もの!
マクドナルドは、こんなところでも作品の素材に。照屋勇賢さんの作品で、袋の上部を細かく切り取り、中に小さな独自の世界を生み出している。この小さな紙の木に誰もが驚き、繊細な世界観で観客を魅了していました。外から見ると、マクドナルドの袋やし、安っぽい…と思って中を覗いたときに起こる価値観の転換がすごくおもしろいな、と思いました。
ホールがひとつの作品で占められているため、ホワイエでの展示が多く、またいつもは使われていない裏のスペースまでもが会場になっていました。でもそれぞれ場所の特徴を生かして、素敵な展示になっていたと思います。
メラニー・ジャクソンさんの「不快な人々」という作品も普段は通路の場所に展示。座礁した大型コンテナ船と投げ出されたさまざまな積荷をモチーフに、ドローイングと紙で作られたジオラマ。物語がよく把握できなかったのが残念だったのだけど、この工作感が大変良かった!
会場の堂島リバーフォーラムからはガラスの壁を通して堂島川を臨むことができ、また反対側の中庭には川のように薄く水の流れる場所があり、子どもたちが裸足になって遊んでいました。本当に気持ちの良い風景で、展示テーマとの一体感を生んでいる素晴らしいロケーションです。
2年なんてあっという間ですね~、また次回も予想を超える楽しい展示を見せてほしいものです。今年は、残念ながら本日30日(日)、夜7時まで。